CS映画専門チャンネル「ムービープラス」では「真冬のサメフェス」をテーマに、2月にスリル満点の“サメ映画”5作品が放送される。今回放送される作品は、最強霊媒師と霊界から召喚された幽霊サメとのバトルが劇場公開時に話題となった「ウィジャ・シャーク/霊界サメ大戦」(2017年)をはじめ、ビーチで大騒ぎする男女5人組を地獄のパニック状態へと突き落とすサバイバルスリラー「海上48hours -悪夢のバカンス-」(2022年)など、凶暴なサメたちに人間が人生を狂わされる作品ばかり。思い返すと2023年は、超巨大ザメ・メガロドン(※通称:MEG)と人間の死闘を描いたシリーズ第2弾「MEG ザ・モンスターズ2」や海上の油田を襲う伝説の巨大ザメと海底に仕掛けられた爆弾から逃げる海洋サバイバル「ブラック・デーモン 絶体絶命」など、サメ映画豊作、もとい “豊漁”の年だった。そこで今回は近年の“サメ映画旋風”を振り返ってみる。

【写真】プールサイドで佇む美女の前に“幽霊サメ”が現れる…!

原点にして頂点サメ映画の金字塔

サメをテーマにした作品を振り返るとき真っ先に思い浮かぶのが、凶暴な人喰いサメの恐怖を描き1975年に大ヒット生んだ「JAWS/ジョーズ」だ。当時28歳だった名匠スティーブン・スピルバーグ監督が世界中に恐怖を届けた本作といえば、サメが迫りくる時に流れる音楽のイメージも強い。サメの姿こそなかなか画面に登場してこないものの、不気味なサウンドとサメのヒレだけが海上に現れる時の怖さといったら計り知れない。当時その恐怖もあって海に近寄れなかった子どもも多かったのでは。

また、水中に潜むサメ視点のカメラワークで、何も知らずに海でのバカンスを楽しむ人間たちの脚が無防備に映し出され、見ている側の焦りと恐怖が増す。今でこそよく見かけるお決まりの手法だが、まだCG技術も発達していなかった公開当時には革新的な作品だったと言っていいだろう。本作以降、さまざまなサメ映画が制作されていった。

1990年代末から2000年代初頭には、単なるサメの脅威ではなくSF要素が加わった人喰いサメや巨大サメが主役の作品が続々と登場。その中でも人気を博す「ディープ・ブルー」(1999年)では、凶暴な青サメの脳組織から新薬を製造する研究を行っていた博士が研究を急いでDNAを操作したため、高度な知識を持った巨大なサメへと進化してしまい、人類に襲いかかる様子が描かれた。

■“カイブツ”から“ベジタリアン”まで

一方で、タイトルからも強烈なインパクトがにじむ「メガ・シャークVSジャイアント・オクトパス」(2009年)では、太古の時代からよみがえった巨大サメと巨大なタコが未曾有のバトルを繰り広げた。“カイブツ”は“カイブツ”が相手する、いわゆるB級トンデモ系も登場するなど、バラエティー色の強いサメ映画も制作されていく。

もちろんサメ映画は、実写のサメを題材にした作品だけではない。「シュレック」シリーズを手掛けた、ドリームワークスによるフルCGアニメーション映画シャーク・テイル」(2004年)では、海底都市・リーフシティを舞台に大きな夢を抱いた小魚・オスカーと心優しいベジタリアンのサメ・レニーのコンビが大騒動を繰り広げる。それまで登場してきた暴れん坊な人喰いサメとは打って変わって、まさかの“ベジタリアン”のサメまで描かれるという、多様多種なサメのラインアップには敬服するしかない。

ちなみに同作は、ウィル・スミスロバート・デ・ニーロアンジェリーナ・ジョリーといったハリウッドの実写映画で活躍する豪華なキャストが声優を担当しており、スミスが声を担った主人公・レニーの日本語吹き替え版を香取慎吾が演じたことも当時話題になった。

■霊界から現れた“幽霊サメ”が大暴れ!

さらに、2月2日(金)にムービープラスで放送される「ウィジャ・シャーク/霊界サメ大戦」では、その名の通り“幽霊サメ”が大暴れ。同作は霊界と現世をつないでしまう魔のアイテム「ウィジャ盤」の魔力により霊界から凶暴な人喰いザメを召喚してしまうという、ファンタジックないわゆる“シャークホラー”。捕食シーンはリアルなサメ映画のようなグロテスクなものではないので、その手の描写が苦手な人でも安心して見られるのも特徴だ。神出鬼没の幽霊サメと最強霊媒師の闘いというぶっ飛んだ設定に心が躍ったファンも多く、続編が製作されるほど反響を集めた。

これらサメ映画を鑑賞していて感じるのは、ビーチバカンスとサメの襲来は表裏一体ということ。ブレイクライヴリー主演の「ロスト・バケーション」(2016年)では、多忙な医学生のナンシー(ブレイクライヴリー)が休暇中に亡き母が教えてくれたメキシコにある秘密のビーチへ訪れる。最高の休暇を楽しむのもつかぬ間、サーフィン中に一匹の巨大な人食いザメに襲われてしまい、海の真ん中で孤立してしまうという絶体絶命の危機に。

さらに翌年公開された「海底47m」(2017年)では、メキシコで休暇を過ごす姉妹が海に沈めた檻の中から野生のサメを鑑賞する“シャークケージダイビング”に挑戦。すると、ワイヤーが断裂してしまうという衝撃のハプニングにより、ケージは水深47mまで落下してしまい、忍び寄るサメから逃げ出すという死のスキューバダイビングが展開する。

この2作品に登場するサメは、巨大化したわけでもなくベジタリアンでもない、いわゆる普通のサメだ。楽しい海でのバカンスから、サメ登場による錯乱状態までのセットは、それこそ誰にでも起こり得るリアルさを兼ね備えており、いつ見てもシンプルに怖い。

今回触れたのはほんの一部だが、巨大化、幽霊化、アニメ化、そしてリアルな人食いサメといったバラエティーの豊富さに、“サメ映画”というジャンルが成立することも自然の流れだし、サメ映画ブームが起きるのも納得だ。それに加え、技術の進化とアイデアの融合により、まだまだ未知のサメ映画が今後誕生していくのだろうと期待が膨らむばかり。

それこそ一口にサメ映画といっても既に膨大な数があって検索しただけで興ざめしちゃうかもしれないので、まずは「真冬のサメフェス」で、新たなサメ映画体験をしてみては?

◆文=suzuki

「ウィジャ・シャーク/霊界サメ大戦」/(C) 2017 Wild Eye Releasing. All rights reserved.