インバウンド需要が回復する中、夜の繁華街にも外国人観光客の姿が目立つ。そんな中で、じつは今カウンター越しにママや女の子から接客を受けるスナックが、「日本独自の文化」として人気を集めているという。各地のスナックをめぐるツアーなども開催されており、好評なのだとか。

 そんな“スナックブーム”の裏で、ママたちからは戸惑いの声も上がっている。

◆アニソンをひたすら熱唱、空気が読めない外国人観光客

 京都市内でスナックを営むママがこう語る。

「外国人のお客さんは一人で来ることは少ないです。ほとんどの場合、4〜5人のグループで騒ぎながら飲んでいます。うちはカラオケがあるので多少、騒ぐのはOKにはしていますが、中には静かに飲みたい常連のお客様もいます。

 スナックではそういう人達にも配慮するのがマナーなのですが、そこまで理解が及ばない外国人の方もいらっしゃいます。つい先日も日本のアニメが好きな外国人グループが来て、カラオケで日本のアニソンをずっと歌っていました」

 ママの店ではコロナ前までは一見の客は断っていた。しかし、コロナ禍で常連客が減少したことから一見の客でも歓迎するようになった。そんな中で、口コミを通じて外国人観光客も訪れるようになった。

 しかし常連客が戻ってきた今、新規客のせいで常連客に不快な思いをさせないかを懸念しているという。

◆女の子を指差して「いくら?」

 マナーが悪い外国人客に悩むスナックママの声は他にも聞かれた。

 大阪キタ(梅田や北新地あたり)でスナックを営むママは、外国人から信じられない発言を受けた。

「うちの店は、私と大学生のアルバイトの女の子が働いています。私は英語が得意でないのですがバイトの子は英語が話せるので、外国人の入店もOKにしています。しかし先日、酔っ払った外国人のお客様が女の子を指さして『いくら?』とたずねてきたんです。

 後で話を聞くと、その女の子に対して『ホテル行こうよ』としつこく言っていたようなんです。外国でよくある、連れ出しパブと同じシステムだと思ったようですね……」

 タイなどの東南アジアの国では、普通のバーやパブでも連れ出し可能な店が存在する。これに慣れてしまった外国人旅行者にとって、日本のスナックでも同様のサービスが提供されていると勘違いしてしまうのかもしれない。

◆ほぼワンオペなので対応しきれない…

「そもそも受け入れ態勢が十分ではないんです」

 急なスナックブームに対して、東京下町でスナックを経営するママが指摘する。

アルバイトの女の子が集まらなくて、ほぼワンオペで店を回しています。なので、たまに外国人のお客さんが来ると私1人では対応できないので、知り合いのお店から女の子を派遣してもらうこともあります。

 数年前までは学生のアルバイトもいたのですが、最近はコンセプトカフェのほうが時給もいいし、ドリンクバック(インセンティブ)も出るので、スナックにはなかなか集まらないんですよね」

 都市部では若い女性のアルバイトの選択肢が多いため、人手不足に悩むスナックも少なくはない。

 スナックを訪れる人は、ママとのコミュニケーションを求めていることが多い。しかし、ママが客一人ひとりと話すには、灰皿やアイスを交換したり、お酒を飲んで売上に貢献してくれるヘルプキャストの存在が不可欠だ。

 外国人によるスナックブームの陰には、マナーの悪い客や十分な受け入れ態勢が整っていないといった様々な課題が山積みのようだ。

<取材・文/カワノアユミ>

【カワノアユミ】
東京都出身。20代を歌舞伎町で過ごす、元キャバ嬢ライター。現在は夜の街を取材する傍ら、キャバ嬢たちの恋愛模様を調査する。アジアの日本人キャバクラに潜入就職した著書『底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる』(イーストプレス)が発売中。X(旧Twitter):@ayumikawano

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