静岡、ちょっと楽しすぎやしない?

電車なんかと違って、クルマで行く旅は風の吹くまま気の向くまま、どこにだって行ける。相棒が愛してやまない自分のクルマだったら、より楽しい。それと思い立ったらパッと行けて、パッと帰ってこられるくらいが、ドライブにはちょうどいい。

そんなわけではじまった本連載。今回は本誌でも度々登場するフリープランナーの勝山龍一さんと静岡市買い物ドライブ。近そうで遠い静岡。知っているようで知らない静岡。その実態は、めちゃくちゃ楽しい街だった!

過去のワンデイドライブ記事はこちらから。

勝山龍一
1982年生まれ、埼玉県出身。長年、セレクトショップでPRを手がけたのち2021年に独立。現在はアウトドアやファッションのみならず、さまざまなブランドや企業の広報兼プランナーとして活躍中。
Instagram:@ryuichi_katsuyama

愛車のディスカバリー3は、頼りなくて愛おしい。

「買ってすぐに雨漏りして、助手席に水溜りができたんですよ」

愛車のランドローバーディスカバリー3(2006年式)」の感想を、勝山さんは開口一番こう答える。そんなトラブルのあとも、運転席側に雨漏りがあったり、警告灯がついたり消えたりもしているらしい。燃費も「ガソリンが漏れているんじゃないか」と思うほど悪いという。

けれど、その不便さに勝る魅力がたくさんある。

「なにより、この形ですね。全体のフォルムも顔も、オラオラしてなくてどこか可愛げがあると思いません? 荷物もたくさん入るし、後ろの2列を倒せば車中泊も余裕です」

ディスカバリー3」の前は、10年近くスバルの「アウトバック」に乗っていた。それに比べると、運転のしやすさも格段に上がったという。

「視線が高くなったことが、本当によかったですね。運転しやすいですし、長時間の運転も疲れなくなりました。車体は大きくなりましたけど、視界がいいから都内での運転も苦にならないんですよ」

サンルーフも付いている。ただ、こいつがまたやっかいで、閉めた状態でもガラスは剥き出し(メッシュは付いている)。要は開閉問わず、ずっと太陽が降り注ぐというわけだ。そのため夏は灼熱になり、冬は晴れているとエアコンいらずで車内はポカポカ。なかなか思い通りにいかないクルマなのだけど、そんなところがまた、愛くるしい。

「周りにも『ディスカバリー3』に乗っている人は多いんですけど、みんな文句は言いつつ『結局、最高なんだよ』と口を揃えているんです。いま、買って1年が経ちましたけど、その気持ちもだんだんわかってきましたね。」

そんなクルマで向かったのは、静岡県静岡市

手始めに、静岡の老舗セレクトショップ「エターナル」へ。

渋谷駅を出発し、静岡へ!延々と、東名高速道路を行く。

グッと冷え込みが厳しくなる1月下旬。渋谷駅に集合し、早速撮影クルーもクルマに乗り込み東名にイン。片道約175キロ、時間にすると2時間30分。

勝山さんは昨年まで「水源の森 キャンプランド」のPRに携わっていたこともあり、長距離移動はお手のもの。しかも、都内から道志に向かう道はウネウネの峠道。加えて、休日になれば箱根や御殿場までクルマを走らせることもある。「運転は好きなので、このくらいの距離と時間ならまったく苦にならない」という。

そもそも、なぜ静岡市だったのか。それは、勝山さんが古くから親交のある店があるからだ。そのお店が「エターナル」。

エターナル
住所:静岡県静岡市葵区新通1丁目3-1
電話:054-252-2500
www.i-eternal.com/

店長の伊藤由季子さん(写真中)とは、共通の知人から紹介されて以来、公私ともに付き合いがある。静岡で飲んだこともあるし、伊藤さんが東京に来たときにも、酒を酌み交わす仲。

エターナルは来る度にいろんな発見があるんですよ」と勝山さん。

その言葉通り、店の軒先で出会ったのが、お客さんとしてやってきていた小林研哉さん(写真右)。静岡で箒(ほうき)を原材料から作っている職人だ。ブランド名は「ハシメ」。これまたかっこよくて、気になる方はぜひチェックを。次回は、そこにも取材で訪ねなければ!

エターナル」は静岡の地で、2000年から営業を続ける老舗のセレクトショップ。店内は「ササフラス」や「マウンテンリサーチ」をはじめ、ドメスティックとインポートが入り混じり、シティとアウトドアで活躍するハイブリッドなアイテムが並んでいる。帽子のラインナップもかなりの数。

勝山さんはここで、大人気の「トレイルフーズ」のパスタと「ファッティー」の帽子をお買い上げ。で、次はランチなのだけど、伊藤さんに教えて向かったのは、「エターナル」のご近所の町中華!

パクパクいけるライトな餃子。できればビールで!

エターナル」を出発し、市内をぐるぐる回る。静岡は、つい立ち寄りたくなるお店が本当に多い。カフェや雑貨屋、ナチュールの店などなど…。「この町、もしかして1日じゃ足りなくない?」と誰からともなく漏れてくる。そのくらい、魅力的なスポットが多い。

そうこうしていたら、雰囲気ムンムンの「福満」に到着した。ここは餃子が有名らしい。

福満
住所:静岡県静岡市葵区駒形通1-3-3
電話:054-252-7955

餃子と言えば勝山さんだ。インスタグラムのフィード投稿は、3回のうち1回は餃子の画像をあげている。以前は毎週のように餃子屋を訪れ、一時は週4回も餃子を食べていたほどの餃子フリーク。

「この店も前から来てみたいと思っていたお店で、グーグルマップにもしっかり保存してあります。いや〜、楽しみ!」

暖簾をくぐると人はまばら。知る人ぞ知るお店なのだ。歴史が染みついた店内は料理のおいしさを物語っている。注文はもちろん、餃子定食(800円)で。

程なくして料理が到着する。インスタ用の写真を撮って早速ひとくち。お味、どうですか?

「皮が薄くて、餡も重たくなく、かなり好みの味ですね。パクパク食べられる。クルマじゃなかったら、完全にビールですね(笑)。ほかのメニューもどれもおいしそうだし、ここはまた、来なきゃだな〜」

ドローカルな町中華はレビューサイトでの点数もけっして高くないけれど、地域の人たちからは昔から愛されている。こういったお店を掘り当てることで、より、その町の芯の部分に触れられるというものです。いや〜、いい店でした!

30分もかからずに、オリジナルのTシャツが作れる!?

ブルースト
住所:静岡県静岡市駿河区馬渕1丁目17-16
電話:054-204-6601
bluest.co.jp

腹ごしらえを終えて向かったのは、高架下にひっそり佇む「ブルースト」。その場で自分の好きな写真やイラストを衣類にプリントしてくれるショップだ。

元々は東京・下北沢で営業していたのだけど、オーナーであるロッキーさんの地元が静岡ということで2年前にカムバック。ブランドやアーティストのグッズを手がけるほか、個人客のオーダーも請け負っている。

ネットでプリントをする場合、ボディを決めたり、プリントのサイズや位置を決めたりと作業が煩雑。けれど「ブルースト」であれば、来店してボディを選んで、写真やイラストをエアドロップで送るだけ。位置やサイズは、その場でフレキシブルに対応してくれる。プリントはTシャツやフーディなど、あらゆるものに可能。もちろん、一枚からオーダーすることができる。

勝山さんはこの日、イラストレーター平沼久幸さんが納車記念に描いてくれたという「ディスカバリー3」のイラストを写真で撮影し、持参。これを好みのボディにプリントしていく!

ボディは熟考の末、ユナイテッドアスレのヘビーオンスをチョイス。カラーは白。データを送って、サイズを決めて、10分もかからずに完成!

一番大きいプリントサイズの40cm×50cmのサイズを、バックにプリント。これでなんと、アンダー3000円というから驚きだ(ボディにより変動)。

「背景の方眼もくっきりプリントされていて驚きました。あと、めちゃくちゃ早い!入店してから15分も経たずに完成したんじゃないでしょうか。このためだけに、また静岡に来たいっす」

それに触発され、取材クルーもみんなでプリント。誰かのプレゼント用に作ったり、パートナーとの記念日にお揃いで作ったりもいいかもしれない。

ちなみに「ブルースト」は4月に開催するGO OUT JAMBOREEにも出展予定!

山小屋のなかでキャンプギアと工具を物色する。

富士山のお膝元だから周辺にキャンプ場は多い。それに比べ、静岡市にはキャンプギアを販売するショップは少ない。アウトドア古着の名店はあれど、ことギアに関して、特にガレージブランドを購入できるところが少ないのだ。そのなかで、県内外のキャンパーたちをも惹きつけるお店がここ「歩歩是道具店」。

歩歩是道具店
住所:静岡県静岡市葵区伝馬町24-14
電話:054-270-7675
IG:@hohokore_tools

地上二階建てで、山小屋のような空間にアイテムがぎゅうぎゅうに詰まっている。大物から小物まで、なんでもござれ。

ラインナップはキャンプギアにとどまらず、軍モノやアメリカ製の工具など、店主・日高さんがセレクトする興味をそそられるモノがいっぱい。廃盤になっているものなども多く、心がくすぐられっぱなしだ。

「『歩歩是道具店』はキャンプギアはもちろんですけど、アメリカの工具がめちゃくちゃ充実していてずっと見ていられますね。何に使うかわからないものだらけですけど、それが楽しい!」

ニクいアイテムがとにかく多く、都内でもここまでアメリカ工具が揃っている場所は珍しい。「これ、何用?」っていうものだらけ。キャップにペンをさせるようにできるアタッチメントとかね。

静岡にイフニあり! 愚直なコーヒーを味わう。

イフニロースティング&コー
住所:静岡県静岡市葵区水道町125
電話:054-255-0122
www.ifni-roastingandco.com

中心地からクルマで約5分行った先。窓を締め切っていても、焼いたコーヒー豆のいい香りが漂ってくる。においの発生源は「イフニロースティング&コー(以下、イフニ)」だ。

大きな焙煎所を備えながら、その脇でテイクアウト用のコーヒーを販売する。店前の倉庫には、海外から取り寄せたコーヒーバッグが積み上げられている。

10代の頃から中東でコーヒーの仕事に携わる松葉さん(写真中央)。現在は自身で焙煎したコーヒー豆を国内各所に届けている。

巷によくあるおしゃれな焙煎所ではない。巨大な焙煎機で、まるで町工場のようにとんでもない量のコーヒー豆を焼き続けている。取り扱い先の希望のテイストも千差万別で、微調整にも余念がない。

軒先の直売所では焼きたての豆が量り売りされ、テイクアウトのコーヒーも販売する。その味はいわずもがななのだけど、なんたって、コーヒー屋とは思えないグッズが目を見張る。〈マウンテンリサーチ〉や〈1LDK〉、〈ウルトラヘビー〉といったブランドとコラボレーションしたアパレルも並ぶし、自社で作っているコーヒーゼリーやコーヒー羊羹も、味はもとよりデザインコンシャス。

「お店の名前は聞いたことがあり、一度来てみたかったんです。一見すると工場なので、知らなければ見逃してしまいそうですよね。コーヒーはめちゃくちゃおいしいし、販売しているアイテムも錚々たるブランドとのコラボでびっくりしました。こんな素敵な場所だったとは…」

この日はチェリーコーヒーをテイクアウトして、最後に向かうは太平洋を一望できる海岸沿い!

どうしても、おでんが食べたくて…。

クルマを15分ほど走らせ到着した海岸。大階段があって、ローカルたちも変わりゆく空模様を楽しんでいる。こうして無事、撮影を終えたとき「そういえば、おでん食ってないですよね?」と勝山さんがポツリ。

そう、静岡と言えばおでんだ。

けれど、おでんと言えば酒だ。

ただ今日はクルマだ。

企画上、宿泊することはできない。

とはいえ、やっぱりおでんは食べたい!

「ひとまず、見てみましょうか」

そうして踵をかえし市内へ向かう!

青葉おでん
住所:静岡県静岡市葵区常磐町2丁目3-6

おでん街を見渡したあとに、我慢できるわけもなく、「イフニ」のオーナーがすすめてくれたお店へGO!

「静岡ならではの「だし粉」がかかった黒いおでん。正直、普通のおでんと変わらないだろうと思っていましたけど、大袈裟ではなく人生で一番おいしいおでんでした。来てよかった! クルマであっても、こういうお店で締めるって悪くないですね」

クルマで来ている=サクッとディナーを済ます、ではなくて居酒屋に入ってみる。すると、昼間に見えてこなかった街の魅力をたくさん知ることができるし、隣に座った地元の人の訛りを聞けたりもする。より街を味わいたいなら、ドライブであっても夜の店ははずせないのだ。

時間もなくアルコールも飲めずで不完全燃焼の夜。後ろ髪はひかれまくり、いろいろ巡ったはいいけれど腹は八分目。残りの二分を満たすため、帰りの車中で3月の静岡再訪を約束した一同なのでした。

Photo/Shouta Kikuchi

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