修羅たちによる「最強」vs「最強」を描いた壮絶なバトルファンタジー「異修羅」(毎週水曜夜11:00-11:30ほか、TOKYO MXほか/ディズニープラスで見放題独占配信・YouTube・ABEMAで見逃し配信)。迫力のバトル描写はもちろんのこと、豪華キャスト陣が演じる個性溢れるキャラクターたちが織りなす重厚な人間ドラマも見どころの本作。1月31日に放送された「第五話」は、無敗の剣闘士・海たるヒグアレ(CV:杉田智和)のバックボーンと、通り禍のクゼ(CV:三木眞一郎)を守護する静かに歌うナスティーク(CV:堀江由衣)が活躍した「海たるヒグアレと静かに歌うナスティーク」。(以下、ネタバレを含みます)

【写真】今回初登場となったクゼを守護する天使・静かに歌うナスティーク(CV:堀江由衣)

■ヒグアレ「42本あります」発言でカッコよさ爆発!

月嵐のラナ(CV:花守ゆみり)にスカウトされ、新戦力としてリチア新公国にやってきた音斬りシャルク(CV:山寺宏一)と海たるヒグアレは、リチアを治める警めのタレン(CV:朴ロ美)と謁見する。14年ものあいだ奴隷剣闘士として戦っていたという経歴に興味をもったタレンは、ヒグアレにことの経緯を尋ねる。これに応じたヒグアレは、「生」にたいした目的はないながらも、ただ「死ぬのは嫌だ」という一心で戦い続けてきた自身の過去を語る。

ヒグアレの過去シーンでは、彼の自我の目覚めや精神の成長が描かれている。ヒグアレだけがそうなのか、根獣(マンドレイク)という種族全体がそうなのかは分からないが、奴隷商人の手に渡ったばかりのヒグアレは自我に乏しく、「死」の意味すらわかっていない。しかし「殺すか死ぬか」という過酷な奴隷剣闘を続けるうち、しだいに「死にたくない」という気持ちが芽生え、同時に「生きる」ことの意味を考えるようになっていく。ついには、死なないために身につけた自身の技術や強さに「プライド」を感じるまでとなり、そのことに気づいたヒグアレは声をあげて笑う。植物の身でありながら、奴隷剣闘というつねに死と隣り合わせな環境で育ったことにより、なんとも独特な精神性を獲得するに至ったヒグアレ。「死」を避けるべく「生」に固執する彼の本質は、ある意味でもっとも生命体として正しく、ある意味で人間くさいキャラクターと言えるかもしれない。

ヒグアレの語りが終わると、鵲のダカイ(CV:保志総一朗)が部屋に入ってくる。初対面のダカイは、シャルクやヒグアレの力を値踏みするかのように軽口を叩き、さらに果物をヒグアレに投げつける。ヒグアレは3本の腕と刀剣を出し、飛んできた果物を目にも留まらぬ速さで切り刻むと、それを見ていたラナは「神業だな マンドレイクなら3本の腕を同時に使えるってことか」と感心。するとヒグアレは「いいえ 42本あります」と、さらに身体に隠し持っていた腕と刀剣を披露するのだった。

「第三話」で無類の強さを見せたダカイが登場。いまだに底の知れない強者3人が集まっただけでワクワクするが、ダカイがやや挑発的な態度を取ったことで、部屋内の空気がピリッと張り詰めるのが面白い。今回はバックボーンが明かされなかったシャルクも、ダカイとの会話から相当な使い手であることが伺える。また、最後にヒグアレが42本の腕と刀剣を取り出すカットは圧巻のビジュアルで、これらの腕をすべて自在に操れるとしたら、まさに「最強」なのではないかと思わせてくれる迫力がある。

■世界詞のキアに続く、超チート能力者の登場

舞台は移ってライシ山間集落。「教団」に属する始末屋である通り禍のクゼは、濫回凌轢ニヒロ(CV:高橋李依)の護衛としてメイジ市へと向かっていた。道中、馴染みの救貧院で一夜を過ごすこととなったクゼは、院の子供たちと久しぶりに再会し、彼らのごっこ遊びに付き合うなど、賑やかで楽しいひとときを過ごす。教団のさまざまな問題を抱えつつも、それをおくびにも出さず明るく振る舞うクゼの姿を見て、世話係のリペル(CV:若山詩音)は思わず「変わらないなぁ クゼ先生」と笑みを浮かべるのだった。

ここでは、クゼとニヒロのちょっと意外なキャラクター性に注目だ。クゼは教団の始末屋という立場ながらも院の子供たちからとても慕われていて、クゼ自身も子供たちのことを本気で可愛がっているように見える。戦いや衝突を好まない性格に映るだけに、なぜ始末屋という裏稼業をやっているのかが不思議なくらいなのだ。一方で、ニヒロのギャップも見逃せない。クールながらどこか危険な匂いを漂わせていた「第四話」とは違い、今回は驚くほどに明るくフレンドリーな一面を見せてくれた。リペルのことを「いい子だね」と褒めたり、クゼに対して「同じ部屋で寝てくれたって構わないんだよ」と、ジョークとも本気とも取れるセリフを言ってみたり。「史上最悪の生体兵器」という言葉のインパクトが強すぎるだけで、実際には意外と常識人で乙女だったりするのかもしれない。真実は分からないが、そうかもしれないと想像するだけで、一気に可愛く思えてくるもの。クゼにしろニヒロにしろ、こうした絶妙なギャップ描写がキャラの魅力を大きくアップしているのは間違いない。

その夜、ひとりクゼの前に現れたリペルは、クゼにリチアに協力するように頼み込む。リチアから圧力があり、救貧院の今後を考えてのことだったが、クゼはこの頼みを断る。すると、事の成り行きを影から伺っていた4人のリチア諜報員がクゼに襲いかかる。クゼは大楯を取り出して身を守るが、攻撃手段がないため防戦一方。ところが、諜報員たちはなぜか次々と倒れていく。クゼの命を狙うものは、彼だけが知覚できる天使・静かに歌うナスティークに命を奪われてしまうためだ。ナスティークの能力とニヒロの救援で敵は殲滅。しかし、戦闘中に流れ矢に当たったリペルは致命傷をおってしまう。リペルを守れなかったクゼは、彼女に「ごめんよ」と声をかけ、その最期を看取るのだった。

ついにナスティークの正体と能力が明かされた。種族は「天使」で、どんな手段をもってしても干渉することができない非実在の意識体という、とんでもない存在だ。「第四話」で登場した世界詞のキア(CV:悠木碧)も完全なるチート能力だったが、ナスティークもこれに匹敵するレベルと言えそうだ。なぜクゼだけが知覚でき、なぜクゼだけを守るのか、その関係性や目的などは不明ではあるが、もしクゼの言うようにナスティークが「寂しがっている」のだとすれば、こんなにもロマンチックな物語はないかもしれない。

キャラ中随一の「異形」であるヒグアレと、随一の「異能」をもつナスティーク。どちらも強烈な個性の持ち主で、『異修羅』らしいキャラクターと言えるだろう。「第五話」はそんな彼らの能力描写はもちろんのこと、キャラクターそれぞれの内面描写も印象的で、SNSでも「ヒグアレとクゼさんが一気に好きになったり、ニヒロちゃんが可愛かったりでめっちゃ濃厚だった」、「誇りを持つに至ったヒグアレの半生と、自分は守れるけど周囲は守れないクゼの悲哀が良き」、「セクシーなニヒロさん好き!」など、さまざまな感想が見受けられた。さて次回「第六話」は2月7日(水)放送予定。ついにキャラクターたちが集結し始める展開だけに、期待して待とう。

朴ロ美のロは、王へんに路

■文/岡本大介

テレビアニメ「異修羅」第5話が放送/(C)2023 珪素/KADOKAWA/異修羅製作委員会