1月24日にマクドナルドから新バーガーとして「マックチキン」が発売されました。これは、従来のお手頃メニュー「チキンクリスプ」を進化させたもので、500円台でセットが楽しめる「ちょいセット(バリューセットが名称変更)」のラインナップとして加わるそう。単品は180円からとのことですが、どれほどの実力なのでしょうか……。

マクドナルドと言えば、最近の度重なる値上げが大きなニュースになりましたが、2023年前半の決算では同期過去最高益を発表。このような複雑な状況にモヤモヤ感を抱いている人は必ずやいることでしょう。

叩かれやすいのに、なぜ勝ち続けられるのでしょうか? 今回はこの矛盾とも思える状況にストレスを感じないためにも、今回はその理由について整理していきたいと思います。

マックには、ファンもアンチも両方存在する

はじめに、ハンバーガーチェーンの中でマクドナルドがとびぬけて叩かれやすい理由について、冷静に考えてみることにしましょう。大きな理由として真っ先に考えられるのが、看板商品であるビッグマックの驚異的な値上げでしょう。2005年に250円だった商品が、20年もたたずに2倍の500円(都心店価格)になってしまいました。日本の実質賃金が過去30年にわたりほぼ横ばいな状況をふまえると、この値上げを肯定的に受け入れられないのが多数派かも。加えて、これまた何度も起こる異物混入問題。ゴキブリや金属片など、アンチ派が増えるためには十分なものが入ってしまっています。

逆に「マック以外は絶対に行かない!マックが好き!」というファンも確実に存在するため、好きなハンバーガーチェーン、嫌いなハンバーガーチェーンを聞く類のランキングでは、どちらもマクドナルドが1位に君臨しています。

◆新バーガー「マックチキン」の実力は?

マックの価格戦略やリスクマネジメントも重要ですが、やっぱりおいしさが最も気になるところ。そこで1月24日から新発売されたマックチキンを実食してみました。

商品の説明としては、サクサクチキンパティとシャキシャキのレタススイートレモンソースをゴマ付きバンズでサンドし食べ応えのある一品とのこと。サクサク、シャキシャキ、食べ応えがポイントのようですが実際に食べてみると、最も感じたのはチキンの食べやすさ。想像以上に柔らかく、チキンナゲットよりもパティのしっとり感が味わえました。また、スイートレモンソースというビーフパティのバーガーとは異なるテイストになっている要素、そして「これが180円ならいいかも!」と思わせるコスパ力も加わり、新しい定番ラインナップとして素直に歓迎できるレベルでした。

さらに満足度が高かったのが、17時以降から販売される「倍マックチキンです。チキンパティが2枚挟まっていてかなりのボリューム感。モスバーガーではチーズバーガーの価格です。

今回改めて実感したのは、マクドナルドから顧客が離れない大きな要因の一つは、「低価格バーガーのクオリティ」にあるということ。500円台でも複数のセットメニューを選べる楽しさこそが、全体的な値上げがあったり、アンチが存在しているとしても、がっちり安泰なのです。

マックの凄みは、「一定の顧客層」を離さないこと

マックの強みは、もちろん低価格バーガーだけではありません。プレミアム、定番、低価格商品のラインナップが安定しています。たとえば、大人が満足する食べ応えを追求したサムライマックシリーズ」は、500円台半ばの価格設計。単品でも1000円を超えてしまう高級ハンバーガー店と比べると圧倒的な安さを実感しながら、ほんのりプレミアムな食体験が味わえます。そもそもハンバーガーはファストフードですから、プレミアムバーガーに憧れる人々のニーズをほどよく満たすことに成功しているのです。

そしてもう一つは、子育て世帯からの安定的なニーズ獲得です。日本におけるハッピーセットおまけは世界一と言っても過言ではなく、工夫がつまった絵本や図鑑、人気キャラクターの知育玩具をぞくぞく登場させることで、ファミリー世帯からの安定的な購買を獲得しています。

マクドナルドの徹底的な価格と商品設計のバランスこそが、時に批判を浴びながらも最高益をたたき出す源流になっていることは間違いありません。

<TEXT/スギアカツキ>

【スギアカツキ】
食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。世界中の健やかな食文化を追求。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)が好評発売中。Twitterは@sugiakatsuki12

叩かれやすいのに、なぜひとり勝ち?