突然「介護」が必要になったとき、まずは費用をなるべく安く抑えたいと思うもの。「在宅」か「施設」か……なんとなく在宅のほうが安価なイメージを持っている人は多いでしょう。しかし、在宅介護の場合、注意したいのが「保険適用外のサービス」です。『図解とイラストでよくわかる 離れて暮らす親に介護が必要になったときに読む本』(角川SSCムック)から、サービスの具体的な内容や金額をみていきます。※本記事の情報は、抜粋元の書籍が刊行された2021年7月8日時点のものです。

在宅介護にかかる初期費用は平均「64万円」

在宅で介護する場合、介護環境を整えることから始めます。ベッドや排せつ器具などの福祉用具を揃えたり、自宅の環境を介護仕様に整えたりなどの事前準備が必要です。在宅介護の初期費用は平均64万円(※)というデータがあります。

※ SOMPOホールディングス株式会社「介護費用に関する調査」2020年より在宅介護における初期費用

[図表1]は何にお金がかかったかの内訳で、住宅改修に132万円、医療費に50万円、福祉用具に26万円などが主な内容です。住宅改修や福祉用具の購入費は介護保険の適用となる場合もあります。

初期費用で一番金額が高かったのは、住宅改修の132万円ですが、回答者1,539名のうち、医療費と福祉用具についてはどちらも半数以上の人がかかったと回答しています。医療費についても公的制度をきちんと理解して、無駄な出費を抑えるようにしましょう。

ただし…「介護保険」適用で自己負担減

たとえば、福祉用具で代表的な、車いすや介護ベッド。介護する側の負担軽減になるので揃えておくと便利です。費用面が気になりますが、歩行器や介護ベッド、車いすなどはレンタルでき、介護保険が適用なので、自己負担額は、実費の1~3割です。

また、腰掛便座や簡易浴槽などは購入が一般的ですが、介護保険適用となり、支給限度基準額10万円までなら1~3割の自己負担で済みます。

なるべく早く住宅改修もしたいもの。室内を車いすで移動しやすいように段差をなくしたり、お風呂やトイレに手すりを付けたりなど、住まいの環境を整えることで、要介護者の自立度も高まります。小規模な住宅改修は、厚生労働大臣が定めた種類であれば、自己負担割合に合わせて上限18万~14万円まで給付を受けられます。

介護環境を整える給付制度を利用する!

福祉用具の購入や貸与にかかるお金は、介護保険が適用ですが、購入でも貸与でも市区町村の指定の業者での利用に限られます。

貸与の場合は、ケアマネジャーにケアプランを作成してもらい、その後福祉用具専門相談員のアドバイスに沿って用具を選び、レンタルの契約を結びレンタル開始となります。購入の場合もケアマネジャーに相談してから業者を選定し、用具を購入します。

住宅改修の場合も、まずはケアマネジャーへの相談が必要で、市区町村への申請手続きも事前に行い、認定有効期間内に改修すること。

購入と住宅改修の場合は、料金を支払ったあと、支給限度額分が戻ってくる仕組みですが、業者によっては申請手続きからしてくれる場合もあります。

【ポイント!】

住宅改修は要介護者の自立度を少しでも高めるためにも必要なことです。公的な制度を活用して費用の負担を抑えましょう!

金銭的負担の少ない在宅介護だが…“保険適用外”のサービスに注意

要介護認定を受けた場合の選択肢は、「在宅介護」か「施設入居」の2択。要介護度が低い場合や介護する家族の人手を確保できるなら在宅介護のほうが金銭的な負担は少ない場合が多いです。

【シミュレーション】要介護4の父が在宅介護…1週間の流れと費用の目安

アプランでは、介護サービス利用が要介護度の支給限度額内に収まるように作成されるのが一般的です。

[図表4]の例でも、要介護4の支給限度額月30万9,380円(1割負担なら月3万938円)内に収まるプランになっています。

ただし注意が必要なのは、介護保険適用外のサービス利用が全額自己負担になること。公益財団法人家計経済研究所の「在宅介護のお金と負担2016年調査報告」の、在宅介護にかかる1カ月の平均費用の内訳では、介護サービスへの支出が1.6万円に対し、介護サービス以外の支出は3.4万円と2倍以上です。

介護保険適用外サービスとは?

介護保険適用外サービスとは、利用者が料金を全額負担する介護保険適用外のサービスのこと。食事の宅配や訪問理美容など内容はさまざまで、民間事業者や自治体が提供しています。保険の範囲でできることには限りがあるため、保険外サービスとの混合介護が重視されています。たとえば、病院の入口までの付き添いは保険適用ですが、病院内の付き添いは保険適用外。このような不都合を解消するための体制作りが急ピッチで進められています。

介護保険適用外の費用は「全額自己負担」

もう少し詳しく見てみましょう。[図表4]は脳梗塞で倒れ要介護4となったAさんの父親のケアプランの例です。平日週3回はデイケアで過ごし、残りの2日はホームヘルパーが訪問します。

介護分野でかかる費用は、月額10万4,000円です。さらに、週2回の訪問看護と週1回の通院付き添いの看護分野で月額5万4,000円がかかります。結果、月額費用は、15万8,000円ですが、介護保険適用で自己負担は、1割の1万5,800円となります。

ここで重要なのが介護保険適用外の費用です。たとえば、デイケアでの食事代、介護タクシー代やおむつ代、週1回の通院による医療費など。これらの費用についてもしっかり把握しておきましょう。

介護費用は、親の年金と資産で賄うことを前提に、親と費用の負担について話したり、資産の状況を確認しておくことが大切。親のお金で賄えないなら、実家の売却の検討や、子どもたちでどのくらい負担できるか話し合っておくと安心です。

【ポイント!】

月額費用のうち介護保険適用外の費用が多くを占め、年間数十万円の出費になることを子どもも把握しておきましょう。

角川SSCムック

(※写真はイメージです/PIXTA)