AFCアジアカップでの優勝を目指すサッカー日本代表は、3-1でバーレーン代表に勝利。ベスト8進出を決めた。次は中2日で3日(日本時間20:30キックオフ)にイラン代表と対戦する。大会前の前評判では互いに優勝候補筆頭。事実上の決勝戦といえる対戦はどうなるのだろうか。

◆「得意な形を取り戻した」日本代表

 グループリーグでは対戦相手による研究の成果が出たせいか、日本代表は苦戦を強いられた。修正が急務となった決勝トーナメントでは、日本代表は得意な形を取り戻して3-1で勝利。対戦相手のバーレーン代表は思ったよりもロングボールを多用することなく、自分たちのスタイルを崩さないように臨んできた。日本代表にとっては与し易い相手になったのだが、それでも課題となっていたポイントをきっちりと修正して勝利を収めたのが日本代表だった。

 具体的に挙げると、森保一監督が掲げ続けている「いい守備からいい攻撃へ」ということが、これまでよりも格段によくなっていた。球際の激しさや、攻守の切り替えの速さなど基本的なパフォーマンスが向上し、前線から連動した守備ができていた。その成果が表れていたのが2点目で、久保建英が高い位置でボールを奪ったことで生まれた得点だった。

◆またもや相手のセットプレーから失点…

 自分たちがボールを保持する場面でのプレーも修正されており、縦幅にも横幅にもピッチを広く使った攻撃が展開できていた。特に、3点目は縦も横もうまく使って相手を崩した形だった。

 
毎熊晟矢が右サイドいっぱいまで広がってボールを受けると同時に、南野拓実が最終ラインの裏に抜け出す動きで相手を縦に広げた。その後、毎熊がうまく相手を引きつけてパス。受けた上田は巧みなターンでゴール前まで抜け出して、ダメ押し点を決めた。また、1点目の起点となった毎熊のミドルシュートもその証明のひとつで、サイドバックがあの位置で受けてシュートできるということは、ボールを保持しながら相手ゴール付近まで運ぶビルドアップがうまくいっていることを表している。

 しかし、すべてが修正されたわけではなかった。ひとつは、またもや相手のセットプレーから失点したことだ。右からのコーナーキックがファーサイドに蹴り込まれたのだが、それをはじき出そうとマークをはずしてボールに寄った中山雄太が軌道を見誤った。結果的には触ることもできずにボールは頭上を越え、相手にフリーでヘディングさせてしまった。加えて、GK鈴木彩艶も処理を誤ってしまったことが重なり失点してしまった。

ファウルを減らせば「セットプレーも減る」

 今大会における日本代表の失点はほぼセットプレーからである。修正は急務なのだが、もはや今大会中には難しいかもしれない。中2日で準々決勝が行われたあと、勝てば中3日で準決勝、中1日で決勝というスケジュールになる。試合後のリカバリーに1日かかることを踏まえると、実際にトレーニングに使える時間は1日か2日となる。サッカーではセットプレーよりも、ボールが動いているオープンプレーの時間のほうがはるかに長い。そのことを考慮すると、セットプレーに練習時間の多くは費やせない。ノックアウトラウンドが始まるまでに修正できなかったことから、残された過密スケジュールのなかで修正できるとは到底思えない。

 とはいえ、放っておいて勝ち上がれるほど軽微な問題ではない。そうなると、考えられるのは相手のセットプレーを極力減らすようにする方法になる。相手コーナーキックにならないように、自陣深くまで押し込まれないようにしたり、ファウルを減らしたりするように努めなければならない。実際に、日本代表のファウル数は多い。

 相手のカウンター攻撃や決定的なシーンをつくらせないようにするため、ゴールから離れた位置で早めにファウルで止めるという意味のある戦術的なファウルが多いのだが、今大会ではそういった意味のないファウルも目立つ。ゴールから遠いところとはいえ、不用意なファウルも減らす必要がある。なぜなら、相手がノープレッシャーの状態で、正確なボールをゴール前に放り込んでくる可能性があるからだ。

◆なぜ試合途中で「3バックに変更」したのか

 ここからは1点が勝敗を分ける戦いとなるため、どうするにせよ守備におけるセットプレーの対策は急務である。

 また、気になる点として3バックへの変更が挙げられる。後半35分に町田浩樹と浅野拓磨を投入してシステムを変更。4-2-3-1から3-4-3と前線の人数を減らして、3バックへと移行した。この結果、それまでうまく機能していた前線からのプレッシングは手薄になったことで緩くなってしまい、相手が比較的自由にボールを蹴れる状態をつくってしまい押し込まれてしまうシーンが増えた。いい状態のときになぜ手を加えるかと疑問に思う采配ではあったが、これは次のイラン戦を見据えたものと思いたい。

◆三笘が復帰も、伊東純也の離脱が…

 イラン代表は個々の技術力も高く、これまでの相手よりスピーディーかつ正確なプレーをしてくる。さらに、4-2-3-1とはいえ両サイドはかなり高い位置をキープして、縦に速いサッカーを展開するはずだ。そういった相手に有効なスペースを消すという守り方も、ときには必要になってくる可能性がある。イラン戦を見据えて見越して3バックを試したのだろうから、次戦ではその成果が見られることを期待したい。

 間違いなくこれまででもっともタフな戦いになるだろう。違いを見せられる三笘薫の復帰という朗報があった日本代表だが、旗手怜央の負傷に加えて伊東純也の離脱といった悲報もあった。選手起用によって戦術をコントロールするタイプの日本代表にとって、起用できる選手が減ってしまうことは痛手で、今のところマイナス要素のほうが大きいように感じる。それでも質の高い選手はまだまだいるし、調子も上がってきているように見える。現有戦力の連係・連動を高めて難敵を倒し、準決勝へと駒を進めてほしい。

<TEXT/川原宏樹 撮影/Norio Rokukawa>

【川原宏樹】
スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる

バーレーン戦で3点目を決めた上田綺世