オリオールズでキッカケを掴んでいた藤浪。その奮闘と成長は彼自身の市場価値を高めていた。(C)Getty Images

 球界屈指のパワーアームぶりは確かな契約を勝ち取った。

 現地時間2月2日、今オフにFAとなっていた藤浪晋太郎メッツと単年契約を締結したと、米スポーツ専門局『ESPN』をはじめとする複数の米メディアが報じた。メジャー屈指の金満球団と交わした年俸は335万ドル(約4億9580万円)で、85万ドル(約1億2580万円)の出来高払いも付帯する。

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 阪神からのポスティングで年俸325万ドル(約4億2000万円)の単年契約をアスレティックスと締結して迎えた昨シーズンは序盤戦に苦戦。日本時代からの課題である制球難で不振が続くと、4月下旬にリリーフに配置転換。その後もボールが乱れる場面が続き、思うように結果を残せない日々が続いた。

 そんな藤浪に転機が訪れたのは7月だった。プロスペクト投手のイーストン・ルーカスとのトレードで、オリオールズに電撃移籍が決まったのである。

 地区優勝を争っていたオリオールズ入団が決まった藤浪は粉骨砕身の思いで投げ抜いた。そして、気づけば、メジャーデビュー当時に30.86だった防御率は7.18にまで低下。課題だった制球面も終盤は一定の落ち着きを見せ、最終月となった9月だけを見れば、被打率も.190とほとんど打たれはしなかった。

 何よりも冴えたのは、日本でも異彩を放っていた剛速球だ。アスレティックスの投手コーチであったスコット・エマーソン氏が「フジのボールは通用する。あとは彼らしくいればいい」と唸ったほどの藤浪の4シームは、シーズンが進むにつれて鋭く、精度も向上。最速が100マイル(約160.9キロ)を超えたボールの平均速度は98.4マイル(約158.3キロ)で、空振り率は30.1%とメジャーでも屈指の一球となった。快速球に磨きがかかったのは、今回の契約に小さくない影響を与えたと言えそうだ。

 無論、制球力や安定感など課題はある。ゆえに契約金も名だたるメッツ投手陣の中では決して高くはない。それでも阪神での最終年俸4900万円(推定)を考えれば、わずか1年で大幅な昇給を果たしたと言える。これはひとえに彼の努力の賜物であり、不振に喘いだ昨春に米メディアで「悪夢」とも揶揄されたメジャー移籍が間違っていなかったという証明でもある。

 メッツでも藤浪はリリーフが主戦場になると見られている。そうしたなかで地元メディアからも「今年の結果次第でフジナミはもっと価値のある契約を手にできるはずだ」(メッツの専門サイト『Mets merized online』と期待される右腕の活躍は大いに注目したい。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

藤浪晋太郎、阪神時代から大幅昇給 「悪夢」と言われた怪腕がメッツ移籍で5億円に迫る年俸を手にできた理由