こんにちは。YouTubeチャンネル「聞いてわかる投資本要約チャンネル」を運営している、二児の父でサラリーマン投資家のタザキ(@tazaki_youtube)と申します。

【図解】相場サイクル~株式相場には4つの局面が存在する

これまでに投資・マネー系の本を300冊以上読破した経験から、ここでは特におすすめの書籍や、コスパの高い書籍を、経験値や投資スタイル別で紹介。24年2月2日には、著書「しっかり儲ける投資家たちが読んでいる 投資の名著50冊を1冊にまとめてみた」を刊行しました。

今回、ご紹介するのは「相場サイクルの見分け方[新装版] 銘柄選択と売買のタイミング」(著:浦上邦雄/日本経済新聞出版)です。

これは1990年に発行され、幻の名著とも称される作品の新装版です。株式市場のサイクルをまとめたこの本は、投資家にとって非常に役立つ一冊となるでしょう。

同書の主要なテーマは「株式相場には4つの局面が存在する」という事実です。それは金融相場、業績相場、逆金融相場、逆業績相場という4つの局面に分類されています。

このサイクルを理解し、銘柄選択と売買のタイミングに役立てようという内容です。

金融相場と業績相場は、景気の上昇期を示しています。その期間中、株価はピークを迎え金融引き締めが始まると、逆金融相場へと移行します。この逆金融相場では、まず株価が下落し始め、その後、実体経済も下降線に入り、逆業績相場へと移ります。

株価は基本的に景気の動きに先んじて動くため、景気の下降期間中でも株価が底を打つ瞬間が訪れます。その後、景気が底を打ち、金融政策が緩和され、金融相場、業績相場が再び始まるというのが、4局面の大まかな流れです。

同書では、これら4局面の特徴を詳細に説明しています。それぞれの相場状況における金利、企業の業績、そして株価の動きについてもまとめられています。

■金融相場

まず、金融相場について詳しく見ていきましょう。一言で説明すると、これは「不景気の中の株高」という状況を指します。実体経済はまだ上昇していないものの、政府の金融・財政政策による景気対策の期待感が株価上昇につながっています。

この相場の特徴は、金融政策や財政政策が推進され、公共投資の拡大などにより株価が反騰してくるという状況です。さらに、金利水準がコントロールされ、ビジネスの活性化が図られます。基本的に、銀行は金利を下げることとなります。

しかし、銀行が金利を下げると、その結果として貸し出しによる利益が減少します。さらに、預金金利、つまり私たちが銀行に預けて得られる利益も下がることになります(日本ではこれが長く続いていますが)。そうなると、銀行に預けても増やせないと考え株式投資を試す人が増え、株価の上昇につながります。

業績はまだ低迷していたとしても、株価は人々の期待感を表すもので、業績に先行して動くのです。

この金融相場は、いわば「理想買い」の相場です。景気回復や利益増加に対する期待感により株が買われます。しかし、実際にはまだ業績が上がっているわけではありません。将来の期待感だけで株が買われる状況です。

そして、このような時にリード業種になり得るのは、まず公共投資に関連する業界です。政府からの働きかけによって直接的にメリットがある建設、土木、不動産関連等が考えられます。また、不況に対する抵抗力のある公共サービス業界、例えば電力や電鉄なども価格が上がりやすいと考えられます。

さらに、不況でも業績の変動が少ない食品業界などもリード業種になり得ます。人々は景気にかかわらず食事をとるので、食品関連企業は不況の影響を比較的受けにくいためです。

また、財務基盤が強い企業は不況に耐えることができると考えられるため、そのような企業がリード業種となることも考えられます。

金融相場の株価上昇は先行き不安感がある中で始まります。例えば、2020年の上半期には、世界がどうなるのか予測がつかないような不安感がありましたが、その中で株価はかなり回復しました。今になって振り返ってみると、金融相場は先行き不安感の中で始まっていたということが分かります

このような強気相場は「悲観の中で生まれる」と言ったジョン・テンプルトンの言葉が思い出されます。

■業績相場

次に訪れるのが業績相場です。株価だけでなく、企業の業績を伴う好景気が始まります。

多くの経済指標が好転し始め、GNP(国民総生産)も回復に向かっていきます。これらの指標が好転し、景気底入れが確認された時点で、金融相場の終焉と業績相場の始まりを意味します。業績相場では、金利は緩和されていた状態から少しずつ引き締められ始めます。しかし、それまでの金利低下の影響もあり、企業の業績は上昇しており、株価もある程度長期間にわたって上昇する時期です。

金融相場が「理想買い」であったのに対し、業績相場の特徴は「現実買い」です。前半では素材系の企業(紙パルプ、化学、ガラス、セメント、鉄鋼、非鉄など)が主役となり、後半では加工業(機械、電気、自動車、精密機械など)が主役となります。

金融相場から業績相場への移行を示す指標の1つにPER(株価収益率)の低下があります。

PERは、株価を一株当たりの純利益で割ったものです。つまり、純利益(分母)が大きくなれば、PERは下がります。このことから、利益を伴う相場が徐々に訪れていると解釈でき、業績相場への移行が進んでいると確認できるのです。

■逆金融相場

株価も上昇し、企業の業績も上がり始めた時期に、金融引き締めの時期がやってきます。これは、過剰なインフレを防ぐために必要なサイクルです。この段階で訪れるのが逆金融相場です。

弱気相場から金融相場へ、さらに業績相場へと移行し、株価と業績が上がっていく一連の流れは一定のパターンを持っています。一方で、そのパターンが崩壊する時点では、多様なパターンが存在します。過去の事例を見ても、強気相場から弱気相場に移行するパターンは多岐にわたります。

逆金融相場でも、株価は実体の景気に先行して動くので、景気よりも先に、株価が下がる傾向にあります。中でも、景気に敏感な素材系の株や、借金比率の高い電力系なども全面安となります。

このタイミングでは、新規の株式投資は控え、短期の金融資産に近いものへ資産を移すことが推奨されます。もし株式を手元に残すのであれば、優良株に限定するのが良いとされています。

■逆業績相場

金融引き締めの影響で企業の業績も下がり始め、逆業績相場へと移行します。

金融相場は景気の芽生えの春、業績相場は盛り上がりの夏、その熱気が落ち着く逆金融相場が秋、そして業績が下降し始める逆業績相場が冬の到来というイメージとなります。

業績相場とは対照的に、逆業績相場では、減益という現実の環境悪化が背景にあり、「現実売り」という形で売られます。

相場の格言として「天井三日 底百日」というものがあります。これは相場が高騰する期間は短く、低迷する期間が長いということを表しています。ただし、逆業績相場も全てが悪いわけではありません。逆にピンチはチャンスであると考えることもできます。

通常、優良株は財務がしっかりしており、競争力もあり、業界トップクラスです。そのため、通常時には人気で割高になることが多く、買うチャンスは市場が混乱している時や長期の低迷期間しかありません。

また、景気が低迷しているときは、次の景気対策が施され、最初のサイクルに戻ることが予想されます。その際、最も恩恵を受けるのは金融関連の銘柄となります。この時期は金融関連銘柄の株価が大きく下がっていると考えられるので、安いときに購入するチャンスと言えます。これが投資の妙味があるとされる理由です。

■【まとめ】局面に応じた対策を学べる

この本は、4つの局面の特徴や実例、対策を学ぶことができます。初めて目を通す初心者の方にも売買タイミングや銘柄選びの際の参考資料として非常に役立つでしょう。

相場サイクルの見分け方[新装版]