エアバス2035年の実用化を目指し、世界初という水素動力旅客機開発プロジェクト「ZEROe」を進めています。異形のモデルもある4種の開発計画は、どのくらい進んでいるのでしょうか。

2035年の実用化を目指す

エアバス2035年の実用化を目指し、世界初という水素動力旅客機開発プロジェクト「ZEROe」を進めています。開発機体は”異形”ともいえる見た目をもつほか、推進に水素を用いることで、CO2二酸化炭素)の排出量をゼロにするというコンセプトが採用されています。

「ZEROe」は以下の4機種がラインナップされており、水素を燃焼させて現代のジェット旅客機のように推進するものと、燃料電池を用いて電力で推進するものが検討されています。

●「ターボファン」タイプ
2基の水素を燃料とするターボファン・エンジンで推力を得る。現代のジェット旅客機に相当。燃料となる液体水素の貯蔵タンクは、胴体後部に設置。乗客数は最大200人で、航続距離は2000海里(約3700km)程度。

●「ターボプロップ」タイプ
8枚の羽を持つターボプロップエンジンを2基搭載し、水素を燃焼させてこれらを動かす。現代のプロペラ旅客機に相当。こちらも水素燃料タンクは胴体後部に設置。乗客数は最大100人で、航続距離は1000海里(約1850km)程度。

「エイデザイン」や「完全電動」も?

●「ブレンデッドウィングボディ」タイプ
ターボファン」タイプと同じく、2つの水素ターボファン・エンジンにより推進するものの、エイのような胴体形状をもつ「ブレンデッド・ウィング・ボディデザイン」を採用することで、水素の貯蔵や供給方法、客室レイアウトの幅広い選択を可能にする。液体水素の貯蔵タンクは、翼の下に設置。乗客数は最大200人で、航続距離は2000海里(約3700km)程度。

●「完全電気コンセプト」タイプ
プロペラ推進の旅客機モデルであるものの、駆動方式に燃料電池を採用し、水素を発電用に利用し推進用の電気を得る。推進装置は6基搭載し、整備作業の効率化などの目的で取り外し可能な機構を採用している。各ポッドは連動せずに個々で独立して動く、いわゆるスタンドアローン式で、それぞれが電動機、燃料電池エレクトロニクスシステム、液体水素タンク、冷却システムなどで構成。乗客数は最大100人で、航続距離は1000海里(約1850km)程度。

これら「ZEROe」シリーズの実用化においては、機体側だけではなく、空港側の設備を整えることも必要になります。

エアバスではフランスドイツイタリア、そして日本など10か国とパートナー契約を結び、低炭素な空港運営の研究活性化などを目的とした「空港における水素ハブ」プログラムを開始し、2024年1月現在で63空港が参加しているそう。さらに同月にはアビノール、SAS、スウェーデンビアなどと、スウェーデンノルウェーの空港における水素インフラの実現可能性を調査するための覚書(MoU)を締結しています。

エアバスが発表した「ゼロエミッション旅客機」のブレンデッド・ウィング・ボディデザイン(画像:エアバス)。