テレビシリーズ放送開始から約20年の時を経て、ファン待望の劇場アニメーション『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』がついに公開された。2002~03年にかけて放送されたシリーズ第1作「機動戦士ガンダムSEED」は、キラ・ヤマトを主人公に、親友でありながら敵同士となってしまったアスラン・ザラとの関係が描かれた。続編「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」(2004~05年放送)では、戦争によって家族を失ったシン・アスカを主人公に据えて物語が展開。「SEED」に引き続いて登場のキラ、アスランの視点も交えつつ作劇が行われた。

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このテレビシリーズ2本と最新映画を3部作として見た場合、シリーズはキラの変化の物語として捉えることができる。「SEED」では突如として戦争に巻き込まれ、本人の意志に関係なく戦うことになってしまったキラの成長と葛藤が描かれ、「DESTINY」では一度は戦いから離れたものの、ラクス・クラインの身を案じる形で戦場に戻り、最終的には大戦を止める役割を担うこととなった。そして、今作の『FREEDOM』では、前2作からさらに、キラとラクスの関係性が深掘りされる物語となっている。そこで本稿では改めて、キラがたどってきた道をこれまでに搭乗した愛機の変遷と共に振り返っていきたい。

■突如として戦争に巻き込まれ、かつての親友と敵対することに…

「SEED」の物語が始まった直後のキラは、中立国であるオーブ連合首長国のコロニー、ヘリオポリスでナチュラルの両親と暮らし、カレッジに通う16歳の少年だった。しかし、ある日を境に、隠された自分の過去と向き合うことにもつながる大きな戦いの渦へと飲み込まれてしまう。

幼少期は家族と共に月面都市コペルニクスで暮らしおり、そこでアスランと出会い親交を深める。しかし、コーディネイターとナチュラルによる戦争の機運が高まり情勢が悪化していくなかで、キラの両親は戦いに巻き込まれるのを避けるべくヘリオポリスへと移住。ヘリオポリスでは普通の学生として暮らしていたが、ザフトの襲撃に巻き込まれたことで、キラの運命は大きく動き始める。

ヘリオポリスでは、地球連合軍大西洋連邦の兵器として、新型のモビルスーツの開発が進められており、ザフトはそれを奪取すべく攻撃を行った。戦闘に巻き込まれたキラは、ザフトの兵士となっていたアスランと再会し、さらに1機だけ強奪を免れたストライクガンダムに乗り込み、敵機を撃破する。

その後、キラとその友人たちは、軍の最高機密に触れてしまったことから拘束されるが、ザフトの攻撃によって人員不足となってしまったアークエンジェルにおいて、唯一モビルスーツを扱えることから、キラはストライクガンダムのパイロットを務めることになってしまう。アークエンジェルの主力として戦う一方で、追撃してくるクルーゼ隊の一員であるアスランとは、強く対立していくことになる。

宇宙での激闘を経てアークエンジェルが地球に降り立ったのち、小さな島を舞台に雌雄を決する戦いをするキラとアスラン。互いの友人を死に追いやってしまったことも影響し、私怨を含むことになった戦いはアスランが搭乗していたイージスガンダムストライクガンダムと共に自爆させる。双方のガンダムは大破し、キラは重傷を負ってしまう。

ここでキラは生死不明となってしまうが、島で孤児の世話をしていたマルキオ導師に助けられる。その後、プラントのクライン邸へと運ばれ、かつて宇宙で漂流していたところを救ったラクスと再会。彼女の手引きでザフトが開発していた最新鋭機フリーダムガンダムを手に入れ、プラントと地球連合の激化する戦闘を止めるために、どちらにも与さない立場から戦闘に介入することになる。

そして、地球連合軍にも多数のメンバーが存在する反コーディネイターを掲げる政治団体「ブルーコスモス」を中心としたオーブ解放作戦をきっかけに、地球連合軍を離れたアークエンジェルとも合流。オーブ代表首長の娘であるカガリ・ユラ・アスハの仲介によって、アスランとの和解を果たした。

さらに、カガリとは双子であることを知らされ、さらにコロニー・メンデルにおいて、自分が多くの犠牲の末に生みだされた人類最高のコーディネイターであることを知る。

最終決戦の場となった第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦では、アスランと共に地球連合軍のプラントに対する核攻撃とザフト側からのガンマ線レーザー砲「ジェネシス」の発射を阻止すべく、破竹の戦いを見せた。のちに伝説となるその戦いぶりによって、第一次連合・プラント大戦を終結させる立役者となった。

■終わりのない戦争を止めるため、再びフリーダムに乗る決意をする

先の大戦後、キラはラクスと共にオーブへと渡り、戦争で受けた心の傷を抱えつつも、オーブ本島近海の孤島で静かに暮らしていた。しかし、謎の集団によるラクスの襲撃事件が発生。これをきっかけに、再びフリーダムガンダムに乗り込み、同じくオーブに身を寄せていたマリュー・ラミアスらと共にアークエンジェルで戦いに向かう道を選ぶ。

ザフトと、ブルーコスモスの新盟主ロード・ジブリールを中心とした地球連合軍との戦いが激化するなか、ミーア・キャンベルをラクスとして仕立て上げ、プロパガンダ政策を行うプラント最高評議会議長のギルバート・デュランダルの動向に疑念を持ち始めるキラ。地球連合軍と同盟を結んだオーブ軍と、新鋭艦ミネルバを擁するザフトとの戦闘にアークエンジェルが介入し、出撃したキラはザフトに復隊し、ミネルバに配属されていたアスランと対立することになる。デュランダルの言葉を信じるアスランを説得することができず、キラは直接対決でアスランセイバーガンダムを撃破する。

続いて、ベルリンでの地球連合軍によるデストロイガンダムを使用したザフト軍殲滅作戦にもフリーダムガンダムで参戦し、デストロイガンダムを操縦するステラ・ルーシェを止めようとするシンと遭遇。シンは心を通わせたステラを助けようとしていたが、砲撃を止めようとするフリーダムガンダムデストロイガンダムを攻撃。爆発に巻き込まれたステラが死亡したことから、シンはフリーダムガンダムへの復讐を決意する。

ザフト地球連合軍の戦闘に介入し続けるアークエンジェルを危険分子と考えたデュランダルは、アークエンジェルを撃沈するためのエンジェルダウン作戦を発動。ここでシンと再び対峙するが、インパルスガンダムの特性を活かしたシンの特殊な攻撃によって、キラはフリーダムガンダムを失ってしまう。一方、エンジェルダウン作戦をきっかけに、アスランデュランダルの言動に疑念を持ち、ザフトを脱走。キラとも和解する。

キラは新たな機体であるストライクフリーダムガンダムをラクスから受け取り戦いに復帰。デスティニーガンダムに乗り換えたシンと三度対峙するが、機体性能の高さを活かし圧倒するのだった。

その後、ジブリールオーブに逃亡したことをきっかけに、デュランダルが発動したオペレーション・フューリーにおいてオーブに対するザフトの攻撃が始まると、オーブ軍の援軍としてキラの乗るストライクフリーダムガンダムが参戦。ここでもザフトを撤退させるほどの活躍を見せている。この戦いにおいて、キラをはじめとするアークエンジェルクルーはオーブ軍に正式編入された。

しかし、デュランダルによる人々の遺伝子を解析し、その結果を基に適切な職業に就かせることで個々の差別意識をなくす人類救済計画「デスティニープラン」が提唱され、世界でその是非が問われるなか、戦争の局面は第二次連合・プラント大戦の最終決戦となるメサイア攻防戦へと突入。キラはレイ・ザ・バレルの乗るレジェンドガンダムを退け、ザフトの拠点である機動要塞メサイアへ向かう。そこで、ついにデュランダルと対峙し、人類の未来について意見をぶつけ合った。最終的にデュランダルに手を下したのはレイだったが、キラが戦いを終結に導く大きな役割を担ったことは間違いない。

■ラクスを中心に「コンパス」が設立。平和のためにキラは戦い続ける

第二次連合・プラント大戦の終結後、オーブを中心に、地球連合軍大西洋連邦、プラントが共同して組織し、ラクスを初代総裁に据えた世界平和監視機構「コンパス」が設立。キラも新型機ライジングフリーダムガンダムを駆り、コンパスモビルスーツ部隊を率いる隊長を務めることに。敵として激闘を繰り広げたシンとも和解。シンもキラのもとで共に戦っている。

数々の戦いを経てキラは、自分がコーディネイターであるということ、両親は実の親ではなかったという衝撃の事実を知り、そうした出自を持つからこそ運命のように戦闘に引き寄せられてしまっていた。しかし、キラの本質には戦いを嫌う思いがあり、そして自分の周りの大切な人々を守るために戦場に向かう優しさを持ち続けている。

キラは遺伝子的に完璧な人類のように言われているが、本当は脆く傷つきやすい。キラが見せる強さと優しさは、そうした相反するものを内包しているからこそ持ち得る人間らしさの表れなのかもしれない。『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』では、キラの持つ人間性とラクスへの想いが、物語の重要な軸として描かれている。

文/石井誠

『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』にいたる物語を主人公、キラ・ヤマトの視点で振り返る!/[c]創通・サンライズ