学生時代のころのほうが物覚えが早く、年齢とともに記憶力は衰えていくと考えている人たちもいるのではないでしょうか。脳の特徴と最盛期についてみていきましょう。著書『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』(サンマーク出版)より、 加藤俊徳氏が解説します。

脳全体の特徴について

大人の勉強法にとっていちばん大事なことは、脳のルールに従うこと。

そして、脳にとっていい環境を与えること。

この2つが何よりも大切です。

そのために、まずは脳全体の特性を知ることから始めましょう。

脳はとても繊細で複雑な器官でありながら、一方で、とても単純という面も併せ持っています。知れば知るほど親しみが湧いてきます。

本書では、冒頭でも登場している脳ちゃんが、大人脳について解説していきます。まずは脳ちゃんの性格を把握しましょう。

脳の最盛期が40代後半から50代なワケ

好きなことばかりやりたがるけど、飽きっぽく、ご褒美が用意されているとわかると頑張れるーこれが脳の本質的な性格で、誰にでも共通している部分です。

この基本的な性格をベースに、大人になるにつれ、それまで過ごしてきた環境や職業、人生経験、そして脳の活かし方によって、脳は個性的に成長していきます。しだいに脳にも持ち主に似た顔つきや個性が表れてきます。

脳科学的には脳の成長に終わりはありません。

脳は、生涯にわたって成長し続けます。

死ぬまで未完成であると言ってもいいでしょう。

また、脳の特性として、たくさん使った部位が成長するというのがあります。そのため、年齢とともに興味の対象が移り変わり、仕事で求められるスキルが変わっていけば、それに合わせて脳の形状もどんどん変化していきます。

脳の“旬”は40代以降!?脳の最盛期は「45歳から55歳」

私がこれまで1万人以上のMRI脳画像を見てきた経験から言えることは、脳が個性をより光らせるのは30代以降だということ。

就職、昇進、結婚などライフステージの変化に富み、新しい刺激をたくさん浴びる時期に脳は急成長を遂げます。

そして、多くの人が、40代以降に脳の力が急激に衰えると感じているようですが、実際のところは、その真逆。

脳はこの時期、衰えず、成長し、むしろ旬を迎えます。

仕事でもプライベートでも、悩み、思考し、決定を下してきたその経験値が糧となり、学び直すことを面白いと感じたり、難しい話を理解したり、複雑な問題を解決したり、気難しい相手とコミュニケーションをとったりという脳の高次機能が熟成するのは、むしろ中年以降!

脳の中には、特に複雑な情報処理を担う、脳細胞のエリート集団がいます。

私はこれを「超脳野(スーパーブレインエリア)」と呼んでいます。

記憶や理解を担う「超側頭野」は30代でピークを迎えます。

視覚や聴覚から入ってきた情報をもとに分析や理解をする「超頭頂野」は40代でピークに。

実行力や判断力を司る「超前頭野」は50代でピークを迎えます。

これらの脳力は遺伝ではなく、後天的に伸ばしていけるもの。

つまり脳のピークは30〜50代。

その中でも45歳から55歳は脳の最盛期とも言えます。

まさに、学ぶのに絶好の時期。

「55歳からは下り坂になるのか」と心配した方もご安心ください。

この超脳野がピークを迎える時期に、脳をしっかり働かせておけば、60代以降になっても脳はきちんと成長を続けていきます。認知症にならない限り、一生頭がよくなり続ける脳を手に入れることができるのです。

加藤 俊徳

加藤プラチナクリニック院長/株式会社脳の学校代表

脳内科医/医学博士

(※写真はイメージです/PIXTA)