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はじめに

BYDの欧州における市場拡大は、全速力で進んでいる。新規参入や開拓は、まずは様子見からはじめがちだが、彼らはクロスオーバーのアット3を投入すると、1年以内に合計3台を発売した。その3番目に当たるのが、今回のシールだ。

【画像】写真で見るBYDシールとライバル 全16枚

BYDは単に欧州へ新型車を売り込んでいるだけではない。欧州での現地生産に向けた動きを、ハンガリーで行っている。中国のメーカーが欧州生産をすれば、今では閉鎖されたロングブリッジ工場を使っていたMG以来のこととなる。

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テスト車:BYDシール・デザイン    JACK HARRISON

ハンガリー工場の完成は数年後の話だが、今回の主役は新型車のシールだ。アザラシとかアシカとか、誰もが愛らしいと思う海獣の名にごまかされることなかれ。これは本気も本気で造られたクルマだ。

アット3とドルフィンは、やや低価格帯を狙ったモデルで、前輪駆動だ。どちらも、このクラスを牽引してきたライバルたちを揺るがすまでではない。ただ、ドルフィンの価格設定は魅力的だ。

しかしシールは、後輪駆動の上位機種で、バッテリー容量は大きく、ハンサムな空力ボディと大きなパワーも備えている。パッと観ではテスラ・モデル3のライバルといった感じだが、走らせてもそうなのだろうか。

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

BYDのデザインスタジオは2016年から、アウディアルファ・ロメオで辣腕を振るったウォルフガング・エッガーが率いている。そのため、最近のBYDのデザイン言語は、いかにもドイツ人のベテランが手掛けたと思わせる、ややもすれば当たり障りなく感じさえしそうなまとまりがある。

ムースで公称Cd値が0.22と空力に優れたセダンボディは、テスラからモデル3の顧客を奪いそうな部分は少ないものの、ディテールは精密で、どうにかして好き勝手をほとんど実現している。これまで以上に海の生き物の名を持つクルマらしい要素も見られ前輪ホイールハウス後方とサイドシル後端にはエラ、Cピラーには鱗を思わせる造形がある。もっとも、哺乳類であるアザラシにはどちらもないので、ヒレとなった手足をイメージしたのかもしれない。そうなると、デイタイムライトがヒゲにも見えてくる。

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ホイールサイズは両仕様とも19インチで、スポークの隙間には空力カバーが備わる。タイヤはコンチネンタルで、さほど低扁平ではない前後同サイズだ。オプションは多くない。そのひとつが、ホイールハウス後方とサイドシルのギルの仕上げ。テスト車はブラックギルトリムだった。    JACK HARRISON

BYD独自開発のe-プラットフォーム3.0は、基本構造の設計こそ格下のドルフィンやアット3と共通だが、駆動力のメインはリアへ移る。中央は独自のブレードバッテリーで埋められる。ほかのメーカーと異なり、バッテリーまで自社開発・生産を行う。電池メーカーが母体となっただけあって、一般的なOEMニッケルマンガンコバルトよりレアアース使用量を減らしたLFPことリン酸鉄リチウムを採用する。

そのほかにもメリットはある。まず、ダメージを受けた際には、ほかの方式より熱暴走するリスクが低い。そして寿命が長いとされていて、フル充放電を繰り返してもその長寿命に影響しないと言う。

いっぽう、LFPはエネルギー密度の低さがデメリットで、容量を求めると大型化してしまう。充電速度も遅い。BYDではこれを部分的に修正。エネルギー密度については、バッテリーパックの構造を変更することで是正した。

小さなセルの円柱や角柱でモジュール内を埋め、それを並べるのが従来のやりかただ。そうではなく、いきなりケース長と変わらないような長い板状の、ブレードバッテリーの名の由来ともなったセルをパックへ直に設置した。スペースとウェイトをセーブして、LFPには必須ではない液冷システムを組み合わせているのだ。

懸命な判断だが、その文重量はかさんだ。公称値は2055kg、テスト車の実測値は2116kgだが、いずれにせよ、最近計測してモデル3のデュアルモーター仕様の1846kgより重いのだ。

シールのバッテリーパックは、車体構造に統合され、ねじり剛性を高める。公称値の4万500Nm/degは、自動車業界ではあまり聞かないほど高い数値。計測の仕方など不明点もあるが、かなり高剛性だと考えていいだろう。

仕様はふたつ。シングルモーター仕様のデザインは、リアに永久磁石同期式を積み、312psを発生。フロントにコンパクトな非同期モーターを加えたエクセレンAWD530psとなる。

どちらも、サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン、リアがマルチリンク。エクセレンスには、メルセデスやヴォグゾールが採用する周波数選択肢のダンパーも装備される。

内装 ★★★★★★★☆☆☆

BYDのインテリアは、ワイルドな形状とほかにはないような色使いも見慣れてきたが、単調な黒とグレーのゴムやプラスティックを与えられても斬新なデザインを仕上げてきた。そこには、BYDの原稿ラインナップに通じるフィロソフィが見て取れる。

いかにも人工的で、やや奇妙な感触のヴィーガンレザーはいただけないが、それさえ気にならなければ、シールのキャビンはこれまでのBYD車からステップアップしていると言える。すでに、競合車を上回る質感を備えているそこから、さらに高まっていると言うことだ。

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90°回転する大型ディスプレイテスラのようだが、それよりはスイッチ類が残されているのがありがたい。造形や収納部もまずまずだが、インターフェイスのソフトウェアにはまだまだ改善の余地がある。    JACK HARRISON

ダッシュボードとドアトリムは、ほとんどがソフトな素材で覆われ、うれしいくらいソリッドな質感だ。グロスブラックのプラスティックも、表面ににぎやかしの模様を入れている。

ライトブルーのカラースキームが気に入らなければ、もっと控えめなブラックの選択肢もある。そのほうがキレイに保ちやすいかもしれない。テスト車は装飾付きだったが、たった1週間乗っていただけでもかなり汚れた。

そこはまめに拭き取れと言う話だが、それよりせっかくのプレミアムな経験を損なう要素が臭いだ。アット3やドルフィンほど気にはならなかったし、ケミカルなラベンダー風芳香剤みたいな新車の香りとなっていたが、気に入らないと言うテスターが多かった。

操作系のほとんどは、90°回転可能な15.6インチの大型センターディスプレイに集約され、実体操作部はわずかだが、その選択には疑問が残る。ミラーやメディア音量の調整、オートホールドなどは便利だ。しかし、ブラインドスポットウォーニングやマッド&スノーモード、エアコンオフなんて使用頻度の低いものは、もっとよく使う機能に場所を譲ればいいのにと思う。

それ以外は手当たり次第、タッチ画面インターフェイスへの統合が求められた。ありがたいことに、ディスプレイの反応は素早く、表示はキレがいい。しかし、ホーム画面に表示される機能はほんの一部で、ほとんどがメニューの階層掘りを必要とする。

たとえば室温調整は、画面下端を上へスワイプして操作部を表示させる。シートヒーターはそれに加えて、2度タップしないとメニューを呼び出せないし、その場合は全画面をシートヒーター操作系が埋め尽くす。そこからApple CarPlayへ戻るには、やはり2タップが必要だ。

ショートカットをいくつかは設定できるが、その操作は容易ではない。音声操作は十分な助けにはなってくれないレベルで、きわめてベーシックなコマンドでさえ、一言一句クリアに発音しないと認識しない。しかも「できません」で片付けられる項目があまりにも多すぎる。おかしな英訳や、まともじゃない句読点の位置も気になって仕方ない。

室内装備では、ワイヤレス充電がふたつ。まともなサイズのドリンクホルダーがふたつ、センターアームレスト下の深い小物入れ、センターコンソール下の大きなトレーがある。ただこのトレー、走行中に置いたものが動いて音を立てる。カーペットかゴム引きがほしかったところだ。

後席レッグルームは、ヒョンデ・アイオニック6にごくわずかながら及ばなかった。とはいえ、ヘッドルームははるかに大きく、シートの角度はずっと快適。リアシートに座る同乗者は、シールを支持するはずだ。

走り ★★★★★★★★☆☆

2モーターのシールは、にわかには信じがたい530psで0−100km/hが3.8秒というハイスペックだが、1モーターの後輪駆動版でも312psと十分に力強い。1モーターの競合モデルの中で、これを上回るものはない。寒く路面が湿ったテストコースで、後輪駆動のシールは公称0-100km/hタイムの5.9秒にコンマ2秒届かなかった。

ファミリーカーBEVにとって、これが瞬発力不足なのかどうかは甚だ疑問だ。とはいえ、パワーで劣るテスラ・モデル3の後輪駆動版が、スペック表により早いタイムを記しているのは、重量差によるものだろう。その後、190km/hのリミッターに至る加速は、スマートに続いていく。

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1モーターで312psというのはクラス最強レベル。ブレーキ性能もまずまずだが、回生ブレーキにはワンペダルに近い運転ができる制動性能がほしかった。    JACK HARRISON

公道では、常に気持ちいい活発な走りを見せる。バッテリー残量が30%以下になると、あからさまにパワーダウンするが、それでも、もともと312psあるのが大きい。

スロットルレスポンスには、意図的な味付けがされている。どの走行モードでも、床までペダルを踏み込んでみても、パワーは徐々に出るようなセッティングだ。すべての操作に対して遅れがあるスマート#1ほどひどくはないが、直観的なドライビングを損ねてはいる。エコモードでパワーが絞られるというのは理解できるのだが。

回生ブレーキのモードはふたつ。スタンダードはなかなか減速しないが、より強い方でも効きはマイルドで、ワンペダル運転できるほどではない。最新BEVとしては、もう少し調整幅の広さがほしいところだ。113km/hからの静止が51.4mというのは長めだが、コースの今比ションの割には良好。ブレーキペダルは軽くてトラベルが長く、自信をもたらしてくれるほどではない。

使い勝手 ★★★★★☆☆☆☆☆

インフォテインメント

対角線で15.6インチと巨大なディスプレイで、しかも回転機構が備わるというのはアイキャッチだ。またカーソルをクリックしたりスワイプしたりすれば、画面の解像度とレスポンスがすばらしいことに気づくだろう。

とはいえ、このインターフェースを使いはじめてみると、とくに走行中に、構造の複雑さと、有効に使える面積の小ささに、苛立たずにはいられなくなる。結果として、頻繁に使う機能が、メニューの深い階層に埋もれてしまうのだ。

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センター画面は大きいが、有効に使えているか、はなはだ疑問。実体スイッチも、もっとよく使う機能に割り振ればいいのにと思わせるところがある。    JACK HARRISON

ナビゲーションシステムはわかりやすいが、渋滞回避性能は低い。Apple CarPlayとAndroid Autoに対応するが、どちらもワイヤレス接続ができない。CarPlayは車載機能に組み込まれるのではなく、そのすべてを支配的に操作でき、画面回転機能のキャンセル操作も可能だ。

分割表示はできるが、車載ナビとSpotifyハーフハーフのみだ

オーディオはダイナウディオ製。フォルクスワーゲン・トゥアレグのオプションに選ばれたこともある、デンマークの名門だ。実際、シール用システムは温かみとクリアさのある、じつに心地いいオーディオだった。

燈火類

スペック表ではアダプティブLEDヘッドライト搭載となっているが、その実体は自動ハイビームであり、もっと複雑な機能の、いわゆるマトリクスLEDではない。

ステアリングとペダル

ペダルもステアリングホイールも、きわめて一般的な配置。アジャスト量は十分にある。

操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆

プライマリーとセカンダリーの乗り心地がここまでかけ離れたクルマというのも珍しい。走り出しの数mはショックがわずかながらある。低速で、とくに前輪が、ポットホールや雑な路面補修を踏み越えたときには、衝撃が大きい。

速度が上がるにつれ、衝撃は薄らいでいき、代わりに前輪は静粛性を妨げ出す。荒れた路面では、コンスタントに速度に依存んした振動がステアリングホイール越しに伝わってくるのだ。長距離走行ではかなり疲労につながる。

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市街地では荒れた路面での洗練性に欠ける後輪駆動版シールだが、速度が上がるにつれ本領を発揮し、ワインディングでの走りはしなやかでRWDらしいバランスをみせる。    JACK HARRISON

高速道路の速度域に達すると、それはだいぶ小さくなるし、制限速度の113km/h付近では気にならなくなるのはありがたい。ただし、完全に消えることはない。

同時に、プライマリーライドは明らかにふわふわしている。小さなバンプはワンツーのリズム感ある動きで抑え込み、減衰不足によるフロート感はほとんどない。ここまでソフトなサスペンションだと、バンピーなB級道路は扱いかねそうだが、シールのそれは、最悪の路面でも処理できるサスペンションストロークが備わっている。

この手のしなやかさは、コントロール性を犠牲にしない。それだけに、コーナーではバランスのいい挙動を見せ、じつにたのしい。本来の性質はマイルドなオーバーステア傾向へと向かうもので、パワーオンでもオフでも、歯切れのいい旋回からのパワーをかけての脱出が確実に決まる。

トラクションとスタビリティのコントロールがカットできるのは低速でのみなので、ドリフトは楽しめなかった。とはいえ、テストコースでそれをしなければならない理由もなかったのだが。システムは、全体的によくできている。きわめてスムースで、完璧なトラクションを維持するために必要な以上のパワーを放出することはない。

ステアリングには、特別なところはない。ギア比は平均的なロックトウロック2.5で、小回りもまずまず効く。ラックの精確さも十分で、グリップレベルを知らせるフィードバックも、自信を持って走らせるのにちょうど足りるくらいだ。

快適性/静粛性 ★★★★★★★★☆☆

乗り心地は、いいところも悪いところもまぜこぜ、といった感じだ。市街地ではぎこちないが、速度が上がれば落ち着き、とはいえステアリングホイールの振動が消えることはない。

それも、ある程度は慣れるだろう。その助けになるのが、じつに快適なシートだ。ファンシーさはないが、ヒーターもベンチレーターも標準装備で、調整幅が広く、当たりはソフトだがサポート性は高い。長距離ドライブするには実にいいシートだ。

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街なかではゴツゴツした乗り心地も、高速道路では収まる。特別静かではないが、シートは快適。そんな長短ともに明確なクルマだ    JACK HARRISON

ドライビングポジションは、テスラ・モデル3やポールスター2に近い。言い換えるなら、ICE搭載の高級サルーンのように特別低くはないが、それでもスポーティなセダンだと感じさせるには十分低く、背の高いドライバーも頭上が気にはならない。

着座姿勢は脚を伸ばしたクラシックなポイションで、ステアリングコラムの調整量もなかなか。ただし、メモリー機構の類はそれほど期待しないでほしい、関連メニューにたどり着けたら、一旦リセットすることをおすすめする。

遮音性はクラス標準くらいで、新たな基準を打ち立てるまでには至らなかった。113km/hで68dBAだと、ヒョンデ・アイオニック6に1dBA及ばない。

購入と維持 ★★★★★★★☆☆☆

シングルモーターのシール・デザイン、お値段4万5695ポンド(約859万円)から。有償色のシャドーグリーンとインディゴグレーは876ポンド(約16万円)で、そのほかは標準色。それ以外にオプションなし。なお、デュアルモーターのシール・エクセレンスは48695ポンド(約915万円)と、3000ポンド(約56万円)高いのみだ。

BYDはなにも、自社を安売りブランドと規定しているわけではない。同じような装備内容ならポールスター2スタンダードレンジやヒョンデ・アイオニック6より安価だが、その差はわずかだ。安さにかけては、テスラ・モデル3が大きく抜きん出ている。

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まだ認知度の低いブランドゆえに、残価予想は低くなってしまう。テスラのようになるには、実績を重ね信頼を得る時間が必要だ。

BYDの強みは、ほとんどのライバルよりkんだいな保証だ。最大6年もしくは15万kmで、駆動系とバッテリーは+2年となり合計20万kmまでカバーする。

気になるのは経済性や急速充電性能だ。電費表示は、通算値と残り80kmを示すもののみしかも、この80kmが正確ではない。。リセットしてから計測してみると、80km到達前に電力が尽きるのだ。逆ならまだよかったのだが。

ディスプレイの表示要素が選べないのも、また問題。センター画面はkWh/100km、メーターはkWh/100マイル、と電費の単位が異なっていて、これは変更できない。細かいようだが、意外と不便だ。

電費そのものは、普通に使って5.5km/kWhで、このクラスではそこそこだが、テスラには負ける。計算上、航続距離は449kmとなるが、LFPバッテリー搭載車なので、フル充電しても性能持続性に悪影響はない。アダプティブモードでさえ、航続距離計は楽観的すぎる数字を示す。

急速充電性能はきわめて低いが、テスト日が非常に寒い冬だったことの影響は否定できない。数値で言えば、150kWという公称最高値がすでに、アイオニック6の233kWやモデル3の170kWを下回っている。

しかも、実際に操作すると135kW以上をみることができなかった。これは異なる2台の350kW充電器を使って得られた結果だ。どちらの場合も、50%チャージ付近で充電速度が劇的に落ちるのだが、プラグを抜いて再度チャージすると数値がまた跳ね上がる。

全体を通せば、メーターパネルもバッテリーがウォーミングアップ中だったことを教えるメッセージを表示していた。もっと簡単に使えるバッテリーコンディションの準備機能があれば、そのメリットは大きいはずだ。

スペック

レイアウト

基本構造はアット3やドルフィンと同じe-プラットフォームのファミリーにおける上級版で、後輪駆動ベース。フロントに非同期モーターを1基追加した4WD仕様も設定する。

サスペンションは、下位モデルのストラットに対し、フロントはダブルウィッシュボーン、リアはマルチリンクとなる。リアシングルモーター仕様であるテスト車、その前後重量配分は47:53だった。

パワーユニット

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基本構造はe-プラットフォームの上級版で、サスペンションはダブルウィッシュボーン/マルチリンク。後輪駆動ベースで、フロントに非同期モーターを1基追加した4WD仕様も設定する。 リアシングルモーターのテスト車は、前後重量配分47:53だった。

駆動方式:リア横置き後輪駆動
形式:永久磁石同期式電動機
駆動用バッテリー:空冷リチウムイオン(リン酸鉄リチウム)・420V・82.5kWh(グロス値/ネット値)
最高出力:312ps/-rpm
最大トルク:36.6kg-m/-rpm
最大エネルギー回生性能:125kW
許容回転数:-rpm
馬力荷重比:152ps/t
トルク荷重比:17.8kg-m/t

ボディ/シャシー

全長:4800mm
ホイールベース:2920mm
オーバーハング(前):885mm
オーバーハング(後):995mm

全幅(ミラー含む):2180mm
全幅(両ドア開き):3730mm

全高:1460mm
全高:(トランクリッド開き):1760mm

足元長さ(前):最大1130mm
足元長さ(後):840mm
座面~天井(前):最大1045mm
座面~天井(後):930mm

積載容量:前53L・後400L

構造:スティールモノコック
車両重量:2055kg(公称値)/2116kg(実測値)
抗力係数:0.22
ホイール前・後:19インチ
タイヤ前・後:235/45 R19 99V XL
コンチネンタル・エココンタクト6Q
スペアタイヤ:なし(パンク修理剤)

変速機

形式:1速リダクションギア
ギア比
リダクション比:- 
1000rpm時車速:-
113km/h/129km/h時モーター回転数:-rpm/-rpm

電力消費率

AUTOCAR実測値:消費率
総平均:5.5km/kWh
ツーリング:-km/kWh
動力性能計測時:-km/kWh

メーカー公表値:消費率
低速(市街地):7.2km/kWh
中速(郊外):-km/kWh
高速(高速道路):-km/kWh
超高速:-km/kWh
混合:6.1km/kWh

公称航続距離:570km
テスト時航続距離:449km
CO2排出量:0g/km

サスペンション

前:ダブルウィッシュボーンコイルスプリング、スタビライザ
後:マルチリンク/コイルスプリング、スタビライザ

ステアリング

形式:電動機械式、ラック&ピニオン
ロック・トゥ・ロック:2.5回転
最小回転直径:11.4m

ブレーキ

前:-mm通気冷却式ディスク
後:-mm通気冷却式ディスク
制御装置:ABS
ハンドブレーキ電動式・センターコンソールにスイッチ配置

静粛性

アイドリング:-dBA
全開走行時(145km/h):72dBA
48km/h走行時:58dBA
80km/h走行時:65dBA
113km/h走行時:68dBA

安全装備

LKA/ISA/後方クロストラフィックアラート/死角モニタリング/センターエアバッグ
Euro N CAP:5つ星
乗員保護性能:成人89%/子供87%
交通弱者保護性能:82%
安全補助装置性能:76%

発進加速

テスト条件:湿潤・滑りやすい路面/気温3℃
0-30マイル/時(48km/h):2.6秒
0-40(64):3.5秒
0-50(80):4.5秒
0-60(97):5.8秒
0-70(113):7.3秒
0-80(129):9.1秒
0-90(145):11.2秒
0-100(161):13.7秒
0-110(177):16.8秒
0-402m発進加速:14.3秒(到達速度:164.3km/h)
0-1000m発進加速:26.0秒(到達速度:188.9km/h)

ライバルの発進加速

ライバルの発進加速
ヒョンデ・アイオニック6 RWDアルティメット(2023年)
テスト条件:湿潤路面/気温12℃
0-30マイル/時(48km/h):3.2秒
0-40(64):4.2秒
0-50(80):5.6秒
0-60(97):7.2秒
0-70(113):9.3秒
0-80(129):11.8秒
0-90(145):15.1秒
0-100(161):19.5秒
0-110(177):25.2秒
0-402m発進加速:15.8秒(到達速度:147.4km/h)
0-1000m発進加速:28.6秒(到達速度:184.3km/h)

キックダウン加速

20-40mph(32-64km/h):1.8秒

30-50(48-80):1.9秒

40-60(64-97):2.3秒

50-70(80-113):2.8秒

60-80(97-129):3.3秒

70-90(113-145):3.9秒

80-100(129-161):4.7秒

90-110(145-177):5.6秒

制動距離

テスト条件:湿潤・滑りやすい路面/気温3℃
30-0マイル/時(48km/h):9.0m
50-0マイル/時(80km/h):25.2m
70-0マイル/時(113km/h):51.4m
60-0マイル/時(97km/h)制動時間:2.73秒

ライバルの制動距離

ヒョンデ・アイオニック6 RWDアルティメット(2023年)
テスト条件:湿潤路面/気温12℃
30-0マイル/時(48km/h):12.0m
50-0マイル/時(80km/h):31.2m
70-0マイル/時(113km/h):60.1m

結論 ★★★★★★★☆☆☆

セダンフォルムで後輪駆動ベースのBYDシールが、照準に入れているのは間違いなくテスラ・モデル3だ。この競争激しいクラスにあって、特別あげつらうポイントはほぼない。実際、シールはBYDにおける、ここまででもっともすばらしい努力の結晶だと言っていいい。

低速域での不快な乗り心地を除けば、乗り心地もハンドリングも調ったものに感じられる。ほかのBYDとは異なるカタチで、英国のストリートに合っているクルマだ。非常に快適なシートと実用的なインテリアの組み合わせは、長距離クルーズに向いた素養を感じさせる。航続距離も十分で、LFPバッテリーの技術的な魅力も兼ね備える。

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結論:ハードウェアはみごと。その魅力をソフトウェアの問題が削いでいる    JACK HARRISON

それでも、運任せで計画性のないところが見えてしまうのも事実だ。ステアリングに常にある振動、ADASの貧相さ、そして最大の問題点が巨大なセンターディスプレイだ。走行中の使用において、ソフト面の出来が悪すぎる。エアコンだろうが運転支援機能だろうが、この画面から操作しようとすると、それすなわちプロブレム、となってしまうのだ。

全体的に、BYDシールは好ましいEVセダンで、不足は感じられない。しかし、ライバルの方が洗練度は高いという印象は拭えない。価格面でも、最安というわけではない。
 

担当テスターのアドバイス

イリヤ・バプラート

クルマをオフにすると、メーターにメッセージが。「注意:このクルマには充電予約機能があります。マルチメディアを介して、充電時間を設定できます」。もっとわかりやすく書いてほしい。

マット・ソーンダース

BYDのサスペンションチューンと内装デザインには、アンチ・テスラ的な感じがある。それも、いい意味で。反対に、大型ディスプレイに依存したインターフェイスはじつにテスラ的だ。しかし、わかりにくいトリックはない。使いやすいセットアップだ。

オプション追加のアドバイス

安価な1モーター仕様で、魅力は享受できる。エクセレンス仕様でもさほど高くないが、標準車でも速さは十分以上。2モーターは1モーターより効率が落ち、航続距離は短くなるはず。価格は上がるし、後輪駆動ほどのファントゥドライブはないかも。

改善してほしいポイント

ユーザーインターフェースは改良を。メニューはよりロジカルに、大きな画面の使い方はよりスマートに、ボタンはより有効な機能を割り当ててうまく使ってほしい。
・運転支援機能は、欧州の道路へもっと上手くフィットさせてほしい。
・急速充電の速度を改善し、事前コンディション調整セッティングを加えてほしい。


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BYDシール 詳細データテスト 低速の快適性は要改善 高速域の長距離移動は快適 ハンドリング良好