首都圏のJR駅に、とても令和とは思えない古い券売機が残っていると、SNSで話題になっています。路線図で目的地までの運賃を確認しながら、お金をいれてきっぷを買っていた、“あの頃”のもの。奇跡の現存なのか否か、真相をJRに聞きました。

なんでこんな古い券売機が?

「えっなんでこんな古い券売機が?って一瞬なった」
「懐かしい。お金いれてくと押せるボタンが増えてくやつ」

2024年1月現在、首都圏のとあるJRの駅に、やけに古い券売機が残っていると、SNSで話題になっています。

その駅は、さいたま市にある埼京線南与野駅。現地へ行った人に写真を見せてもらうと、きっぷ売り場に最新の券売機とともに、「1990年代のJR初期に見られたような」きっぷの券売機が並んでいます。上方の路線図で目的地までの運賃を確認しながら、お金を入れてきっぷを買うのが当たり前だった頃のもの。ICカードは全く非対応のタイプです。

SNSでも「これ今ですか?」「よく残ってたな!よく動いたな!」などと驚きの声が寄せられていますが、現地へ行った人がズバリ教えてくれました。「これ、印刷を貼っているんですよ」。

つまり、古い券売機の“イラスト”を、券売機の原寸大サイズに引き伸ばし、きっぷ売り場の空いている券売機のスぺースに貼っているのです。「横から現在の券売機と並べて見ると、写真でも違和感ありますね」ということでしたが、「養生テープのようなもので貼ってるのが、遠目に見ると逆に本物ぽく見えてて良い出来でした!」と、出来もまずまずのようです。

もうひとつヒントもあります。この“懐かしの券売機”の左上には「スーパートレインスタンプラリー」のロゴが。

これはJR東日本1月12日から3月4日まで、首都圏の駅を中心に展開している「JR東日本 スーパートレインスタンプラリー ~平成を駆け抜けたすごいヤツ~」のこと。JRが発足して間もない平成初期の特急列車などをテーマにしたスタンプラリーの連動企画にというわけです。

ただし南与野駅は、このスタンプラリーのスタンプ設置駅でも、イベントや特典の対象駅というわけでもありません。

「対象外の駅」の静かな主張?

実は、南与野駅にこうした “懐かしの券売機” が登場したのは2回目です。同駅は、2023年に開催された「JR東日本 懐かしの駅スタンプラリー」でも、やはりスタンプ設置駅でないながら、今回よりも古い1980年代頃のものを模した “懐かしの券売機” を貼っていました。

南与野駅のことについて、JR東日本 首都圏本部に聞いてみました。

「券売機のイラストは、『懐かしの駅スタンプラリー』『スーパートレインスタンプラリー』のイラストを担当している “バーニア600” 氏のもので、駅の装飾用の素材集を拡大して貼っています」

同様に、バーニア600氏の素材集で駅に様々な装飾をしているのは、スタンプ設置駅はもちろん、それ以外にも多くあるとのこと。南与野駅でも、券売機以外の素材も活用して装飾を行っています。

ただ、それを「実物大まで拡大して貼っている」のは、南与野駅以外には聞いていないということでした。

JR東日本 首都圏本部によると、スタンプを設置していないながらも、「これが話題になって、南与野駅で下車されるお客様を確認している」とのことです。

南与野駅のきっぷ売り場。矢印が話題の、やけに古い券売機(画像:JR東日本)。