ビッグモーター事件もあって素人には不安! 元中古車誌編集長が「失敗しない中古車選び」を語る

この記事をまとめると

■中古車の購入は「安物買いの銭失い」という格言を心に刻むのが吉

■信頼できる中古車販売店にアクセスするのが第一条件

■そもそも素人が中古車のコンディションを見極めるのは難しい

情報が全国規模で共有されている現代に掘り出し物は存在しない

 2023年、大手中古車販売店における不正もあって中古車ビジネス全般への信頼が失われた部分もありますが、それでも中古車への注目度やニーズは高まっています。なぜなら、ダイハツ工業が認証業務における不正によって、ほとんどの車種において出荷を停止している状態だからです。

 このところの中古車ニーズの高まりというのは、コロナ禍や半導体不足によって新車の生産が絞られたことによる納期遅延、供給不足によるところが大きいといえるものでした。ダイハツのシェアは軽自動車に限っていえば3割以上です。それだけの供給が絞られたのですから、中古車へ流れるユーザーが増えているのも当然です。

中古車販売店の屋外展示場

 というわけで、初めての愛車を中古車から選ぼうという人も多いのではないでしょうか。ここでは、かつて中古車情報誌の編集長も経験したことのある筆者が、初心者に向けた中古車選びのポイントを5つ厳選して、お伝えしたいと思います。

 5つのポイントを整理すると、次のようになります。

1)基本的に掘り出し物といえる中古車は存在しない

2)保証の充実したメーカー系の中古車販売店がおすすめ

3)走行距離は目安になるが過走行にはお買い得な個体もある

4)修復歴に含まれない修理を素人が見つけるのは難しい

5)なにはなくとも実車を見て触れて判断すべし

 ここからは、各ポイントについて深掘りしていきましょう。

 現代の中古車において、相場より大幅にお買い得な「掘り出し物」が存在していることを期待すべきではない、というのは、どういうことでしょうか。

 中古車が狭いエリアでしか流通していない昭和の時代ならまだしも、全国的に情報ネットワークが広がり、中古車は業者向けオークションで仕入れることが当たり前なのが令和の中古車事情です。かつてのように相場を知らない人が値付けをしてしまった「掘り出し物」は存在しないといえます。

中古車価格の表示板

 もちろん、人間のやることにはミスがつきものなので、値付けを間違えてしまったような掘り出し物はあるかもしれませんが、基本的に中古車の相場感というのは全国的に情報がいきわたっていると捉えるのが妥当でしょう。

 それを前提として、重要なのは中古車販売店の選び方になります。中古車販売店は、全国展開している大手のチェーンやフランチャイズ、新車販売ディーラーの系列店、一拠点もしくは数店舗だけの地域密着型販売店と3通りに大別できます。

地域密着型の中古車販売店のイメージ

 それぞれにメリット・デメリットはありますが、初心者向けのおすすめといえるのは新車販売ディーラー系列、いわゆる「認定中古車」を扱っている中古車販売店になります。メーカー基準での認定中古車には、一般的に1年程度の保証期間が付帯していますし、オプションで課金することにより保証期間を延長することもできます。

認定中古車販売店のイメージ01

 後述しますが、中古車選びで難しいのは、走行距離など数字だけではわかりづらい「傷み具合」です。そこを見誤ると想定以上の修理費やメンテナンスコストがかかることもあります。そうした点において「見る目に自信がない」という初心者にとって認定中古車という称号は、わかりやすい目安となります。

 単純に同じ年式、同程度の走行距離という中古車の価格を決める基本要素において比べると、ディーラー系列の中古車販売店で扱う認定中古車は割高に見えることもありますが、長期の保証期間というリスクヘッジに対するコストであると考えれば妥当といえます。総合的に考えると、むしろリーズナブルと捉えるべきかもしれません。

認定中古車販売店のイメージ02

 それはさておき、中古車の相場というのは、車種(年式・グレード・駆動方式など)ごとに基準となる価格のことを指します。その相場に対して、走行距離の多少やボディカラーの人気度によって、価格が変動するというのが基本的な価格の決定フローとなります。

走行距離よりも見るべきは……

 一般論としては走行距離が多いと価格は下がります。なぜなら、クルマに使われるパーツの多くは距離と時間で傷んでくるからです。ただし、必ずしも走行距離が伸びている「過走行」と呼ばれる個体の多くにおいて、コンディションが悪いとは言い切れません。

過走行のオドメーター

 たとえば、タイヤを8万kmで交換して、そこから10万kmまで距離を伸ばした個体と、新車時から無交換のまま7万kmまで走った個体があったとしたら、少なくともタイヤについては前者のほうがコンディションがよいであろうといえます。

自動車のタイヤ

 同様に、しっかりメンテナンスされてきた個体と、乗りっぱなしに近い状態で使われてきた個体では、やはり前者のコンディションが良いといえます。単純に走行距離だけでは判断できない部分もあるのです。

 相場情報が全国にいきわたっている現代では、いわゆる「お買い得な中古車」は存在しない、と記しましたが、「走行距離から想定するよりも、コンディションがよい個体」が走行距離に応じた販売価格となっているのであれば「お買い得」といえるかもしれません。

中古車販売店のイメージ01

 走行距離が長いというだけで購入候補から外してしまうのではなく、「コンディション次第では買ってもいいかも」という気持ちは持っておくといいでしょう。

 とはいえ、初心者が、一台一台で異なるコンディションを判断するというのはかなり難しいミッションといえます。

 現在の中古車販売において修復歴の有無については表示しなければいけないルールとなっていますが、修復歴がないからといって、なにも修理していないという意味ではありません。修復歴というのは、ボディフロアやフレーム、クロスメンバーなど走りに関わる重要な車体に対して交換や修理をした履歴があるかどうかを示すものです。

 つまり、バンパーやフロントフェンダーをぶつけて変形したので交換した、という程度では修復歴として明示する修理とならないのです(ぶつけたときに内側のフレームまで影響していうようなら修復歴に含まれます)。さらにいえば、エンジンを交換していても修復歴とはなりません。修復歴だけで、それまでの使われ方を想像するのも難しいといえます。

エンジン交換の様子

 中古車をネット検索で探すケースが大半だと思いますが、文字情報とサムネイル画像だけでコンディションは判断できないということは肝に銘じておきたいところです。

 結局は、実車をじっくりと観察して、お金を払うだけの価値があるかを判断することが重要でしょう。細かな修理歴や部品交換について判断するには多くの経験や知識が必要となりますが、初心者でも違和感を覚えるような中古車というのは、いくらお買い得に思えても避けておくのが吉といえます。

中古車販売店のイメージ02

 逆に、走行距離からは避けておくべきと思った個体であっても、実際に見に行ったら思いのほか程度がよさそうだった、というケースもあるでしょう。いずれにしても、最終的な判断においては実車に見て触れて判断するのが絶対条件といえます。

中古車販売店のイメージ03

 むしろ、積極的にさまざまな個体に触れてまわることで、中古車を見る目が養われます。ネット検索で決め打ちして購入候補を決めるのではなく、できるだけ多くの個体に触れていって、最初の愛車を選んでほしいと思います。

ビッグモーター事件もあって素人には不安! 元中古車誌編集長が「失敗しない中古車選び」を語る