昨年末から『週刊文春』で報じられているダウンタウン・松本人志の性加害問題。2月1日発売の最新号では2014年に東京・渋谷のマッサージ店で性的行為を強要された元店員の女性が、1月13日、警察に被害を相談したことを報じています。




一方、松本人志は『週刊文春』を発行する文藝春秋などに対して、名誉毀損による損害賠償請求と訂正記事の掲載を求めて提訴したことを、1月22日吉本興業のサイトで発表しました。請求額は5億5000万円になります。


この注目の問題について、2万件を超える裁判を傍聴し、裁判ウォッチャーとして知られるお笑い芸人・阿曽山大噴火さんに聞いてみました。


◆弁護士の得意ジャンルって?



(画像:吉本興業株式会社サイトより)



――松本人志の代理人を務める田代政弘弁護士は、とくに芸能関係が得意といったことではないようですが、そもそも弁護士の得意ジャンルとは…?


<公判数が日本で一番多い東京地裁では民事裁判が約500件、刑事裁判が約70件が日々行われています。東京地裁に毎日通っていても全ての裁判の傍聴は無理なこともあって、私は田代政弘さんが担当した裁判を傍聴したことはありません。田代弁護士が所属している八重洲総合法律事務所のサイトを見ると、今回の訴訟のような名誉毀損や損害賠償が担当分野の弁護士ではないようです。


裁判を傍聴していると「この弁護人、また似たような事件を担当しているなぁ」「芸能関係の法廷でよく見るなぁ」などと思うことがあります。知り合いの弁護士さんに聞いたことあるのが「それはボクより、他に専門でやってる弁護士先生がいますよ」と、そのジャンルを得意としている弁護士を依頼人に紹介することがままあるそうです>(阿曽山大噴火さん、以下山カッコ内同じ)


◆弁護士を選んだワケを推測すると浮かぶ3つの背景



週刊文春 2024年1月4日・11日合併号』



――なるほど、たしかに文春の顧問弁護士、喜田村洋一氏は、1999年ジャニー喜多川氏の性加害報道でジャニーズ事務所(当時)が文春を提訴した際には、高裁で性加害を認める判決に至ったなど、名誉毀損裁判にも強そうです。


<ここからは推測ですが、松本さんが弁護士の得意不得意を気にしていないのか、その手の事件を得意としてる弁護士さんに依頼したけど断られたか。


もしくは八重洲総合法律事務所のサイトに書いてないだけで、田代弁護士が名誉毀損や損害賠償に慣れている弁護士なのかも知れません。


いずれにせよ、世間の注目度が高いので相当なプレッシャーだろうなと思います>


◆著名人の裁判はヤメ検が多い?!



写真はイメージです(以下同じ)



――「ホリエモン」こと堀江貴文氏が自身のYouTubeで「もっと敏腕の弁護士を紹介しますんで。松本さん、もし見てたら言ってください」と発言していましたし、東京地裁で敗訴したら高裁から別の弁護士に取り替えられそうで、非常なプレッシャーでしょうね。


<因(ちな)みに、田代政弘弁護士は、以前検察官だった人物でいわゆるヤメ検と呼ばれる弁護士です。


刑事民事関係なく、著名人の裁判は何故かヤメ検が弁護人や代理人に選ばれている印象が強いですね。何か理由があるのでしょうか。


実際に有名人の裁判を担当したヤメ検を数えて検証して欲しいものです>


――田代弁護士は、東京地検特捜部だった際、小沢一郎議員が強制起訴された「陸山会事件」で、元秘書の取り調べを担当したものの、捜査報告書に聴取内容の捏造(ねつぞう)が発覚し、不起訴にはなりましたが、懲戒処分を受けて辞職した過去を持っています。


その際に、小沢議員の代理人をつとめ、法廷で田代氏の捜査報告書のウソを暴いたのが、文春サイドの弁護士である喜田村洋一氏でした。因縁の対決になりそうですね。


◆松本サイドのコメント「『や』の位置が日本語として紛らわしい」



――松本人志の代理人として田代弁護士が出したコメント【記載されているような性的行為やそれらを強要した事実はなく】の「や」が紛らわしいと、阿曽山さんはX(旧Twitter)で指摘していましたがどういうことでしょうか?。


<紛(まぎ)らわしく誤解を招く文章だなぁという印象です。


まず、一文が長い。【今後、裁判において、記事に記載されているような性的行為やそれらを強要した事実はなく、およそ「性加害」に該当するような事実はないということを明確に主張し立証してまいりたいと考えております。】ですから。


もうちょっと短い文章に分けてくれれば読みやすく伝わりやすいのに、使う句点の数が限られているのかと言いたくなる一文です。


特に【記事に記載されているような性的行為やそれらを強要した事実はなく】の部分は、どちらの意図で書いたのかなと。


「記載されているような性的行為」と「それら」の強要は無かったと言いたいのか、「記載されているような性的行為」は無かったし「それらを強要」も無かったと言いたいのか。「それらを強要した」ことを否定してるのは間違いないのですが、ちょっと紛らわしい>


――主張として、“性的行為自体がなかった”とも、“性的行為はあったが強要の事実がなかった”とも読めてしまいますね。


<そもそも「それら」が具体的に何を指しているのかよく分からないのも紛らわしさに拍車を掛けている気がします。このコメントが公表された時も、SNSではこの文章の理解が分かれていたので日本語として紛らわしい一文なんだと思います。


原稿やメールを書く時も、誤解を招かないように文章は長くせず、具体的に書くよう心掛けたいです>


◆「裁判を待ってから語る」流れのきっかけの一件に
――多くのメディアと著名人との裁判傍聴の経験から、今回の裁判の行方はいかがでしょうか?


<その日に行われる裁判の一覧表である公判開廷予定表を見ると、出版社などのメディアが被告の名誉毀損の民事裁判は珍しくありません。


提訴された時には話題でも、和解や判決の時には報道もされずに傍聴席も空席だらけという事もよくあります。でもこの件はずっと注目されそうですよね>



――この裁判の社会へのインパクトは大きいものだと予想されます。


<去年の年末に発売された『週刊文春』には、告発した女性の証言がこと細かに掲載されています。しかし記事に対して松本さんがXで「事実無根」とポストして、所属事務所の吉本興業が「当該事実は一切なく」とコメントを発表しています。


会見などが開かれていないので「当該事実は一切なく」「事実無根」が、会ったこともない女性という意味なのか、新幹線週刊文春の直撃取材すら受けていないという意味なのか現時点ではハッキリしませんが、意見が対立しています。故に「裁判で白黒つくまでは…」というのが、メディアでよく見聞きするというコメントです。


本件に関わらず誰かが逮捕されたけど本人は否認しているという場合、何かが報じられたけど本人が肯定も否定もしてない状態でも、我々は裁判で白黒つく前に確定的に語ってきていたと思います。


全てが裁判になるわけじゃないですが、きっかけの一件になったらいいなと思います。今まで好き勝手に語っていた(ように見える)テレビが「裁判でハッキリしてないので…」とみんなが口を揃えて言ってるのを見ると、良い流れかなと。事件報道とかは裁判を待ってから語ってほしいよなぁと裁判を傍聴してる人間として感じていたので。


ただし、それによって性加害という話題や問題が触れにくい世の中にはならないといいなぁと思います>


<文/女子SPA!編集部>


【女子SPA!編集部】大人女性のホンネに向き合う!をモットーに日々奮闘しています。メンバーはコチラ。twitter:@joshispa、Instagram:@joshispa



(画像:松本人志 Xより)