痴漢に間違われたら、どうすればよいのでしょうか。元刑事・森透匡氏の著書『元刑事が教える 相手のウソの見抜き方』(三笠書房)より一部を抜粋し、見ていきましょう。

「痴漢に間違えられたらどうするか?」

私の講演でよく質問されるのが、このテーマです。

日頃、通勤で電車を利用する男性陣にとってはもっとも知りたいことなのでしょう。

極論から言うと「電車に乗らないこと」が一番の解決策ではあります。

しかし、それでは答えになりませんよね。これはあくまで「やっていない」というのが前提での話ですが、「足に自信があるのなら逃げきれ」というのが答えの一つかもしれません。

ただ、逃げようとしたら、まず捕まるでしょう。周囲に男性客も多いでしょうし、シャツやズボンを掴まれたら逃走はまず不可能です。

その上、逃げたら途中で捕まったときに言い訳もできません。「やっていないのになぜ逃げた?」と言われるのが落ちですし、心証も悪い。

さらに、逃げるために誰かに暴行を加えたりしたら、暴行や傷害で別件逮捕される可能性もあります。このように逃げるというのは、かなりのリスクになります。

ですから、私の個人的な意見を言うと、逃げるのではなく「身分を明らかにして徹底的に否認し、その場から立ち去る」のがベストだと思います。

身分を明らかにして徹底的に否認し、その場から立ち去る

まず名刺や免許証を出して、逃げる意思がないことを明らかにします。そしてやっていないのが事実なら、徹底的に否認します。

そして「いつでも要請があれば警察に出頭します」と申し出て、その場を立ち去るのがいいのです。これはその場を離れてしまえば、現行犯逮捕から逃れることができるからです。

あとは逮捕状を取得して通常逮捕するしか方法がありません。多少ハードルが高くなりますので、そのあとの取調べを受けても逮捕されずに、任意で書類送検される可能性も出てくるわけです。

「駅長室に行くと警察官が来て逮捕される」は“ありえる”

「駅長室に行くと警察官が来て逮捕される」という都市伝説がありますが、それはまんざらウソではありません。

警察官は、混雑するホームで事情聴取するのを避けるために、駅長室に同行を求めます。そして被害女性に確認の上、現行犯逮捕することになるのです。

警察としては、被害者の被害申告がすべてです。

被害女性が「この人です」と証言している以上、「やっていない」と申し出ても、被害者の意見を無視するわけにはいきません。ですから、逮捕するしか方法はないだろうというわけです。

ただ、現場の微妙な判断は、現場の警察官がします。女性の供述が曖昧だったりすると逮捕されない可能性もあるので、ケースバイケースと言えるでしょう。

森 透匡(もり ゆきまさ)

一般社団法人日本刑事技術協会 代表理事

国税庁税務大学校、財務省税関研修所 研修講師

経営者の「人の悩み」解決コンサルタント

警察の元警部。詐欺、横領、贈収賄事件等を扱う知能・経済犯担当の刑事を約20年経験。東日本大震災を契機に独立し、刑事が職務上体得したスキル、知識を用いてビジネスの発展と社会生活の向上に寄与することを目的とし、一般社団法人日本刑事技術協会を設立。現在は代表理事として「ウソや人間心理の見抜き方」を主なテーマに大手企業、経営者団体など毎年全国180ヵ所以上で講演・企業研修を行う。マッチングアプリ大手運営会社の詐欺防止に関わる有識者会議委員、『高齢者を身近な危険から守る本』(池田書店)の監修など、幅広く活動している。

TBS「ビビット」、日本テレビ「月曜から夜ふかし」、読売新聞日経新聞などメディアへの出演、掲載も多数。著書に『元知能犯担当刑事が教える ウソや隠し事を暴く全技術』(日本実業出版社)、『刑事(デカ)メンタル』(ダイヤモンド社)など。

(※写真はイメージです/PIXTA)