2024年1月8日より放送中のTVアニメ『姫様“拷問”の時間です』。集英社少年ジャンプ+」にて連載中の同名漫画をアニメ化した本作は、魔王軍によって囚われの身となった姫への、身悶えるような“拷問”を描いた話題作だ。

【画像】【写真特集】“食”にまつわる、見覚えのあるボーズをとるお二人、ほかインタビューフォト(全13枚)

ほわほわの焼きたてトースト!
湯気がたちのぼる深夜のラーメン!
愛くるしい動物たちと遊ぶ時間!

果たして、姫はこれらの拷問に打ち勝つことができるのか……。

そんな世界一やさしい“拷問”ファンタジーアニメで、魔王軍から容赦のない拷問を受け続ける「姫」を演じる白石晴香さんと、姫とともに監禁された意思を持つ聖剣「エクス」を演じる小林親弘さんにインタビュー。本作の魅力や演じ方についてはもちろん、拷問として美味しい食べ物がたくさん出てくる本作にちなんだ、大好きな食べ物トークも必見だ。

取材・文:千葉研一/写真:編集部(インタビューは12月上旬頃に実施しています)

タイトル詐欺ではなく、ちゃんと“拷問”を受けて苦しむ作品

――タイトルから察するに“姫が拷問を受ける”内容のようですが、公式サイトでは皆さん「ハートフル」とコメントしています。どのような作品なのか教えてください。

白石:日常の中にある、誘惑されるような出来事、場所、人、動物……さまざまなものに心を動かされながら笑っていたら、あっという間に時間が過ぎてしまうような作品です。見たあとは「あ〜、笑ってスッキリした!」という気持ちになれると思います。

「そうそう、こういう食べ方美味しいよね」とか「こんな状況になったら屈せざるを得ないよね」
の連続で。原作ファンの皆さんも、アニメから観ていただく皆さんもきっと同じ気持ちになると思いますので、私もたくさん誘惑されて、拷問されて、一緒に屈しまくりたいなと思います。

小林:エクスとしては、屈さないで欲しいです(笑)。

白石:でも、屈することによって、こんなに人生って豊かになるんだ! と思わせてくれるんですよ!日常の些細なことでも、幸せってこんなに感じられると姫が体現していますから。

――なんだか奥深いですね。人生の教訓になる作品だったとは!

小林:原作の先生は本当によく人を見ていらっしゃるんですよ。トーストにバターを塗るだけで美味いとか、カレーはこう食べた方が美味いとか、犬のお腹を撫でると気持ちいいとか……そういう日常に隠れている小さな喜びを見つけるのが、ものすごく上手いなと思って。「あ〜、自分にもあったなぁ」と追体験できますので、仕事で疲れて帰ってきてこの作品を見たら楽になることもあると思います。そんな癒しと面白さと小さな喜びを再発見できる、素敵な作品ですね。

小林:詐欺じゃないですよ。見たらわかります。

――姫は“拷問”を受けるんですよね?

白石::受け続けています。苦しんでいるんです。
小林:それは間違いないです。
白石:めちゃめちゃハートフルですけどね(笑)。

――そんなハートフルで癒しもある拷問作品ですが、役が決まった時はいかがでしたか?

白石:すごく嬉しくて、オーディションの合格を聞いて泣いちゃいまました。マネージャーさんからお話しがあってて、「ううぅぅぅ!(嗚咽)」って(笑)。

小林:そんなに!?

白石:元々読んでいた作品でもありますし、作品のテイストもすごく好きで、こういう役柄をやってみたいと思っていたんです。好きな気持ちと姫にご縁があった嬉しさから、急に溢れ出てしまって……。

――ちなみに、お話しを聞いた時に?

白石:エレベーターホールでした(笑)。
小林:人がいっぱいいそう(笑)。

白石:幸い、誰もいなかったです(笑)。収録のスケジュールやエクスが小林さんであることもそのときに聞いて現実味が出たというか、じわじわと実感が湧いて涙を抑えられるようになりました。

ほかのキャストさんについても聞いたのですが、静さん(トーチャー役の伊藤 静さん)とはオーディションで掛け合いをしていたんです。そのままのペアで決まったことも嬉しくて、頑張ろうという気持ちになりましたね。

小林:僕は、オーディションでは違うお姫様との掛け合いだったので、晴香ちゃんが受けていることも全然知らなかったんです。晴香ちゃんだと知って嬉しかったですね。

――小林さんがエクス役に決まった連絡を受けたのは、どういったシチュエーションでしたか?

小林:もちろん、エレベーターホールで号泣(笑)。
白石:使い回さないでください!(笑)

小林:でも、オーディションを受ける前に原作を全部読んで、すっごくやりたいと思っていたから、路上でガッツポーズしたかもしれないです。あ、ひょっとしたら涙が出たかも……。

白石:だから、付け加えないでください!!(笑)

小林:エクスは剣だからどういう役者さんでも合うだろうし、まさか自分がやらせてもらえるとは思っていなかったので、本当に嬉しかったですね。それに、相棒が晴香ちゃんだったので、これは安心だなと思って。現場に行くのがすごく楽になりました。

白石:こちらこそです。

共演経験のある2人がお互いを見て感じたことは?

――おふたりは以前もほかの作品でご一緒していますし、お互いを長年見てきたからこそ感じることもあると思います。小林さんから見た白石さんの成長はいかがですか?

小林:23歳だと思っていたら、来年には29歳になるらしいんですよ。ほんとに立派になって……あの頃、まだ乳母車を押していた僕としては、こんなに大きくなるなんて思わなかった(笑)。

白石:え? 物理的な大きさですか?(笑)

小林:(笑)。真面目なことを言えば、演技はもともと素敵だったのが、今回はより素敵にのびのびとやられていて。僕はそれにのっかるだけでした。上から目線になっちゃいますいけど、このまま成長してくれたらいいなと思っています。今後がますます楽しみですね。

――逆に白石さんは、小林さんから学んだことも多いのでは。

白石:それはもう、出会った当初からアフレコのたびに勉強させていただいています。長く共演させていただいている作品はシリアスな場面も多く、心の通わせ方がまた違っていたのですが、今作でさらに新たな面を見ることができてすごく嬉しいですし、たくさん学ばせていただいています。

お芝居以外のことでいうと、最初に共演させていただいてすぐの頃ですかね。「晴香ちゃんはしっかりしているね」と言ってくださって。当時の私は22歳とか23歳だったかと思うのですが、一緒にステージに立たせていただいたとき、小林さんの回答がいつも「右に同じです」で(笑)。

小林:そうそう。「もうほとんど(晴香ちゃんが)言ってくれたので、僕が言うことはないです」って(笑)。

白石:ずっとそうだったんですけど、今回それがなくなっているのが成長ですかね!……というのは冗談ですが(笑)そんなこともあったなって思います。

小林:ありがとう。僕の乳母車を押してくれて。本当にお世話になりました(笑)。最初は緊張で震えていたもんね。

白石:私たち、冗談を挟む余裕もなかったですよね。

小林:なかったなかった。こんな(冗談を言う)人間じゃなかったんですよ、昔は。

――話を聞いていても本当にいいコンビだなと思います。その2人が今回演じられたキャラクターについて教えてください。

白石::姫は王国の第三騎士団の騎士団長で、かなりの腕利き、騎士としては本当に強い人です。軍を率いるリーダーシップもあり、聖剣エクスを持つのに相応しい人間のはずなんですけど……囚われの身になり拷問を受け、幼少期に執事のジモチから少しずつ教えられてしまった庶民的な部分が開放されていきます。

「(庶民的なお菓子である)ゴリラマーチの味」とか「その1個1個に描かれた顔の表情を見て楽しむ」とか、そういった日常のワクワクを知っている子なんです。それが拷問で一層揺さぶられて、屈せられてしまいます。騎士団長の姿と、庶民的な部分の両面が彼女の魅力であり、見ていてとても可愛らしいですね。すごく素直で、自分の気持ちに真っ直ぐ従ってしまった結果、ダバダバとよだれを垂らしたり、気づいたら屈していたりするんですよ。

小林:我慢が難しい、真っ直ぐな子だよね。

白石:真っ直ぐなのは、騎士としても本来の姿としても共通するかなと思います。

――では、エクスはどんなキャラクターでしょうか?

小林:お付きの聖剣であり、従者であり、ツッコミであり、という感じですね(笑)。
白石:常識枠です。

小林:回を重ねるごとに世界の常識がズレていく作品でもあるので、エクスの視点とともに「あれ? これ拷問だっけ?」「拷問ってなんだろう?」と考えちゃうと思います。あまりにも魔王軍の人たちがみんな優しくて、拷問だと忘れそうになりますから、世界観を忘れないためにもエクスは大事なキャラクターですね。視聴者目線というか。

姫も美味しいものがあったら食べるという、別の意味で視聴者目線ですけどね(笑)。欲望と戒め、心の中の天使と悪魔みたいな感じで。

白石:確かに、天使と悪魔だ。みんな絶対どっちも持っているはずですから。
小林:2人合わせて1人の人間であると。たぶん原作の300話あたりで合体する回があると思います(笑)。

よだれを垂らす姫の演技も、エクスのツッコミもバリエーション豊富

――姫やエクスをどのように演じたのでしょうか? 今回は2人一緒にいますので、お互いの演技の印象も合わせてお聞かせください。

白石:姫は第1話から「騎士モード」「屈しモード」「騎士モードにはさまるモノローグでの本音」といった感じに、表情がコロコロコロコロ変わっていきます。私の心もジェットコースターのようになりますし、口を追いつかせるのも大変で、最初はついていくのに必死でした。でも、それも姫の魅力であり、ちゃんと表現できてこそ楽しんでもらえると思ったので、表情に合ったテンション感や温度差は大きく表現できるように意識しました。

王女や騎士としての表情から、次のカットでは急によだれを垂らすシーンになることも多く、収録を途中で止めず瞬時に切り替えるのはかなり大変でしたけど頑張りました。ぜひ見て欲しいです。

――役者経験がないのでわからないのですが、よだれを垂らす演技は難しいですか?

白石:難しいです。ジャバジャバな水分多めのセリフにするか、それとも口が開いてしまった状態で喋るのかなど、その時々のラフ画に合わせて演じました。各話でよだれを垂らす場面があってもそれぞれで違うよだれの垂らし方をしていると思います。

小林:ふと横を見ると(よだれを垂らす演技のために)すごい顔をしているので、これは人に見せられないなと思いながら、僕は楽しんで見ていました(笑)。

――役得ですね。

小林:役得……なんですかね?(笑)

白石:いや〜、(すごい顔をして)申し訳ないです(苦笑)。あと、かなり叫びました。

小林:毎話、なにかしら叫んでいたよね。

白石:音響監督さん(明田川 仁さん)もブースにいる役者に聞こえるスピーカーから、音割れするぐらい「こんな感じでやって!!」と、そのセリフを本気で言ってくださって。これまでもたくさんお世話になっている方ですけど、このようなディレクションは初めてでした。

それを受けて、「このテンションですね!!」と回を追うごとに私も“叫び力”があがっていたった気がします。ここは叫べるぞ! 挑戦してみよう! といった気持ちも高まりましたね。

小林:叫ぶことだけでなく、屈さない方へのエネルギーも使って欲しいんだけど……(笑)。

白石:(笑)。「屈さないぞ!」という気持ちはありつつも、「前回はこうしたから、今回はそれを超えられるように」とか「このシーンなら、こういう叫びかな」とか、どんどんやりたいことが増えていって。いろいろな挑戦をさせていただけて楽しかったです。

――エクスの演技に関してはいかがですか?

小林:エクスは表情がないから、どうやって突っ込むか最初すごく悩みました。原作を読んだ印象だと、温度のない感じで突っ込んでも成立するし、激しく突っ込んでもいいと思ったんですね。ただ、淡々と行き過ぎると30分アニメではちょっとエネルギー不足になりそうだったので、エネルギーのあるツッコミを選びました。結果的にはそれが上手くいった気がします。

――ディレクションはなにかあったのでしょうか?

小林:特にディレクションはなかったです。やってみて、これはツッコミではないな、と思ったことはありましたが。エクスはツッコミ以外に“振り”も担当していますからね。... 全文はこちらよりご覧いただけます

〈白石晴香×小林親弘〉互いの演技と魅力、今年注目の“拷問”まで語り尽くす!アニメ『姫様“拷問”の時間です』インタビュー