光る君へ』(C)NHK(以下、同じ)



権力争いの一方で、恋心の動きも巧みに魅せてくれている大河ドラマ「光る君へ」。


すれ違いを繰り返すまひろと道長だが、まだ互いのことを何もしらない今の関係が一番平和と言えるのかもしれない。


そんな2人の関係に嵐が訪れる前夜とも言える第4回を振り返る。


◆思わず突っ込みたくなるタイミングの良さ



散楽で直秀(毎熊克哉)をきっかけに道長(柄本佑)と再会したまひろ吉高由里子)。


ようやく、自分は藤原為時(岸谷五朗)の娘だと打ち明ける。道長も自身の正体について話をしようとするが、そこに藤原宣孝佐々木蔵之介)が通りかかるとは、「いま!いいところだったのに!!」と突っ込みたくなった筆者。しかも結局、言えずじまい。このすれ違いが、もどかしいが嫌いじゃない。


◆ひょっとして宣孝が一番のいい男
ところで、宣孝といえば第1回から登場している人物だが、要所要所でなんとも心憎い。


まひろの帰りが遅くなったことが咎められれば「引き止めたのは儂じゃ」と陽気に言い、その後には「あの男(道長)には近づくな」と渋く警告。


が、まひろの相談にも気軽に乗る。まひろも心を許しているのか、間者になれと為時に言われたことも話をする。


「間者になることを断ったのじゃな」「いえ」「えっ」というやりとりが2人の関係性を伝えてくれている気がして、筆者はとても好きだった。



父には腹が立つが倫子(黒木華)には興味がある。そんな自分がよく分からないと言うまひろに「人だから」と微笑む。そして、悩むことがあれば自分に吐き出せばいい、と。


なんというか、緩急のある人だ。顔をしかめ、笑い、諭し、まひろにどうあるべきかの道を示す。辛ければ助けの手を差し伸べる。ものすごくかっこいい人物だ、宣孝。


◆娘の想いを踏みにじる父の“悪行”
さて、宣孝がまひろの行動をやんわりと注意をするのにも理由がある。



円融天皇(坂東巳之助)の譲位、師貞親王(本郷奏多)が次の天皇に即位する日が決まった。これにより師貞親王の漢文の指南役を長年務めていた為時も官職を得ることができるのだ。迷惑をかけるわけにはいかない。


さらに、この譲位と即位によって、詮子(吉田羊)の子・懐仁親王が東宮になることも決定。藤原兼家もご満悦で、息子たちと宴を催す。


◆数分の間の感情の変化から目が離せない



一方、詮子は内裏を訪れていた。退位した円融天皇に挨拶をするためだ。詮子にとって、円融天皇は愛する人。難しいとはわかっていても、また仲睦まじく過ごせる日を夢見ていたに違いない。


しかし、円融天皇の言葉は辛らつなものだった。「毒を盛ったのはお前と兼家か」と問い詰める。「生涯許さない、二度と顔を見せるな」とも。さらに、檜扇を投げつける。檜扇が詮子の顔をかすめ、傷がつく。もちろん、円融天皇は謝りなどしない。


「人のごとく血なぞ流すでない! 鬼めが」愛する人に距離をおかれただけではなく、疎まれ、しまいには鬼とののしられる。こんなにも悲しいことがあるだろうか。期待、悲しみと絶望、怒り――。数分の間に表情に込められた感情の変化が凄まじい。


詮子は、そのまま兼家と三兄弟が宴をしている席に乗り込むが、怒りを爆発させたとて、何かが変わるわけではない。三兄弟も味方はしてくれない。何とも不憫な……詮子のおかげで地位を確固たるものにしたくせに、と思わずにはいられない。


長男・道隆(井浦新)も父を責めるわけでもなく、これからも支えることを誓うのみ。偉くなるのがそんなに良いことなのかと思うが……。


◆見習いたい、倫子のコミュニケーション能力



「身分はとかく難しいもの」と宣孝にぼやいていたまひろ。貴族と民があり、貴族の中にも格がある。その身分があるからこそ、諍いも争いも起こらずに済む、と宣孝は説く。それがなくなれば万民は競い合い、世は乱れる。なるほど、そういう考え方もあるのか……となんともいい難い気分に。


「身分など……」というまひろの思いは倫子らとの女子会でもこぼれてしまう。「竹取物語」でどうしてかぐや姫が五人の公達に無理難題を突き付けたのか、という問いに、「やんごとない人々への怒りや蔑みがあったのではないかと思います」「身分の高い低いなどなにほどのこと、というかぐや姫の考えは颯爽としている」と答えるまひろ


「いやいやいや、ここには身分が高い姫しかおらんのだが?」と思いながらも、画面越しでも場の空気がピシッと凍ったのが伝わってきた。


すると「自分の父が左大臣で身分が高いことを忘れていないか」と言って場の緊張感を高める倫子。それからほかの戯言だからそんなふうに黙らないでくださいと微笑む。ここでようやくまひろはまずいことを言ったと気がつく。


倫子は空気を読むことにも長けていて、助け船を出すのもうまい。コミュニケーション強者だな、というのが分かる。


しかし、本当は何を考えているのかが分からない。腹の底が見えないというか。


「五節の舞」に出るように言われたときに、女好きの花山天皇の見初められたくないからときっぱりと嫌だと言い、その役目をまひろに頼むのも強い。


まひろはまひろで頼まれたら喜んで引き受けてしまうし……。倫子に興味があると言っていたけれど、きっと倫子と友人になりたいという思いもあるのだろうな、と感じてかわいくて、切ない。


◆ついに「見つけた」



そして、その「五節の舞」で決定的な瞬間が訪れる。


ここにはもちろん、藤原家の三兄弟も出席していた。道長の姿を見つけ、どうしてここにいるのか混乱する。さらにその隣には、母の仇である道兼(玉置玲央)の姿が。


そんな混乱の中でも踊り切れることに感嘆してしまうが、舞のあとにまひろは共に踊った姫たちからついに真実を知ることになる。自分が三郎と呼んでいた人物は右大臣家の三男で、道兼はその兄なのだと。


その場で気を失うまひろ


あまりの衝撃に心が耐えきれなかったのかもしれない。


ついに真実を見つけた。


しかし、その真実はまひろを苦しめることになる……。


<文/ふくだりょうこ>


【ふくだりょうこ】大阪府出身。大学卒業後、ゲームシナリオの執筆を中心にフリーのライターとして活動。たれ耳のうさぎと暮らしている。好きなものはお酒と読書とライブ