ドジャース移籍で、その一挙手一投足に熱視線が注がれている大谷。彼に求められる成績を考える。(C)Getty Images

 1月14日MLB公式サイトがアメリカのブックメーカー『BetMGM』による今季のMVPオッズを紹介した。

 それによると、今オフにドジャースへ移籍した大谷翔平は+900。+525ロナルド・アクーニャ(ブレーブス)、+600のムーキー・ベッツドジャース)に次いで3番目であった。2度目の満票MVPを受賞した昨年の活躍からすると低く思えるが、今季は右肘側副靭帯損傷のリハビリによる影響もあってマウンドに立たず、打撃に専念する。この事実を考えると、意外に高いともとれる。

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 過去のMVP受賞者で、最もDHとしての出場率が高かったのは、1979年のドン・ベイラー。同年36本塁打リーグトップの139打点でエンゼルスを初の地区優勝に導いた大砲は、外野手として97試合に出場。DHでも65試合で起用され、その出場率は40%だった。

 95年に打率.356首位打者113打点もリーグ4位だったエドガー・マルティネスMVP投票で3位。「史上最強のDH」として名を馳せたデビッド・オルティスも、54本塁打、137打点の打撃二冠王に輝いた2006年で投票3位。4位以内には4度入ったが、一度も受賞できなかった。フルタイムのDHだと、そのくらいMVPになるのは難しいのだ。

 理由は明確。打撃専門となるDHは守備に就かないため、守備面での貢献度がゼロだからである。近年のメジャーMVP投票で重要視されるようになっている指標「WAR」の計算式でも、DHは一律にマイナス評価を下される。守備に就く野手よりもはるかに良い成績を残さない限り、同等の価値を認められないのだ。

 例えば、昨年の大谷はOPS1.066だったが、打者としてのWAR(※米データサイト『Fan Graphs』版)は6.6。これだけでもリーグ1位ではあったが、OPS.826だったマーカス・セミエン(レンジャーズ)のWARは6.3で、0.3ポイントしか差はなかった。

 僅差となったのは、セミエンの守備力自体も高かったからである。大谷に投手としての貢献ポイントがなければ、プレーオフに進んだレンジャーズの主力である彼がMVPに選ばれていてもおかしくなかった。

昨季成績ではMVPの最終選考にも残れない

昨季にナ・リーグMVPとなったアクーニャ。走攻守で優れた成績を残した彼を抜くのは至難の業とも言える。(C)Getty Images

 今季は投手としての出場なく、さらにDH専任起用となる以上、大谷はそれこそ三冠王になるくらいの圧倒的な打撃成績を残さない限り、MVP受賞は難しい。しかも、ナ・リーグにはライバルとなる強打者たちがひしめいている。

 前述のオッズで1位となったアクーニャは、昨年にメジャー史上初となる「40本塁打・70盗塁(41本、73盗塁)」を達成し、打率も.337で2位となり、大谷と同じく満票でMVPに輝いた。投票で次点だったベッツ(打率.307、39本、107打点)もWARはアクーニャと同ポイントの8.3だった。

 3位はドジャースフレディ・フリーマン(.331、29本、102打点)で、54本塁打139打点で二冠王であったマット・オルソンブレーブス)ですら、MVP投票は4位止まりだったほどの激戦模様である。なお、4人の並びはWARの数値そのままの順位であり、大谷は打撃成績のみであれば5番手となる。全員が今季も同程度の成績であれば、MVPの最終候補にすら残れない。

 ただし、昨年の大谷は脇腹を痛めたため、9月4日以降は欠場し、年間の出場試合数は135試合だった。故障がなければ、多少休養を挟みながらでも150試合前後は出ると思われる。本塁打をその試合数に換算すると49本になり、WARも7.7まで上がる。ただ、それでもアクーニャ、ベッツ、フリーマンの3人の数値には及ばない。

 では、大谷が今年もMVPになるにはどのくらいの成績が必要だろうか。三冠王は打率面で厳しそうだが、ナ・リーグでは22年間出ていない60本塁打の大台に届けば、相当大きなインパクトを与えられる。

 もしくは、これまで例のない50本塁打&25盗塁はどうか。昨年も44本、20盗塁だったので、こちらは現実味がありそうだ。それに加えてOPSも1位になれば、DHであっても受賞の可能性は出てくるのではないか。

 リーグをまたいでの2年連続MVPは過去に誰もやってのけておらず、ハードルは非常に高い。けれども大谷ならば、軽々と超えてしまいそうな気もする。

[文/出野哲也]

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