2023年、日本のYouTubeにおいて、芸人枠で第一位! そしてその総再生回数は30億を超えた『ビックスモールン』の3人。今回は、そのYouTube開設等をご一緒させていただいた筆者が、バズらせる秘密、気になる収益などを深掘りしてきました。

◆「独立する怖さと夢がそこにはあった」

——ゴンちゃんと初めてお会いしたのって、2019年くらいだよね、確か。

ゴンちゃん:そうですね、コロナの前で、まだ事務所にいてやめる間際でしたね。

——僕とゴンちゃん、一緒にご飯食べたり夜中すごい長電話した記憶があるんですよ。連日夜通し5、6時間ライン通話したり。

ゴンちゃん:そうですね〜あの頃はちょうど事務所をやめようかなという話をしていて、未来のこととかすごい話しましたよね。辞めるという事、未来を色々考えていて。

——すごいと思っていたのが、世界を見ていたじゃないですか、ゴンちゃんって。

ゴンちゃん:そうですね。あの時は無我夢中というか、東京タワーで色々海外の人に試してみたり、アポロシアターに行ってみたり、日本以外に飛び出したいという気持ちがあって。というのも、あまりに日本で何も成すことが出来なかったからだと思うんですけど、海外に目を向け始めた時期でしたね。

——それでYouTubeやりましょう! みたいな感じになってヘッダー撮影したり、サイト作ったり、色々企画して、一緒にロケに何回行ったことか。ダムとか秩父とかね、訳の分からない企画なんかもすごいやったよね。

ゴンちゃん:やってましたね。ダンゴムシの動画(※)なんかは春日さん(オードリー)も褒めてくれましたからね。※ゴン博士がその辺でダンゴムシを探すだけの動画。

——ダンゴムシの動画なんかは、今のビックスモールンさんがやっている事とちょっと似ていて、あえてテレビのように予算をかけて大きなステージやセットとかを使うわけではなく、お部屋で撮影をやられているじゃないですか。あの企画(ダンゴムシの企画)もすごくミニマムな話で、あるもので何とかしようと、お金もあまり掛けずにやっていたりしていましたね。「10mの旅」とかもやったじゃん。あれ同じく。そういう感覚というか、受けるものって研究している感じ?

ゴンちゃん:そうですね。もうそれのみというか(笑)やっぱり数字が伸びている動画に対して自分達がどうアプローチしていくか、身体を使った企画なのか、そうじゃなくても自分達なりのオリジナルになるように掛け合わせていくような感じでやっていますね。

——時代だと思うんですよ。芸人さんって真似というか人のネタをパクるみたいなのってご法度だったじゃないですか。モノマネ芸とかは別として。

ゴンちゃん:そうですね。僕達の場合は逆からだったんですよね。例えば、鳩時計をやって、僕らの真似をやってくれた動画があって、この動画からこういう世界になっていくんだなと。実は真似されるってすごいことで、ずっと何年もやっていてもなかなか真似されないんですよね。今となってはたまたま早い段階で真似してもらったから、今があるのかなと思いますし、マインドが変わった瞬間でもありましたね。

◆「バズるにはどうすればいいのか?」という葛藤

——世間でバズっているとかブレイクしているとかって言っても逆に恐くなってしまったりするよね。でもさ、ボディアートということもあり体力的にも健康でなくてはいけなかったりと大変だと思うのですが、未来をどう見てる感じ?

ゴンちゃん:別にテレビが嫌とかはなくて、オファーがあれば出たいという思いが今もあって、インターネットで活躍できる場所があればインターネットに行くという感じかな……。川の流れに例えるのですが、逆走しないようにしているというか、川の流れに身を任せていく方が楽だよねと思います。

——芸人さんの収入って、広告案件だったりとか、YouTubeの収益とかもあると思うんだけど、日本ってテレビとかにでて、それで知名度を上げて、その後にコマーシャルとかでガツっと儲けるシステム。でも海外は違って逆なんですよね。

ゴンちゃん:海外の人がこぞって日本に来ている。これはチャンスだなというのは感じるんですよね。なのでその人達を、ボディアートで笑わせたいというのがありますね。だけど、やっぱり海外には行ってチャレンジングなことを経験してみたいっていうのは常にあるんですけどね。

◆漫才師とかコントには憧れがある


——根元は3年前と変わってないよね、ビックスモールンって、なんだろう? 感覚的に誰がブレインになっているんですか?グリさんですか?

グリさん:いやいや、僕はついていっているだけです(笑)

ゴンちゃん:でも、グリは賢いので、チロと違って(笑) 僕が偉そうに言ったことを、グリは覚えてくれていて、僕が夢だったテレビからオファーがあった時に、これも出るんですか? とブレーキを掛けてくれたりするんですよ。

——なるほど。世間が思っているよりテレビってやっぱり瞬間風速じゃないですか。変な話、月9のドラマに出たって、NHKの連ドラに出たって、5個前の連ドラの主役言えるかって言われたら、言えない人の方が多いわけですよ。テレビのゴールデンに出たって、ネットで話題になるのってマジで2日ぐらいだもん。

ゴンちゃん:やっぱり昔と感覚が違うんですよね。皆んなが見れるものが民放4局とNHKしかなかった時代は、みんなかぶりつくように見ていましたよね。その時代と同じように戦い方を変えない人って、逆にすごいなと思うんですよね。

——ストロングスタイルというか、漫才だったりとか、逆に続けられるのはすごいことですよね。やっぱり漫才とかコントとかは言葉の遊びや仕掛けがあるからできることで、3人は音声いらないですもんね。

ゴンちゃん:でもやっぱり、ないものねだりで漫才師とかコントには憧れがあって。日本人って日本語であんなにボケとツッコミというすごい仕組みで、完成されているし面白いなと思うんですけど、僕らには不向きというかあまり合ってなかったので。だからやれることをやっていくってことですかね。

◆「日本だけを意識しないで、世界を強く意識するというスタンス

——今って6割ぐらい海外へのアンテナでできている感じなんですか?

ゴンちゃん:はい。もっとかもしれない。なので、その動線としてYouTubeとかが海外でも見られているということで生きてくるのかなという感じです。そして、オファーの際に、決定権がある大人が何を見ているかっていうのが何となく分かってきたんです。

——僕も人のことはいえない部分もあるけど、今の日本って、広告を作る時に結局クライアントとか広告代理店さんは、実際に面白い、面白くないはどうでもいいんですよね……。結局再生数やフォロワー数ばかりを気にしていて。

ゴンちゃん:でもそういう人ばっかりの世界じゃないですか。会社だから失敗できないっていうのもね。

——でもなんか寂しいんですよね。僕は自分で小さい小屋のライブとか見に行って、自分で面白いと感じた人にオファー出したり今だにしてるもん(笑)。今は企業オファーとかもくるようになってきているんですか?

ゴンちゃん:はい。案件とかもきますね。ただ、本決まりすることは少ないですけど、やっぱり案件は多くなりました。そうやって注目していただいて、プレゼンに出していただける感じにはなっているので、何かが決まれば進展がある気がします。

——国でいうとファン層はどこが多いのですか?

ゴンちゃん:YouTubeはインドインドネシアフィリピン、タイ、アメリカ、ブラジルですね。

——なるほど。でも例えば、新しい映画がリメイクされるとか、そういう世界的なニュースの時とかの時期はすごいアンテナを張っている感じですか?

ゴンちゃん:そうですね。色々な映画とかで試していて、一度インドの映画で試したことがあるんですけど、やっぱりちょっと難しいのかなっていうのがあって、タイミングとかが全てなので。

——視聴者の年齢層はどのくらいですか?

ゴンちゃん:意外と若いですね。インドネシアもファンが結構いて、インドネシアは国自体が若いので、何か面白いことができそうな感じはしていて、そっち方面の方も進めてはいるんですけどね。

グリさん:結局、世界中でバズっているんで、どこか一個に集中しちゃうと、全体だったのがギュッとしちゃうので大分数字が落ちてしまうんですよね。

——全く同じネタを何回もやったとしても、全然ヒットしない時と、ドンっと来る時とあるじゃないですか。この理由って何だと思いますか? これは漫才でもコントでもお客様の空気とか繊細な部分もあるのと同じように。

ゴンちゃん:そうですね。やっぱりタイミングだったりすると思うんですけど、コメント数、いいね数、再生維持率が全部良くないと、ドンっといかないので、最後まで見てもらう動画の構成っていうのが大切です。ショートは一個ずつの動画が見られるので毎回ゼロからリセットされるんですよね。なので手が抜けない。

——線路に乗って、あとは通常運転で〜ができない。ずっと自分で線路も電車も作って走り続けないといけないですもんね。

◆「世界の流行りを確実に捉えることの重要性」

——そうなると流行り題材がありきにもなってくる?

グリさん:YouTubeで流行っているものですね。

ゴンちゃん:YouTubeの中で流行っていることですね。要はドラマとか映画に限らず、どのフォーマットが流行っているかという部分。こっちの方が早いし、突き詰めていくと自分がやりたいことっていうよりは、皆んなが見たいものを作るっていうのが近いかもしれないですね。流れに合わせていく、調節していくような感じです。

——ネタって尽きない?

チロさん:常に色々見て探すので、まあかなりありますね。ただ、探すのが大変ですけどね。

——ライバル的な感じの方はいるんですか?

ゴンちゃん:ライバルどころか、僕達よりもめちゃくちゃバズっている日本人の人達は沢山いてまだまだ足元にも及ばないですが、芸人の中では、一応再生回数一位なんです。ただ、日本でいうと60位とかなんでまだまだ全然です。

◆尺の長さで収益は変わる

——長尺の動画は作ろうと思わないんですか?

ゴンちゃん:それが今、長尺に移行しようとする第一段階で、長尺って数字がなかなか取れないんで、数字でそこを見られるとイメージが悪くて……。出していなかったんですよね。SUKESANとは秩父に行ったり、いろんなところロケした動画撮ってアップしていたのですが、そういう理由から今は非公開にしています。

——はい、殴る(笑)

ゴンちゃん:(笑)。盾をもらったり、ニュースになったりとかで色々言っていただいたりした時に、見に来るじゃないですか。そういった時にあれ?ってなるんですよね。というのもショート動画の人は一律、再生回数が伸びていないので、ロング動画伸びてないじゃん!となってしまうから。
でも、ロングに移行するのが最終目標なのは間違い無いです。

——そこまで時間で収益が変わるの?

ゴンちゃん:そうなんですよ。全く入らないわけじゃないんですけど、ロングは桁違いにいいので。

——名のある芸人さんがYouTubeなどにどんどん参入しているじゃないですか。それで、僕が見る限りではマンネリ化してしまっていて、ネタが尽きているように見えるんですよね……

ゴンちゃん:僕達は結局これが目的ではなく、ボディーアートで世界中の人に楽しんでもらう方法の一つなので、最終的には目の前でやりたいっていうのがあって。あくまでもそれに近づくための手段。自分達を押し殺してまでといったモチベーションではないですね。

グリさん:結局、もっと大きな枠でいうと、キャラを消せていないんですよね。私服でやったらいいじゃん、顔を出さなければいいじゃんってことをしないってことは、やっぱりどこかで自分達を出している部分があるので、そこのせめぎ合いといいますか、YouTubeの再生数だけを追っているんであればもっと色々な手法があると思うんですけど、自分達を残しつつやっていくというところに悩んではいますね。

◆「変わっていくこと、と変わらないでいることの境界線」

——今のビックスモールン動画って、ほぼ加工とかを使わないで、実際小道具とかを主に使っているけど、今後AIが進化していくと、CGで色々な手を加えることができてくると思うんだよね。そこで、どこまでを自分達の許容範囲と考えている感じ?

ゴンちゃん:これはやっぱり、なんでも取り入れることも大事だと思っていて、WEB3、メタバースは無視できないと思うんですよね。なので何かしら絡んでいきたいとは思っています。それに目つぶったら終わりなんですよ。

——そこに関しては良い意味でプライドはないんですね?

ゴンちゃん:はい。ないです! 次々新しい、産業が生まれてくるので、昔のものに虎視していると置いていかれちゃうので、次々行った方が楽なんですよね。

——賢いな。ちなみに下世話な話、生活はどのぐらい楽になった?

グリさん:僕はYouTubeを始める前は、水道と電気が止まっていたんですが、それがちゃんと払えるようになるぐらいにはなりました。

チロさん:僕はウーバーが出来なくなっちゃいましたね。時間がなくなって。

ゴンちゃん:三等分なのですが、事務所にいた時よりは良くなってますね。浮き沈みは多少あるんですけど、前よりは良くなってます。

——お部屋をもっと広いところに引っ越して活動とかは思わないんですか?

ゴンちゃん:ちょうどそこができないくらい(笑)

——リアル(笑)

ゴンちゃん:日本だけじゃなく、海外どこにいても、活動ができるので、YouTubeやTiktokに出会えたのは良かったなと本当に思っています。

——確かに! 今回はなんだか4年前のゴンちゃん達との思い出が蘇ってきつつ、すげえ嬉しくなったインタビューでした。インタビューというか、普段の雑談みたいだったけれど……。
また一緒に面白いことしましょう!

一同:はい!是非とも!皆様、今後ともビックスモールンをよろしくお願いいたします!

ビックスモールン
・ゴン/福岡県北九州市出身・チロ/静岡県浜松市出身・グリ/静岡県浜松市出身

<略歴>
●2001 ゴンとチロがコンビ結成、ビックスモールンの誕生
●2001 株式会社ケイダッシュステージに所属
2010 アメリカボディーアート修行
2011 10月31日北九州市観光大使に
2011 中国ボディーアート修行北京、上海
2016 米国NYアポロシアターオーディション
●2017 米国NYアポロシアターアマチュアナイト(1回戦) ショーオフ(2回戦)出演
2018 米国NYアポロシアターアマチュアナイト(1回戦) 出演
●2019 新メンバー「グリ」が加入 三人体制へ
●2019 第1回『TikTokクリエイターアワー』選出
●TikTokオリンピック公式チャンネル動画第一号となる
●2020 株式会社ケイダッシュステージ退社 独立
●2022 ウェブCM 音楽フェス TV等出演
●2024 YouTube累計31億再生突破 YouTube登録者数282万人突破

SUKESAN】
ファミ通 編集者エイベックス→学校の先生数年→新垣結衣さん他、タレントさんのピアノ&歌講師。番組、CMを作る人。昭和レトロ なガチャ『コスモス』アプリ開発中。レトロゲームの話はお任せあれ。育児奮闘中。X(旧Twitter):@sukesankoba note:SUKESAN