古代文明が栄えたエジプトの首都カイロ。9世紀から19世紀に建てられた数多くのモスクがあり、イスラーム文化が色濃く残っているナイル川東岸の区域は、「イスラーム都市カイロ」として、1979年世界遺産(文化遺産)に登録(2007年に「カイロ歴史地区」と改称)されました。街の魅力をたっぷり紹介します。

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取材・文=杉江真理子 取材協力=春燈社

世界最古の世界的な都市カイロ

 紀元前2500年頃に造営されたとされるエジプト・ギザのピラミッドは、だれでも一生に一度は訪れてみたい場所ではないでしょうか? 3大ピラミッドと呼ばれるクフ王、カフラー王、メンカウラー王のピラミッドは、エジプトの首都カイロ郊外の砂漠にあります。この3大ピラミッドを含む「メンフィスとその墓地遺跡 – ギザからダハシュールまでのピラミッド地帯」は、1979年世界遺産(文化遺産)に登録されています。

 ギザでピラミッドを堪能したら、同じ年に世界遺産登録された「カイロ歴史地区」に宿泊して、イスラーム文化に触れてみてはいかがでしょう。

 現在、エジプトの首都となっているカイロは、人口も多く近代的な都市です。街には600を超えるモスクや1000以上のミナレットイスラーム教のモスクに附属する塔)があることから、「千の塔の都」と呼ばれています。

 歴史的にもヨーロッパ、アジア、アフリカからの国際貿易路に位置したことから、政治、文化、経済の中心地で、巡礼路の中継点としても繁栄してきました。

 

さまざまな文化が融合した景観

 7世紀、イスラーム帝国がカイロに侵攻し、エジプト支配の拠点、ミスル(軍営都市)の一つとしてとしてフスタートという都市を建設しました。その場所が今のオールド・カイロです。フスタートは首府や州治所の役割を果たしましたが、ファーティマ朝がフスタートを征服し、その北東に隣接する地域に969 年、ミスル・アル=カーヒラ(勝利の町)を建設。カーヒラがカイロの名の由来となっています。

 町には宮殿や、アラブ最古のイスラーム教のモスクおよび大学である「アズハル・モスク」(972年創設。現在はアル・アズハル大学)などが造られ、発展します。

 続くアイユーブ朝、マムルーク朝でも都とされ、イスラーム世界の政治、経済の中心都市としても繁栄します。マムルーク朝のスルタン(イスラームの王の尊称)は、自らの政治力を誇示するため、ペルシャ式アーチ、細かい彫刻を施したミナレット、尖ったアーチを備えた高いファサードなど、新しい建築様式の建物を建設しました。

 オスマン帝国時代では一時衰えましたが、18世紀末ナポレオンエジプト遠征を契機にエジプト総督となったムハンマド=アリーが独立政権を樹立、カイロは現在でもエジプトの首都であり、イスラーム圏の重要な大都市になっています。

世界遺産地域のみどころ

カイロ歴史地区」のいちばんの見所は、イスラーム地区である旧市街と、カイロ発祥の地であるオールド・カイロでしょう。

 ぜひ訪れていただきたいのがモカッタムの丘にある城塞シタデルです。1176年、アイユーブ朝創始者のサラーフ・アッディーンによって建てられ、ムハンマド・アリー・モスクスレイマン・パシャ・モスク、軍事博物館などがあります。さらにここはカイロ市内を見渡せる絶景ポイントになっています。先に紹介したアズハル・モスクも旧市街にあります。

 ここでの買い物はぜひ、「ハン・ハリーリ・バザール」へ。12世紀、ファーティマ朝に創建された由緒ある「アル・フセインモスク」の西側一帯にあります。14世紀末のスルタン、バルクーク時代に開かれた大スーク(市)で、スーク内はまるで迷路。宝石類や金属細工、民族衣装、工芸品などのお店が道の両側に並んでいます。

 オールド・カイロは歴史好きにはたまらないエリアです。まず、642年から969年までエジプトの首都だったフスタートが、現在も廃墟のまま保存されています。このフスタート遺跡からは、発掘調査によって東方の陶磁器などが出土、シルクロードに繋がっていたことがわかりました。

 この地域にはギリシア正教の修道院や、ユダヤ教シナゴーグ(集会所)が残っています。「ベン・エズラ・シナゴーグ」は、紀元前605年から前560年頃、エジプトに連行されたユダヤ人が建てたもの。1894年改修工事を行った際、地下から「ゲニザ(ヘブライ文字アラビア語)」と呼ばれる文書コレクションが発見されました。中世のユダヤ人だけが使用した文字で書かれた、貴重なものです。

 また、ローマ時代の建造物であるバビロン城の遺跡もあり、多くの宗教文化とじかに触れることができます。

イスラーム風プチホテルと宮殿だった5つ星ホテル

 歴史地区での宿泊で私がお勧めしたいのは、ラグジュアリーなプチホテル「ル リアド ホテル デ シャルム」です。

 イスラーム地区にあり、ハン・ハリーリ・バザールにも近いという、便利な場所にあります。

 イスラーム風の豪華な造りで、全ての部屋のインテリアが異なっています。テラスからはイスラーム地区の素晴らしい景観が望めます。夜にはモスクがライトアップされて、アラビアンナイトのような幻想的な世界が広がります。

 また、世界中から観光客が集まるカイロには、フォー シーズンズ ホテル、ハイアット リージェンシー、ザ リッツカールトンなど高級ホテルがたくさんあります。なかでも中心街にある5つ星ホテル「カイロマリオット・ホテル&ウマル・ハイヤーム・カジノ」は、1869年にエジプト総督イスマーイール・パシャによって建てられた、来客用の宮殿でした。多くの客室にバルコニーがあり、敷地内の庭園のほか、上層階からは市街地やナイル川を一望できます。王族気分が味わえる極上のホテルです。

 食事はホテルのレストランも充実していますが、ハン・ハリーリ・バザールにある高級エジプト料理の「ハン・ハリーリ」で正統派エジプト料理を味わってみるのもおすすめです。

 エジプト料理の特徴は、「コシャリ」や「フムス」など、ナイル川沿いで栽培される穀物や豆を使った料理、イスラーム教徒が多いので豚を食べない代わりに、牛や羊、ハトやラクダ肉料理腸詰め料理が豊富にあります。名物料理にはハトのおなかに米や麦を詰めて焼いた「ハマムマシュイ」、トウガラシニンニクスパイスをふんだんに使った牛肉の腸詰め「スゴッ」、ラクダレバー腸詰め「ケブダ・ガマリー」があり、観光客にも人気です。

 カイロへは日本からの直行便があります。カイロからギザは約15km。メトロとバスでも行ける距離です。

 カイロで、ピラミッドだけじゃないエジプトの魅力を、たっぷり楽しんでみてください。

 

※旅行に行かれる際は外務省海外安全ホームページなどで現地の安全情報を確認してからお出かけください。

https://www.anzen.mofa.go.jp/

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カイロの街並みとギザのピラミッド 写真=フォトライブラリー