相続税対策にもいろいろありますが、「生きているうちにお墓を買っておく」、「孫と養子縁組する」といった方法でも相続税が軽減できるのをご存じでしょうか。本記事では、相続専門の公認会計士・税理士として活躍する石倉英樹氏が、著書『税金のことが全然わかっていないド素人ですが、相続税って結局どうすればいいのか教えてください!』(すばる舎)から、目からウロコの相続税対策をご紹介します。

生前に「非課税財産」を購入すると節税対策に

「非課税財産」は相続税が課税されない財産です。非課税財産の代表には、墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具などがあります。その他にも、相続税の非課税枠が一部設定されている生命保険金、死亡退職金、また公共団体などへの寄附も非課税です。

生前にこれらの非課税財産を購入することは、節税対策のポイントになります。

お墓は死後より「生きているうち」に買おう

例えば、預貯金が3,000万円ある人が生前に200万円のお墓を購入すると、亡くなったあとにお墓の200万円は非課税財産になるので、2,800万円にのみ相続税が課税されます。

つまり、生前から所有している財産の内訳に、非課税財産の割合を増やしておけば、相続税がかかる財産を減らせるということです。

引き継ぐお墓がない場合は、生前にお墓を建てておけば相続財産が減らせるので、節税対策として検討することをお勧めします。

なお、生前に購入した場合にのみ「非課税財産」とみなされるので、亡くなったあとに相続財産から「非課税財産」を購入しても、非課税にはなりません

また、骨董品的な価値がある仏具などを購入した場合は非課税にはならず、相続税が課税されるので気を付けてください。

相続財産はないと思っている人でも、自宅の土地などを評価したときに案外と相続税が高くなる場合もあります。生前から非課税財産を活用して、相続税の対策をしておくといいでしょう。

POINT

生前から所有している財産の内訳に、お墓などの非課税財産の割合を増やしておけば、相続税がかかる財産を減らせます。

孫との養子縁組が「節税」につながるワケ

相続税の基礎控除額は法定相続人の数に影響されるので、法定相続人が多いほど「基礎控除額」も大きくなり、相続税は減額します。そこで、相続税対策として、孫と養子縁組をして法定相続人の数を増やすという方法もあります。

法定相続人を増やすとこんなメリットが!

養子縁組で法定相続人を増やすメリットは次の3つです。

1つ目は「基礎控除額を増やせる」ことです。相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」なので、法定相続人が1人増えるごとに600万円ずつ多くなります。

2つ目は「生命保険金と死亡退職金の非課税枠が増える」ことです。生命保険金と死亡退職金の非課税枠は「500万円×法定相続人の数」です。法定相続人が1人増えるごとに500万円ずつ多くなります。

3つ目は「税率が下がる可能性がある」ことです。法定相続人の数が増えると、各相続人の法定相続分が減るため、結果的に適用される税率も下がる可能性があります。

これら3つの効果によって、相続税も減額されます。ただし、相続税法上、養子縁組で法定相続人になれる養子の人数には制限があります。実子がいない場合は「2人」まで、実子がいる場合は「1人」までです。

孫を養子にするとデメリットもある

孫を養子にした場合、相続税対策の観点から考えるとメリットがあります。ただし、養子になった孫には相続税額が2割加算されるというデメリットもあります。

通常の相続では「親から子供」「子供から孫」の順番で相続が行われます。一方、祖父母が孫を養子にすると「祖父母(養親)から孫(養子)」への相続になり、相続を1回免れることになるため、孫養子の場合は相続税額が2割加算になります。孫を養子にする場合は、通常の相続と比較してどちらが相続税を多く支払わなくて済むかも検討しておきましょう。

POINT 祖父母が孫を養子にすると「祖父母(養親)から孫(養子)」への相続になり、相続を1回免れることになるため、孫養子の場合は相続税額が2割加算になります。

イラスト ©中山成子

石倉 英樹

相続専門の公認会計士/税理士 兼 社会人落語家

※本記事は『税金のことが全然わかっていないド素人ですが、相続税って結局どうすればいいのか教えてください!』(すばる舎)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。