イラン戦で痛恨のPKを献上してしまった板倉。彼の下には心情を気にかける温かいメッセージも寄せられたが、誹謗中傷も相次いだ。(C)Getty Images

 カタールで開催されているアジアカップはベスト4が出揃った。オーストラリアと日本をそれぞれ撃破した韓国、イラン。さらにカタールヨルダンという成長著しい中東の雄。いずれも今大会で熱闘を繰り広げてきたチームであり、優勝を巡る戦いもまた激闘が予想される。

 そんなアジアカップだが、一部で選手たちへの誹謗中傷が過剰な域に達し、問題視されている。現地時間2月3日には、イランとの準々決勝に敗れた日本代表戦士が“被害”に遭った。

【動画】痛恨だった後半ATのPK献上 板倉が与えた絶好機を決めたイランの決勝弾

 1-2と逆転負けを喫したイラン戦で、批判の的となったのは、CBの板倉滉。後半アディショナルタイム4分に空中戦からルーズボールを拾ったホッセイン・カナニの足を引っかけてPKを献上。これをアリレザ・ジャハンバフシュに豪快に蹴りこまれ、痛恨の決勝点を与えてしまったのである。

 この一戦で精彩を欠いた板倉に不用意なプレーが多かったのは確かだ。ゆえにメディア間でも彼のプレーを批評する者は少なくなかった。しかし、そうした意見は日本の敗退を受けてファン(もはやファンと呼ぶべきかどうか…)の間でもエスカレート。本人の公式SNSには、プレーとは無関係な人格を否定する罵詈雑言が次々と投稿された。

 チームの敗退をきっかけに、誹謗中傷のターゲットとなったのは、日本代表戦士だけではない。米スポーツ専門局『ESPN』が現地時間2月3日に掲載した記事によれば、韓国との準々決勝で延長戦の末に敗れたオーストラリアの選手も“一線を越えた”攻撃に苛まれているという。試合中に2度の決定機を逸したJ1の町田に所属する大型MFミッチェル・デュークはSNSで「殺害予告を受けた」と伝えられている。

 こうした悲惨とも言うべき現状に選手たちは怒りにも似た想いを漏らしている。『ESPN』の取材に応じたオーストラリア代表DFハリー・ソウターは「グループステージで僕らは酷評されたけど、それは当然のことでもあった。もっと良いプレーができると僕らも感じていたからね。でも、昨日の試合(韓国戦)に関して違う。あまりに不必要な意見がたくさんあったんだ。あれは違う……、間違いなくね」と打ち明けた。

 サッカーは人間が行うスポーツであり、試合中のミスは大なり小なり付き物だ。当然、選手たちもある程度の「批評」は覚悟の上である。しかし、間違いを犯してしまった選手の人格や尊厳を否定するのは、もはや単なる「暴力」と言えるのではないか。ましてやSNSという姿の見えないところから、匿名のアカウントを使って、一方的に言葉で殴りつけるのは言語道断と言えよう。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

PK献上の板倉滉に人格否定、豪代表には殺害予告…アジア杯で浮き彫りになった深刻化する誹謗中傷問題