体の色を自在に操っているようにみえるカメレオン。その色の変化には私たちが考えている以上に強い感情や深いメッセージが込められているかもしれない。
マダガスカルに生息するラボードカメレオン(Furcifer labordi)のメスが、短い生涯を終える間際に見せた印象的な姿が研究者らを感動させた。
多くのカメレオンの種の寿命は2~7年だが、ラボードカメレオンの寿命はわずか4~5ヶ月で、メスは卵を産んでから数時間で死ぬのが一般的だという。
産卵を終えて力尽き、横たわったメスが死の直前に見せたのは、虹のように鮮やかな体色の変化だったのだ。
この映像は Nature on PBS が公開したもので、アメリカの公共放送PBSの新番組シリーズ「Big Little Journeys」の一部だ。
産卵したラボードカメレオンのメスが、短い生涯を終えるまでの様子がとらえられている。
産卵を終えたメスは、大事な卵にそっと土をかぶせる。これからやってくる長い干ばつから卵を守るためだ。
それからまもなく最期の時がやってくる。
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すべてを終え、力なく身を横たえたメス。もう立ち上がることすらできない。
ところがそこでカメラは驚きの光景をとらえた。動けない彼女の体がまるで虹のように激しく色鮮やかに変化したのだ。
それはまるで死の間際に何かメッセージを伝えたいかのようにも見える。
たとえ短くとも懸命に生きたメスの生涯を表しているようにも見える。この驚異的な変化には研究者も胸を打たれたという。
産卵後たった2時間で死んでしまったメス
協力した研究者チームは、謎の多いラボードカメレオンの生態に迫る機会とみて、複数の個体を記録し観察していた。
するとこのメスの動きが目に見えて鈍くなり、衰弱しているように見えたためタイムラプスカメラを設置した。そして戻ってくるとそのメスは死んでいた。わずか2時間後のことだ。
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ラボードカメレオンのメスはこの産卵に全力を注ぐ。それまでに命の限りを尽くすため、産卵後わずか数時間で死んでしまうという。
これまで野生で観察されたことのない光景に感動
科学的にいえば、死の淵のカメレオンでも神経信号の伝達は続くため、皮膚細胞の形が変化して、混沌としたカラフルなパターンを作る。それをカメラがとらえたことになる。
このシリーズの製作責任者のヴァレリア・ファッブリ=ケネディ氏とアメリカ自然史博物館の爬虫両生類学者のクリス・ラックスワーシー氏はそう説明する。
カメレオンの皮膚には、ナノクリスタルを含む特別な細胞が含まれており、それを膨張・収縮させることで体の色を変化させる。光の反射に変化があるのもそのためだという。
そう述べつつも両氏ともに、これまで野生で観察されたことのない光景に驚き、感動したという。それほど心揺り動かされるものだったのだ。
寿命わずか4~5ヶ月しかないラボードカメレオン
ラボードカメレオン(学名:Furcifer labordi )はカメレオン科 カメレオン亜科 フサエカメレオン属のカメレオンだ。
このカメレオンは、乾季と雨季の差が激しい乾燥した環境である、マダガスカル西部の森林や落葉樹林の樹上に生息する固有種だそう。
メスは黄緑や青紫系が入り混じった体色で、赤やオレンジの斑点がある。オスは緑色をしている。
ラボードカメレオンの寿命は非常に短いことで知られる。卵から孵化まで約8~9ヶ月かかるが、孵化後はわずか4~5ヶ月と寿命がとても短く、四足動物で最も短命ともいわれている。
なお一般にメスは11月からの雨季に繁殖して産卵後(3月からの乾季の前)に死ぬが、オスも雨季の繁殖のチャンスに全力を尽くすため乾季が来る前に死ぬ。一方、卵は雨季の始まりと同時に孵化する。つまりこの種は卵の時以外に乾季を生き抜けない。
ただでさえ寿命が短いカメレオンだが、この種は絶滅危惧種にも指定されている。彼らの生息域である森林の伐採や焼畑農業などが影響しており、種の存続には生息地の保全や管理、環境に関する教育が必要だとされている。
References:livescience / futurism / wikipedia / youtube / natureworldnewsなど /written by D/ edited by parumo
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