写真家ナン・ゴールディンの人生を記し、2022年のヴェネツィア国際映画祭最高賞(金獅子賞)を受賞したローラ・ポイトラス監督によるドキュメンタリー映画『美と殺戮のすべて』(3月29日公開)より、日本版予告編が解禁された。

【動画】彼女はなぜ戦わなければならなかったのか 映画『美と殺戮のすべて』予告編

 1970年代から80年代ドラッグカルチャー、ゲイサブカルチャー、ポストパンク/ニューウェーブシーン…当時過激とも言われた題材を撮影、その才能を高く評価され一躍時代の寵児となった写真家ナン・ゴールディン。2023年には、イギリス現代美術雑誌ArtReviewが発表するアート界で最も影響力のある人物の1位に選出されるなど今日に至るまで世界にインパクトを与え続けている。

 2018年3月10日のその日、ゴールディンは多くの仲間たちと共にニューヨークメトロポリタン美術館を訪れていた。自身の作品の展示が行われるからでも、同館の展示作品を鑑賞しにやってきたわけでもない。目的の場所は「サックラー・ウィング」。製薬会社を営む大富豪が多額の寄付をしたことでその名を冠された展示スペースだ。到着した彼女たちは、ほどなくして「オキシコンチン」という鎮痛剤のラベルが貼られた薬品の容器を一斉に放り始めた。「サックラー家は人殺しの一族だ!」と口々に声を上げながら…。

 「オキシコンチン」それは「オピオイド鎮痛薬」の一種であり、全米で50万人以上が死亡する原因になったとされる“合法的な麻薬”だ。果たして彼女はなぜ、巨大な資本を相手に声を上げ戦うことを決意したのか。大切な人たちとの出会いと別れ、アーティストである前に一人の人間としてゴールディンが歩んできた道のりが今明かされる。

 2022年のヴェネチア国際映画祭最高賞(金獅子賞)を受賞したほか、第95回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞にノミネートされるなど、高い評価を得た本作。この度解禁された日本版予告編は、ノーウェイブバンド・Bush Tetrasの楽曲「You Can't Be Funky」が流れる中、写真家ナン・ゴールディンが、斬新で生々しい題材を被写体にして時代の寵児となり、今や「どこの美術館も彼女の作品を欲しがる」という輝かしい経歴が紹介されるところから始まる。

 その後場面は変わり、ゴールディンが多くの仲間とともにメトロポリタン美術館で「サックラー家はウソつき!人殺し!」と訴えている姿が。サックラー家は製薬会社を営む大富豪で、「オキシコンチン」という鎮痛剤を安全な薬と偽り販売し、アメリカで50万人もの命を奪っていた。一方その莫大な売り上げを、世界中の美術館に寄付する慈善家としても知られていた。

 「人の痛みから利益を得るなんて、怒りしか感じない」と憤り、「現実を世に伝え、体験したことを記録するため、私は写真を撮り続ける」と語るゴールディン。巨大な資本を相手に声を上げ戦うことを決意した彼女の、その途方もない戦いの道のりの一端が収められた、揺るがない信念を感じさせる予告となっている。

 なお現在、本作が上映される劇場では、ナン・ゴールディンが撮影した写真のポストカード3枚が付くムビチケカードが販売中(数量限定/一部劇場を除く)。

 映画『美と殺戮のすべて』は、3月29日より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、グランドシネマサンシャイン池袋ほか公開。

映画『美と殺戮のすべて』本ビジュアル (C)2022 PARTICIPANT FILM, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.