ポーランドの川底の泥から、バイキング(ヴァイキング)と関係があるとされる謎の碑文が刻まれた古い剣が引き揚げられた。
およそ1000年前のこの剣は、ポーランド北部の町ヴウォツワヴェクを流れるヴィスワ川の底の泥に埋まっていたが、ほぼ完璧な状態で回収された。
ポーランドの成り立ちよりも古いものと考えられており、市当局は、この驚くべき発見を文化財保存局に連絡した。
【画像】 碑文が刻まれた中世初期の剣が川底から引き上げられる
剣のX線画像を見ると、剣の刃に「U(V)LFBERTH」という文字が刻まれているのがわかり、これはウルフバートと読める。
ウルフバートとは、おもに北ヨーロッパで発見されている中世の剣170本に見られる刻印で、ローマ帝国時代後期から記録に登場するゲルマン人の部族「フランク人」の個人名である可能性が示唆されている。
見つかった中世初期の剣とそのX線画像 / image credit:O. Ochotny
柄の種類に基づくとタイプSに分類される剣で、先端近くで左右対照に広がる、刀身と直角に交差するまっすぐな金属の鍔が特徴だという。
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柄頭の上部には3つの部分から成るキャップがついていて、この様式からこの剣の年代は9世紀か10世紀にさかのぼるものだと考えられるという。
この時代は、ポーランド初の国家体制であるピアスト王朝が形成された時期にあたる。
「これはヨーロッパの中世初期の剣の中でもっとも有名なもののひとつで、刃の品質という点でも最高級のものです」剣の調査にたずさわった専門家マテウス・ソスノウスキ氏は語る。
「これは、現代のポーランドで発見されたこのタイプの剣としては8本目ということになります」
バイキングと関連性があるのか?
この剣がそもそもどのようにしてポーランドにやってきたのか、本当にバイキング(ヴァイキング)とつながりがあるのかどうか、まだ不明だと言う研究者もいる。
ヴウォツワヴェクの町は川沿いの一等地にあるため、この町とバルト海やスカンジナビアなどの長距離ルートを結ぶ、当時の重要な輸送路だった可能性があると、ソスノフスキ氏は考えている。
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さらに、2007年の高速道路建設中に、10世紀と11世紀にさかのぼる埋葬地が近くで発見されている。
調査中にスカンジナビア起源の遺物が数多く発見されたことから、この墓地にはスカンジナビア出身の人たちが埋葬されていると思われ、彼らは当時この地域に設立されつつあった最初の国家ピアスト王朝に仕えていた可能性も出てきました(ソスノフスキ氏)
しかし、すべての研究者がこの剣がバイキング由来のものであると確信しているわけではない。
ポーランドの考古学者ロバート・グロトフスキ氏は、ワルシャワを拠点とする新聞ガゼタ・ヴィボルチャ紙に対し、このタイプの剣は現在のフランスで鍛造されたものでも、「バイキングの剣」と呼ばれることが多いと語る。
こうした武器の多くは、交易を通じて中央ヨーロッパにもたらされたものだという。
「この剣がバイキング由来のものだという考えがどこから出てきたのか、私にはわかりません」グロトロフスキ氏は言う。
「詳細な研究もなく、これをバイキングの剣と呼ぶのはまったく不当なことです。これが中世初期の剣であるいうことは確かですが、それ以上のことは言えません」
References:Early medieval sword fished out of Polish river is in 'near perfect' condition | Live Science / Ancient sword with possible Viking origins and a mysterious inscription found in Polish river - CBS News
/ written by konohazuku / edited by / parumo
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