便利でおいしい商品が次々と生まれている現代。台所の戸棚を開けると、魅力的な見た目に惹かれ“パケ買い”したまま放置した大量の調味料が並んでいる……という人も多いのではないでしょうか。医学博士・管理栄養士の本多京子氏は、著書『60代からの暮らしはコンパクトがいい』(三笠書房)のなかで1日1日を充実させるために暮らしの“ダウンサイジング”を勧めています。本記事では、NHK『きょうの料理』でもおなじみの本多氏が、誰でもまねできる“簡単万能だし”の作り方を伝授します。

夜、“ペットボトルに昆布をポイ”→翌朝おいしい「だし」に!

お料理は、キッチンに立っている時間だけでするわけではありません。自分がそこにいなくても、勝手においしくできる方法を活かさなければ損です。

たとえば、おいしくて健康的な「だし」も、ペットボトルと水とひと晩という時間があれば、簡単につくれます。このだしがあれば、塩分を減らしておいしい料理ができます。「水だし」のつくり方はとても簡単です。

<「水だし」の簡単な作り方>

まず、500mlの水入りのペットボトルを用意します。

そこに昆布5g(幅5cm×長さ7~8cmほど)、かつおぶし5g(ミニパック2個/煮干しや干ししいたけでも可)を入れます。

たったこれだけ。夜寝る前に準備しておけば、翌朝にはできているので、朝のお味噌汁にも使えます。残った分はペットボトルに入れたまま冷蔵庫で、3~4日保存可能です。なくなったら再び水を加えて鍋に入れて火にかけ、二番だしがつくれます。

夕食の準備も、「だし+食材」を鍋に入れて“ほっとく”だけ

私は朝にこの水だしを使って、夕食の準備をしてしまいます。朝食が終わって洗い物をしたら、すぐに取りかかるのがコツ。そうでないと、おっくうになってしまいます。

そのときに重宝しているのが、余熱で食材に火を通す「保温調理鍋」です。孫が夕方保育園から帰ってきても、またいつ誰が来てもあわてないように、材料をこの鍋に入れて煮ておくだけ。

夕食の準備といっても、時間をかけてできあがりまでつくってしまうわけではありません。保温調理鍋に水だしを入れて、食材をひと煮立ちさせておきます。

一般の鍋に比べて、長時間高温をキープできるので、コトコト煮込んだりしなくても、夕方までには食材の芯まで味がしみてやわらかくなっています。しかも、光熱費の節約にもなりますよ。

夜寝てから朝までの時間でおいしい「だし」ができていて、昼間の忙しい時間で根菜類にいい味がしみ込む。この間、私は何もしていません。ただ、あとで味つけを調整できるように、朝の時点ではあまり味つけをしないように、あくまでも薄味にしています。

キャベツ、にんじん、玉ネギなどとソーセージポトフをつくったり、鶏肉と根菜とサツマイモを煮ておき、夕方に麦味噌を加えて、さつま汁風のお味噌汁をつくったり。保温調理鍋で、短い時間でアレンジがきくものをつくっておくのです(保温調理鍋がない場合は、鍋を火からおろしたらすぐに新聞紙等で包み、厚めのバスタオルなどをかけておきます)。

「水だし」は浅漬けにも!

また、他にも野菜がたくさんあるときは、浅漬けをつくることもあります。白菜や大根などの大型野菜は、つい残りがちになりますよね。そんなときは、ジッパーつきの保存袋を使えば、簡単! 野菜をムダなく活用でき、保存するときも冷蔵庫でも場所をとりません。

朝に漬けておけば、夕方には味がしみ込んでいます。あとは夕方、魚を焼いたりすれば、あっという間にできあがり。夕食の準備にバタバタすることがないのです。

“次”を考えて「手間貯金」をためる

いつも、「次」を考えて行動することが大事ですね。 朝のうちに夕食の下ごしらえをしたあと、パソコンを開け、メールをチェックします。

もちろん、仕事のデスクからはキッチンがよく見えます。パソコンの前にずっと座っていると疲れてしまうので、調べものの合間に掃除機をかけたりするのも、いい運動になっています。

前述の保温調理鍋を使っているおかげで、煮込み料理などをつくりながら仕事をすることはほとんどありませんが、どうしても火にかけなければならない料理のときは、キッチンタイマーを使います

若い人でも、お鍋を火にかけていたことを忘れて大変なことに……という経験はあると思います。とくに年齢を重ねると、どうしても嗅覚が鈍くなるので、そんなうっかりを防ぐためにも、キッチンタイマーはおすすめです。

キッチンタイマーがない場合は、スマートフォンのタイマーアプリや目覚し時計を使うといいですね。しかも、コンパクトな私の家の場合は、時々チラッと見るだけで、すぐにキッチンの様子がわかりますから、便利で安心です。

本多 京子 医学博士、管理栄養士

(※写真はイメージです/PIXTA)