「スーパーで買い物をすると高くてしょうがない」「海外旅行の費用が以前の2倍もかかった」など、何かと悪者にされがちな「円安」。しかし、自分たちから「企業」へ目線を向けると、その印象は変わってきます。本記事では、人気経済アナリストの森永康平氏氏による著書『0からわかる!金利&為替超入門』(ソシム)から、円安・円高の基礎知識を抜粋してご紹介します。
登場人物
森永康平…経済アナリスト。竹田と宮野に金利・為替の知識を教えてくれる。
竹田紗香…輸出企業である自動車部品メーカーに勤める会社員(20代)。出世のため仕事に打ち込む。
宮野聡…輸入企業である食品加工の企業に勤める会社員(20代)。住宅購入や投資を検討している。
円安になると輸入品が値上げされる
宮野:先生、円安・円高は、立場などによって受ける影響が違うんでしたよね。円安になったときの生活への影響を知りたいです!
森永:最初に挙げられるのは、輸入品の値上げです。特に、日本はガソリンなどの資源をほとんど輸入に頼っているため、燃料代への影響は顕著です。
宮野:確かに、すぐ値上がりしますね……。
森永:また、原材料が輸入品であれば円安の影響を受けます。例えば、小麦やトウモロコシの多くは輸入品です。実際に価格転嫁されるまでには時間がかかりますが、円安の影響が長引けば値上げは避けられません。
竹田:事前に円安の対策はできますか?
森永:事前に外貨の資産を持っておくなどすると、円安の影響を軽減できますよ。
円高になれば海外旅行がお得になる
竹田:円安で商品が値上がりするということは、円高になれば商品は値下げされるんでしょうか?
森永:その通りです。円高になれば輸入のコストが少なくて済むため、値下げを行いやすくなります。ただし、企業ごとの損益状況なども加味されるので、実際に値下げされるかは企業の判断によります。
竹田:それでも、値上げが続くよりはいいですね。
森永:円高になれば有利なレートで円を外貨に両替できるため、海外旅行がお得になったりもしますよ。
宮野:円高になればいいことだらけなんですね!はやく円高になってほしいです。
森永:消費者の目線から見ると円高は嬉しいですよね。ただし、企業の目線から見ると「円安がだめ」「円高がいい」とはいい切れません。
円安で得をするのは輸出を中心に行う企業
森永:今度は企業の目線で円高・円安を見てみましょう。円安のとき、輸入コストがかさんで利益が伸びづらくなる企業もありますが、得をする企業もあります。
竹田:私の勤め先は、円安の影響で業績が伸びました!
森永:竹田さんの勤め先は輸出を中心に行う企業だからですね。円安では、外貨を円にしたときお得になります。さらに、外国から見ると日本に旅行しやすくなるため、インバウンド産業にとっても利益になります。
宮野:そうだったんですね!
森永:そして、国の経済力を示すGDPにもメリットがあります。GDPの計算には輸出額が含まれるのですが、円安によって輸出額が増加するためGDPが押し上げられます。ただし、過度な円安によって、世界のGDPランキングで日本の順位が下がるなど、悪影響もあります。
円高で得をするのは輸入を中心に行う企業
竹田:輸出企業は円安で得をしますが、反対に円高で得をするのはどんな企業ですか?
森永:海外の商品を輸入する企業です。円換算をしたときに価格が低く算出されるので、コストが低くて済み、業績が伸びやすいのです。
宮野:そういえば、業績が伸びた企業は株価が上がりやすいって聞いたことがあります。円高のときに輸入企業の株を買えば儲けられるんでしょうか?
森永:考え方は悪くないですが、うまくいくとは限りません。多くの企業は、為替の影響によるダメージを抑えるため、為替ヘッジなどで為替変動の対策を行っています。円安のダメージが軽減される代わりに、円高のメリットも小さくなることがあります。
宮野:なるほど。円高だから必ず儲かるとは限らないんですね。
イラスト ©平松慶
森永 康平
株式会社マネネCEO、経済アナリスト
※本記事は『0からわかる!金利&為替超入門』(ソシム)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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