カフェやファミリーレストランなどでは、パソコンで仕事をするサラリーマンや勉強をする学生を見掛けることがあります。実際に、仕事や勉強のために飲食店を利用したことがある人は多いのではないでしょうか。

 ただ、飲食店の中には、「長時間の利用お断り」「勉強お断り」という張り紙を掲示している店があり、注意が必要です。もしそのような店で長居をしたり、勉強をしたりした場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。店員から注意を受けても居座り続けると、どうなるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

不退去罪」に該当する可能性も

Q.そもそも、カフェやファミリーレストランなどの飲食店で長居をしたり、勉強をしたりした場合、法的に問題となる可能性はあるのでしょうか。また、店側は長居をする客に退店を求めることは可能なのでしょうか。

佐藤さん「法的に問題となる可能性は低いでしょう。飲食店では、一般的に、商品を注文すれば一定の時間、席を使うことが認められるものだからです。

どのくらいの時間であれば許容されるかについては、店側の判断になります。勉強や仕事などによる長時間の利用を受け入れている店もあるでしょうし、回転率を上げたい飲食店もあるかと思います。後者の飲食店では、『当店では、飲み物のみご注文のお客さまは1時間までのご利用となっております』といった形で、あらかじめ時間制限を設けるなどして対応しているでしょう。

利用時間について、店側と客との間で特に合意していない場合には、極端な長時間でない限り、客側に退店を求めることは難しいです。店側が混雑時に客の回転を早めたいと思うのであれば、事前に『混雑している場合は、お声掛けすることがあります』などと客側に示しておくことが大切です。客側がそれを承知の上で利用しているのであれば、退店を求めることができます」

Q.では、「長時間の利用お断り」「勉強お断り」といった張り紙を掲示する飲食店で長居をしたり、勉強をしたりした場合はどうなるのでしょうか。店側から長居や勉強をやめるよう、注意を受けたにもかかわらずやめなかった場合は、法的に問題となるのでしょうか。

佐藤さん「『長時間の利用お断り』『勉強お断り』『利用は○時間まで』などの張り紙やアナウンスをして、客もそれを承知して入店した場合、何時間も滞在すれば契約違反となり、退去を求められることになるでしょう。

店側から注意を受けたにもかかわらず、ルールを破って長時間滞在し、店側に損害を与えた場合は、損害賠償責任を追及される可能性があります。店側が退店を求めたにもかかわらず、ルールを破り、さらに居座った場合、不退去罪に問われることも考えられます(刑法130条)。不退去罪の法定刑は3年以下の懲役または10万円以下の罰金です」

Q.「長時間の利用お断り」の掲示がないカフェやファミリーレストランで、店員が長居している客に対し、追加注文や退店を促したとします。法的に問題となる可能性はありますか。

佐藤さん「客に追加注文や退店のお願いをするだけであれば、法的に問題となりません。客によっては、店側の求めに応じてくれる可能性があります。

ただし、店が追加注文や退店を強制することはできません。先述のように、飲食店では一般的に、商品を一つでも注文すれば一定の時間、席を使うことが認められるものだからです」

 飲食店で長居をしても法的責任を問われる可能性は低いということですが、昼食や夕食の時間帯になると、多くの人が飲食店を利用します。後から来た人が円滑に店を利用できるようにするためにも、混雑時は長居をしないよう、配慮する必要があります。

オトナンサー編集部

飲食店で長居をすると、どうなる?