自閉スペクトラム症(ASD)は、相手の考えを読み取ったり、自分の考えを伝えたりすることが苦手で、特定のことに強い興味や関心を持っていたり、こだわりが強いといった特性を持つ発達障害の一種である。
幼少時から診断が可能なのだが、ASDと診断されるのは男の子が圧倒的に多く、女の子の場合、ASDであっても見落とされていたとする新たな研究結果が報告された。
エルサレム・ヘブライ大学の神経科学者による研究によると、ASDに特別な性差はなく、男性だけでなく、きちんと女性も調べ、これまでの研究の偏りを早急に修正する必要があることを示している。
「自閉スペクトラム症(ASD)」とは、「自閉症」「高機能自閉症」「アスペルガー症候群」を総称したもので、コミュニケーションが苦手だったり、こだわりが強かったりする症状を特徴とする発達障害のことだ。
多くの場合、3歳までに診断が可能で、目を合わせない、にっこりと笑いかけてもほほえみ返さない、指さしが少ない、模倣が少ない、言葉の発達が遅い、語彙が広がらない、こだわりが強い、感覚の過敏さがある、同世代の集団の中に入っていけない、などの症状をを見ながら診断する。
じつはこれまでASDは主に男の子の発達障害とされることが多かった。ASDと診断されるのは、男の子が女の子の4倍とはるかに多いからだ。
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ASDの症状が男女で異なるため女の子は見落とされていた可能性
ところが最近では、そうした見方は疑問視されるようになってきた。
そしてエルサレム・ヘブライ大学の神経科学者マニシュ・クマール・トリパティ氏らによる今回の研究もそれを裏付けている。
もしもASDのなりやすさに性別が関係ないのだとすれば、なぜこれまで男の子ばかりが診断されることが多かったのだろうか?
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女の子のASDが過小評価されていた理由
『Scientific Reports』(2024年1月4日付)に掲載された研究では、ASDに関係があるとされる遺伝的な突然変異を持つマウスの脳内を調べている。
するとASDのマウスの場合、神経細胞から伸びる樹状突起が少なく、シナプス(神経細胞と神経細胞がつながるところ)から情報を送信するために必要なタンパク質の量も少ないことが明らかになった。そうしたマウスは社会性が乏しくなる。
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だがとりわけ重要なのは、こうしたことにオスとメスの差がなかったことだ。
男の子ばかりがASDと診断される理由の1つとして、女の子はASDになりにくいという「偏見」があった可能性があるという。
もう1つの理由として、女の子のASDの症状は、外からは見えづらく、心の内側に現れる傾向にあるからかもしれない。
例えば、ASDの男の子はコミュニケーションが苦手で孤立しやすい。
ところが女の子の場合、ASDだったとしても、うまくとりつくろい「偽装」することが可能なため、一見したところ社交的に見える。
周囲の子たちは徐々に何かが違うことに気づき、だんだんと人間関係を保てなくなるのだが、それまでには時間がかかるのでわかりにくい。
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ASDのなりやすさに性差は関係ない
そして今回のトリパティ氏らの研究は、後者の正しさを裏付けているようだ。結局のところ、女性だからといってASDになりづらいわけではないことを示している。
この研究によれば、女性の場合、症状の現れ方が男性と違うということになる。だからなかなか気づかれにくいというのだ。
これまでASDの研究は男性の症状を中心になされ、そのため診断の基準も男性の症状がベースになっている。
今回の研究は、そうしたASDの性別による偏りを早急に修正する必要があることを示している。
実際に子供のころから生きづらさを抱えていた女性が大人になってかASDと診断されるケースもある。自分で気が付くことができたら改善の余地もあっただろう。周囲が気が付いてあげることで、生きづらさを少しでも減らすことができたかもしれない。
References:Mutations associated with autism lead to similar synaptic and behavioral alterations in both sexes of male and female mouse brain | Scientific Reports / New Evidence Highlights a Serious Flaw in Our Perception of Autism : ScienceAlert / written by hiroching / edited by / parumo
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