週刊誌が行きつく先は破滅か、あるいは新天地か――。

週刊誌による性加害報道が世間の賛否を集めている。昨年末、週刊文春がお笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(60)の性加害疑惑を報道。吉本側は記事内容を否定したものの1月には松本人志が芸能活動の休養を発表し、世間に衝撃を与えた。

その後、松本は週刊文春を発刊する文藝春秋社を提訴。名誉棄損を理由にした損害賠償の請求額は5億5000万円にも及ぶが、それ以上に賛否を呼んだのが週刊文春による追撃の数々だった。一連の告発は第5弾(2月6日現在)にものぼり、証言する女性の数は10人(同)となっている。

ある現役の週刊誌記者Aは、週刊文春の状況についてこう語る。

「今でも文春へは複数のタレコミが集まっている状況だそうです。しかし、そのほとんどは証拠が薄く、記事としての掲載は厳しいものでボツになっていると聞きます。文春はエース級の記者を複数投入し、裏取り作業を今なお続行しているようです」

◆■同業者からも「ここまでやるのか?」の声

ただ、この状況に苦言を呈す声もある。元週刊文春記者である中村竜太郎氏(60)はテレビ番組で「文春OBは「『やりすぎ感』『叩きすぎなんじゃないか』という声が一部にある」と心境を吐露。「すべてがガチになっている感じ」と語り、『過激にして愛嬌あり』をモットーとしたかつての編集部との温度差を指摘した。

では、なぜ週刊文春はここまで“ガチ感”を強めるのか? 前出の週刊誌記者Aが話す。

「同業者の中でも『芸能人相手にここまでやるのか?』という声が挙がっているのは事実。ただ、ここまでやらざるを得ないのは世間の風当たり、特にネットの影響が大きいかと。第一報で吉本側から『事実無根』と反論された以上、次号でトーンを弱めれば『ほら、やっぱり具合が悪いじゃないか』とネットを中心に非難の的になりかねません」

結果として前回記事の信ぴょう性を高めるために新たな記事を出し続けるというスパイラルに入っているという。

松本人志という大物ゆえの側面はあるが、逃げ道を用意した書き方をすれば嘘認定されるので、『白か黒か』という勝負をするしかないわけです。ただ、そもそもこの『白か黒か』というメディアパフォーマンスを高めたのは、これまでのスキャンダル報道で二の矢、三の矢を放ち、相手の釈明に“とどめ”を刺してきた文春のスタンスが招いた面もあるでしょう」

◆■週刊誌も世間も、より過激さを求めて”麻痺”している

世間からの注目具合という意味では、「一昔前に比べて、不倫報道くらいでは世間が騒がなくなった」という週刊誌報道を取り巻く状況も影響しているようだ。

「かつては熱愛ネタだけで世間も騒いでいましたが、10年ほど前から不倫ネタブームが到来。あの頃は不倫という文字が入れば、それだけで記事が驚くほど読まれた。今はよほどの意外性がなければ不倫ネタすら反応が鈍く、不倫ネタも編集会議でボツになることも増えてきました。結局、刺激的な見出しを打たないと記事は売れず、今はステロイドを打つように世間も編集部も、より過激なものを求めて麻痺していっている部分はあるでしょう」(記者A)

<取材・文/MySPA特別取材班>

激しいライバル関係でも知られる「週刊文春」と「週刊新潮」