ヤマハ株式会社は2023年2月2日に、エクスペリメンタル・ソウルバンドWONKのライブの4K映像、ハイレゾ・マルチチャンネル音声とともに照明データまで配信し、ライブ会場さながらの臨場感をリモート会場に届ける初の取り組みを、株式会社コルグによる技術協力を得て実施した。

ヤマハは、2020年より「ライブの真空パック」のコンセプトのもと、本物のライブにより近い形でそのパフォーマンスを届けるための高臨場感ライブビューイングシステム「Distance Viewing」の開発を進めている。

2月1日に発表した新技術「GPAP(General Purpose Audio Protocol)」はその開発の中で生まれたもので、音声データだけでなく、照明、レーザー、舞台装置の制御信号等のさまざまなデータをオーディオデータ(wav)として保存、再生できる新しいシステム。多様なデータを横断的に扱えて、一括保存・再生することが簡単になるため、ライブ公演の記録・再生だけでなく、テーマパークやイルミネーションショーなどマルチメディアを扱うさまざまなエンターテインメント領域での活用が見込まるという。

今回のイベントでは、コルグが開発した業界史上最高音質によるインターネット動画配信システム「Live Extreme」に新技術GPAPのデータを載せることで、ヤマハ銀座スタジオで行われたWONKのライブを4K映像、ハイレゾ・マルチチャンネル音声だけでなくライブの照明データ(DMX)も同時に近隣のイベントスペース「グレースバリ銀座店」へ配信し、リアルタイムでの高臨場感ライブビューイングを成功させた。

一般的なライブビューイングでは、マルチアングルの映像とステレオ音声の上映となるため、ライブ会場にいるかのような臨場感を実現しにくい課題があったが、ライブ会場に迫る映像、音、空間演出の迫力をそのまま遠隔地に届けられる今回の取り組みは「観たくても観られないライブ」をより多くの方に届けるための画期的な第一歩になったとしている。

Distance Viewing

ヤマハが開発する高臨場感ライブビューイングのシステム。映像、音響だけではなく照明やレーザーといった舞台演出などライブの体験をすべて記録し、忠実に再現することで、ライブ会場さながらの臨場感の中でアーティストのパフォーマンスを鑑賞できる。2020年に初回のイベントを実施後、2021年、2023年とこれまで3回の公演を実施し、いずれも来場者アンケートで高い評価を得ているという。

Live Extreme

コルグが開発した業界史上最高音質によるインターネット動画配信システム。最大4Kの高解像度映像とともに、高音質なロスレス・オーディオをはじめ、更に高品位なハイレゾオーディオ(最大 PCM 384kHz/24bit および DSD 5.6MHz)をマルチチャンネルでライブ配信できる世界初の画期的なシステム。

サンプリング周波数96kHzを超えるハイレゾオーディオに対応した動画配信システムとして(コルグ調べ)

WONKのコメント(敬称略)

長塚健斗(ボーカル):本日はリモート会場でも聴いてくれている方々がいることをイメージしながらライブを楽しめました。この技術を用いて、これまで訪れることができなかった街をはじめいろいろな地域に私たちの生のライブを届けられる未来が来るのだなと実感しました。

江﨑文武(ピアノ・キーボード):音楽ライブを構成する要素として「照明」は大きく、Distance Viewingでは、照明演出が同期され高い臨場感をもたらしていることがとても興味深いです。今後、ライブ配信先のお客様の反応もリアルタイムで得られるようになると、パフォーマンスにも生かせると思います。

井上幹(ベース・サウンドエンジニア):Distance Viewingは未来のあるシステムだと思います。スポーツ観戦でのライブビューイングのように、音楽においても、遠隔の会場で臨場感あるライブを仲間と一緒に観て楽しむことは大切な体験になると思います。今後そのような広がりがあることを期待したいです。

荒田洸(ドラム・プロデューサー):今後も、演奏する側として、Distance Viewingを使ってできることについてアイデアを出したり、実験を行うなど、新しい挑戦ができたらいいなと考えています。

ヤマハ、WONKのライブを高臨場感ライブビューイングシステム「Distance Viewing」で遠隔会場に配信。実用化に向け実証イベント