松尾スズキ作・演出の舞台『ふくすけ』が、7月よりCOCOON PRODUCTION 2024『ふくすけ 2024-歌舞伎町黙示録-』として上演されることが決定。『ふくすけ』が上演されるのは12年ぶり4度目となり、本作3度目の出演となる阿部サダヲや、松尾の舞台作品に初参加となる黒木華岸井ゆきのらの出演が明かされた。

【写真】おなじみのメンバーも松尾舞台作品初参加の面々も、豪華! 『ふくすけ 2024-歌舞伎町黙示録-』キャスト

 『ふくすけ』は、松尾スズキ作・演出により、1991年に悪人会議プロデュースとして初演、98年には松尾が悲劇をテーマに作品を創り上げる「日本総合悲劇協会」公演で再演、そして2012年にBunkamuraシアターコクーンで再々演された。薬剤被害によって障がいを持った少年“フクスケ”をめぐり、様々な境遇の登場人物たちが、底なき悪意と情愛に突き動かされながら、必死にもがき生きる姿を毒々しくも力強く描いた壮大な人間ドラマ。かつてのインタビューで「生まれてきたこと、そして時世に付きまとう不平等や不条理に対する怒りをバネに厄介な作品を進化させる」と松尾が語る通り、ゆるいヒューマニズムを揶揄し、“悪”もまた人の姿であることを圧倒的な筆力で描き出した傑作戯曲だ。12年ぶり4度目の上演となる今公演では、サブタイトルを“歌舞伎町黙示録”と題し、台本をリニューアル。フクスケが入院する病院の警備員コオロギと、盲目のその妻サカエの夫婦を軸に、物語は展開する。

 とある病院の怪しい警備員コオロギは盲目の妻サカエに歪んだ愛情を抱き、サカエはコオロギを献身的に愛していた。そんなある日、コオロギの勤める病院に、薬剤被害で身体障がい児として生まれ、長い間監禁されていたフクスケが保護される。彼を監禁していた大富豪ミスミミツヒコは逃走し行方不明。冴えない中年男エスダヒデイチと、精神のバランスを崩し告訴魔となってしまった妻マス。ある日行方不明になったマスを、ヒデイチは14年も探し続けている。ヒデイチの協力者であるホテトル嬢のフタバの伝手で自称ルポライターのタムラタモツから、マスは歌舞伎町にいるらしい、と情報を得たヒデイチは上京を決意する。テロリストであるコズマ三姉妹は、食うや食わずの境遇から歌舞伎町の風俗産業で一発当てて、飛ぶ鳥を落とす勢い。ひょんなきっかけでマスと出会い、生み出した<一度死んで生まれなおすゲーム>輪廻転生プレイが大ヒット。裏社会に影響力を持ち、政界にまで進出しようと企んでいる。彼らの渦巻く情念は、やがて多くの人々と歌舞伎町自体を巻き込み、とんでもない方向に動き出す…。

 東京公演の会場は、歌舞伎町のど真ん中に聳え立つ東急歌舞伎町タワー内のTHEATER MILANO-Za。歌舞伎町を舞台にした作品世界と現実の街とのシンクロも楽しめる。初演から33年経っても色褪せず、上演の度にその時代に突き刺さる普遍的な物語が、今を生きる観客を狂騒の世界に引き込む。哀しくも美しい、怒涛のダークエンタテインメントに期待したい。

 狂気の松尾ワールドを余すところなく魅せるキャストには、『ふくすけ』には3度目の出演となる阿部サダヲ、松尾の舞台作品に初参加となる黒木華岸井ゆきの松本穂香、内田慈、大人計画からは阿部に加えて、荒川良々、皆川猿時、伊勢志摩、猫背椿、宍戸美和公、さらに町田水城、河井克夫、菅原永二、オクイシュージと松尾作品の神髄を知り尽くした面々が顔をそろえる。さらに、松尾作品のミューズとして世界観を体現する秋山菜津子、そして自身の作・演出作品には久々の登場となる松尾スズキも出演。中毒性を倍増させる魅力的なキャスティングと、2024年版として配役を新たに、パワーアップして上演する。

 COCOON PRODUCTION 2024『ふくすけ 2024-歌舞伎町黙示録-』は7月9日8月4日までTHEATER MILANO‐Zaにて、8月9日~15日までロームシアター京都メインホールにて、8月23日~26日までキャナルシティ劇場(福岡)にて上演。

COCOON PRODUCTION 2024『ふくすけ 2024-歌舞伎町黙示録-』に出演する(上段左から)阿部サダヲ、黒木華、荒川良々、岸井ゆきの(下段左から)皆川猿時、松本穂香、松尾スズキ、秋山菜津子