みそを主体とする食品卸のジャポニックスの土屋勇蔵社長にインタビューし、同社の近況と、みそ業界の見通しを聞いた。
 
土屋社長は「若返りを含めて、長期的に企業を継続させるための組織、会社の在り方のベースをつくろうとしている」など、ことしの抱負を話した。

――2023年度(2023年12月期)を振り返って

業績は予算を上回った。メーカーへの聞き取りや、新聞紙面によると、価格改定で金額は増加、数量は減少という傾向にある。当社も価格改定で金額は上がったが、数量は前年並みを見込んでいる。みそのカテゴリーは、数量を落としている。金額は得意先スーパーによって前年以上、以下がある。価格改定の影響で販促回数が減ったところは前年を下回った。

――「2023年度は若返りを図る上で準備・再出発する年」としていたが、今年度は

2024年度もこのテーマを継続し、若返りに向けた組織の見直しを行う考えだ。次世代の幹部を育成するために、30歳以下の若手の勉強会などを検討していく。長年働いてくれている高齢者の活用も同時に考える必要がある。

また、生成AIの活用に向けて取り組んでいく。若返りを含めて、長期的に企業を継続させるための組織、会社の在り方のベースをつくろうとしている。

――今年度の施策を

外食・業務用分野を開拓するため、本腰を入れて取り組む。関連の展示会に出展し、需要を探っている。ローカルのみそは、外食でほとんど使われていない。中小みそメーカーと、外食店との橋渡しができるのではないかと考えている。

外食・業務用という未開拓市場が残っている。メニューで差別化を図る外食店を開拓したい。

〈適正価格の実現が改めて大切と、本社下の店舗は固定客つき健闘〉

――みそをベースにした商品をスーパーの売場全体で売ることで店を盛り上げる販促提案「味噌フェス」の状況は

当社としては新たなカテゴリーである総菜などでも展開でき、感触は良かった。当社および実施したスーパーともに課題が見つかった。ブラッシュアップしていく。今年の展示会でも提案する予定だ。みそを軸に店の活性化につなげてほしい。

――昨年の貴社展示会「彩食展」では、みそピーナッツを提案し、「今後、ご当地のみそピーナッツを提案したい」と話していた

みそピーナッツを展示会で提案したことをきっかけに、採用してくれた事例もある。現在は「おみそナッツ」として提案している。菓子は新しいカテゴリーであり、開拓していきたい。

――ビミタス事業の近況を

本社(大阪市)の下に構えている調味料や食品を取りそろえた店舗「bimitas MERCARTO(ビミタスメルカート)」(大阪市)は、固定のお客様がついてきており、健闘している。最近の取り組みでは、福袋が売れた。賞味期限が迫った商品をセットした「廃棄ロスを助けよう福袋」も支持された。目標どおり、地域になじむ店になってきている。

――みそ業界の2023年の振り返りと今年の見通しを

2023年12月までの全味統計はまだ発表されていないが、生産量、出荷量ともに前年を下回るのではないか。一年を振り返ると、マルサンアイがみそ事業の大幅縮小を発表したことが印象的だった。

みそ業界において、メーカー各社が事業を継続し、商品を供給し続けるには、適正価格を実現することが大切だと改めて感じている。

ハナマルキが一部製品を対象に、4月1日から価格改定することを12月に発表した。メーカーの収益環境を考えると、原料では、米の価格も上がっている。

また、これまでの値上げは原料を中心としたコストアップによるものだったが、人件費など社会的なコストも企業努力の限界を超えている。引き続き値上げ基調が続くのではないか。

〈大豆油糧日報2024年2月8日付〉

ジャポニックスの土屋勇蔵社長