若者に人気の昭和レトロブーム。なかでも、激動の時代を彩ったラブホテルはユニークでカオスな世界観を醸し出している。廃業や建て替えが進み、“絶滅危惧種”となったそんな古きよきレガシーを愛好家たちと探訪した。今回は昭和ラブホ愛好家・ゆなな氏のおすすめだ!

◆貝殻から回転式まで。昭和ベッドが現役稼働!ゴージャスラブホ

音楽やファッション、グルメなど国内外のZ世代が人気を牽引する昭和レトロブーム。

1985年の風営法の改正で締めつけが厳しくなったこともあるが、昭和のラブホが姿を消しつつある。平成の半ばから少子化の加速で若者の利用者が激減。インバウンド狙いで外国人客向けに改装されたり、カジュアル化が進み「ひとりラブホ」や「女子会」で利用するケースも増えた。

もはや、昭和レトロの雰囲気漂うラブホテルは過去のレガシー(遺産)と化しているが、いまなお妖艶な光を放つホテルも存在している。

「高校生の頃から純喫茶などレトロな雰囲気を味わえる場所は好きでした。昭和ラブホテルにハマったのは大学生の頃。ネットでスペースシャトル形のベッドがあるラブホの写真を見つけて衝撃を受けました」

そう語るのは、平成生まれながら昭和ラブホにハマり、その魅力をSNSで発信しているゆなな氏。フォロワー4万人超えの彼女が、ライフワーク的にほぼ単身で巡る昭和ラブホは、1960~’80年代に建てられ、大きな改装などを免れた結果、開業当時の趣を今日まで色濃く残すホテルだ。

◆昭和ラブホの魅力は…

昭和ラブホを巡り始めた当初は、女性が一人でラブホを利用することに抵抗感もあったそうだが、昭和ラブホにはそれを上回る魅力があるという。

「昭和レトロなスポットの中でも、お金や労力のかけ方がケタ違い。男女が2人で過ごすラブホには、当時の勢いがより先鋭的なかたちで表れているように思います。正直、そこまで情熱をかけなくても、ホテルの経営には関係ないと思うんですけど、コストや実際の集客効果などは度外視で、お金に糸目をつけていない。そんなある種のバカバカしさが好きですね」

夜の帳を引き裂くゴテゴテのネオンサイン、戦国時代の城や西洋の古城を模した外観、没入感が愉しめる回転ベッドやエアシューター……。確かに、日本のラブホテルは独特の進化を遂げてきた。

◆往年の特殊ベッドが現役で活躍中!

現在まで130軒以上の昭和ラブホを巡ってきたゆなな氏がイチオシするのが、青森県にある「ナポレオン」だ。特別室の3部屋は回転ベッドをはじめ、昭和ラブホを代表するベッドを3台備え、ゴージャスな内装はもはや芸術の域。

「初めて『ナポレオン』に入ったときにびっくりしたのが状態の良さです。昭和ラブホを代表する3種類のベッドが、とてもきれいな状態で集結していて、現役で稼働している。他のホテルではなかなかお目にかかれません。各部屋の名がユニークなのも魅力的。また、昭和ラブホは快適性の面で当たり外れが激しいんですが、清掃が行き届いている点もおすすめです」

広く豪華なつくりで料金設定は少々お高め。使用頻度は他の客室に比べて半分ほどと少なく、利用者の多くが大切に部屋の設備を使っているようだ。

それにしても、ゆなな氏は訪れた昭和ラブホでどんな時間を過ごしているのか? 

「何時間でも好きなだけ写真を撮って楽しんでいます。セルフポートレートも時々撮ったり、広いお風呂で一人ゆっくりもの思いに耽ったり。非日常的な空間に身を置いていると、それだけで日々のストレスフルな現実を忘れられるんです」

【インフルエンサー ゆなな氏】
ほぼ単身で北海道から沖縄まで全国の昭和ラブホテルを巡り、さまざまなメディアで魅力を発信中。著書『回転ベッドを追いかけて』(hayaoki books)が発売中。Xアカウント@yunaaaa_a

取材・文・撮影/週刊SPA!編集部
※2月6日発売の週刊SPA!特集「[昭和ラブホ]遺産巡礼」より

―[[昭和ラブホ]遺産巡礼]―


「ルームナンバー6 ルイ13世」……回転ベッドの回転スピードは約1分半で一周するのが大半だそう。タイル張りの広々としたお風呂も特徴的だ