存在感を示した上田。フィジカルは際立っていた(C)Getty Images

 5度目の優勝を狙っていた森保ジャパンアジアカップは、道半ばの8強で幕を閉じた。

 グループステージではイラクに敗れ、2勝1敗の2位で突破。ラウンド16では、バーレーンを相手に3-1で勝利したものの、迎えた準々決勝でイランに1-2の逆転負けを喫した。

【動画】上田綺世がエースの仕事!華麗な連携から沈めたインドネシア戦の2点目の映像

 期待に応える結果を残せなかった日本代表の選手たちは、果たして自分たち力を発揮できたのか。改めて個々のパフォーマンスに焦点をあて、A~Eの5段階評価で出場全選手を査定した。

【FW】
9 上田綺世 A
 コンディション的に絶好調では無かったかもしれないが、代表のエースストライカーは自分だと名乗りを上げる説得力のあるプレーだった。ポストプレーは格段に巧みになったし、フィニッシュは相変わらず強烈の一言。身体能力も年々化け物になっていく。久保との連係も東京五輪時代とは見違えるほど高まっており、今は久保が上田を強く意識しながらプレーしているのがわかる。強い存在感があった。

11 細谷真大 評価なし
 出場機会が少ないので、何とも言えない。浅野より器用だが、浅野のようなゴールは決めない印象。

18 浅野拓磨 E
 この選手の評価は、常にAかEだ。常識的なプレーが出来ず、非常識なプレーで周囲の度肝を抜く。カタールW杯はAで、アジアカップはEだった。それだけのことだ。今更あれこれ矯正しても、代表レベルではない平凡な選手に成り下がるだけ。今19歳なら矯正してもいいが、もう29歳だ。このまま本能で、野性的にプレーし続ければいいと思う。最終予選か、W杯本戦か。また最高の大舞台でゴールを決めるだろう。

25 前田大然 B
 攻撃でそれほど効いたとは言えないが、のらりくらりと前半を過ごそうとするイランに休息を与えないチョッカイ出しがとても良かった。できれば、そこからのショートカウンターで2点目を奪いたかったが、あまり周囲が呼応しなかった。イラン戦でさほど良くないなりに戦えていた日本が、前田と久保を下げた途端に一気に崩れたのは、二人の存在の大きさを如実に表していた。

ゲームをコントロールする守田には、チーム内のコミュニケーション活発化の役割も求めたい(C)Getty Images

【MF】
5 守田英正 B
 ボランチのように、インサイドハーフのように、彼の立ち位置は常にゲームの鍵を握っていた。イラン戦の先制点も見事。相手がマンツーマンで空けたスペースへ、あえての遅いパスを送り、長い距離から侵入する時間を上田に作らせた。流石のプレー。ただ、敗戦後にメディアに向けて話すことの一部は直接監督と話すべき。間接的コミュニケーションはろくなことがないので、もっと率直にしたほうがいい。すでにチーム内ではそういう立場の選手だ。

6 遠藤航 C
 評価が難しかった。対戦相手のほぼ全チームが、日本のプレスを逆手に取ろうと策を講じていたので、普段のデュエルを自重してスペースを抑えた印象だが、その反面、遠藤自身の良さがあまり出なかった気がしなくもない。連戦で疲労もあったはず。また、攻撃も司令塔タイプではないので、あまりアンカーに縛らず、冨安や守田とポジションを変えながら、やってみてもいいのではないか。

7 三笘薫 D
 本来とは程遠いパフォーマンスだった。この選手を評価するときは、コンディションと周囲の絡みがメインになる。前者は今ひとつ、後者もイラン戦は良くなかった。昨年のドイツ戦のように三笘をアイソレーションで逆サイドで立たせるのは効果的だが、特にアジアではそこにマークを固定する対策が多くなりそうだ。バーレーン戦で中山がやったハーフスペースで中継点になる働きは、今後のスタンダードにしなければいけない。伊藤もできるはずだ。

8 南野拓実 B
 ベトナム戦では日本を救うスーパーゴールを決めた。イラク戦も後半にポジションを移してから輝いた。その後の試合は久保や旗手にスタメンを譲ったが、調子は良さそうなので、久保を右サイドに出して中央で南野をもっと見たかった。鎌田がいないチームで、その役割に近いビルドアップの貢献ができるのは南野だ。彼をベンチに置いたために、ポゼッションは良くも悪くも即興的になった。

旗手のような変化を付けられる選手は貴重だ(C)Getty Images

10 堂安律 C
 右サイド起用は一長一短だ。守備時は右サイドハーフとして申し分なく働ける。しかし、攻撃時は右ウイングなので、敵陣に押し込んだときは立ち位置を変えて持ち味を出せるが、ハイプレスを受けて自陣から脱出を試みるとき、伊東&三笘のように相手を押し返すスピードがない。剥がせないので、全体がプレスの勢いをもろに受けてしまう。今のチームはウイングを外に張らせる構造なので、堂安はポジションを変えたほうが長所が出そうだ。

13 中村敬斗 C
 シュートは最高だが、それ以外は現代表では平凡なレベル。プレッシングも連係が怪しい。持っている武器は間違いないが、それ以外も伸ばさなければ、実力伯仲の試合では起用しづらい。今大会は反対側の右サイドが詰まりがちだったので、中村にこぼれる美味しいチャンスが減り、消化不良に終わった。

14 伊東純也 D
 大きな脅威になれないまま終わった。相手の対策もあるが、板倉、菅原、伊東と、右サイドは不調な選手が多く、負の連鎖に陥ってしまったかもしれない。W杯後の森保ジャパンは両ウイングをベースに立ち位置が整理されているので、タスク違いの選手が入ると難しい。今後はどうなるか。

17 旗手怜央 B
 今のチームに、いそうでいないタイプだった。ライン間で巧みに受けられて、飛び出しやサイド連係も良く、攻守の切り替えも強度が高い。他の選手は一芸に長けた個性派が多いだけに、これだけオールマイティに働ける旗手は貴重なタイプだった。怪我で最後まで出場できなかったのは残念だ。イラン戦で中村が外れて前田起用に傾いたのも、旗手欠場はその一因だったのではないか。今後も見たくなる選手だった。

20 久保建英 B
 かなり癖が強い。鎌田や南野ではなく、久保をトップ下に置いた日本代表は良くも悪くも即興的で、毛色が変わる。それだけの影響を与えるクオリティーがあるからだ。ただし、それをスタートから利用するのが妥当かどうかは要検討。プランAでは久保をサイドに置き、うまくいかない後半に久保をトップ下に置くプランBへ移すほうが、流れとしてはスムーズではないか。正直、カオス気味のプランBからプランAへ試合中に移行するのは難しいと思う。

26 佐野海舟 評価なし
出場時間が少ないので評価できない。

毎熊は今大会で評価を上げたひとりだろう(C)Getty Images

【DF】
2 菅原由勢 E
 自身の緩みから、毎熊にポジションを奪う隙を与えてしまった。伊東の不調、親善試合の好調さから対策を打たれた部分で困難はあったとしても、自身のパフォーマンスが最初のベトナム戦から良くなかった。期待を大きく下回ったのは間違いない。

3 谷口彰悟 D
 イラク戦でパワー負けし、歯が立たなかったことで序列を下げた。冨安がレベチすぎたが、ラインの上下動や競りに行く方向など、工夫はもっと出来たのではないか。追試の機会がなく、残念だった。ビルドアップも、もう少し運んで相手の中盤を引きつけたほうがいい。

4 板倉滉 D
 足首の手術を受けてから、この数か月はクラブでも戦線を離れたままアジアカップに合流。バーレーン戦の打撲も重なり、本来のパフォーマンスでは無かった。個性的な選手が集う現チームにおいて、まとめ役になれる精神的支柱であり、外しにくいのは理解できる。だが、イラン戦の状況で動けないのは、層の薄さを露呈したに等しい。

15 町田浩樹 C
 190センチの左利きという抜群のスペックはやはり貴重で、そのメリットはあった。今後も継続起用したい選手だが、背後を取られる回数がやや多いのと、インドネシア戦のロングスローにまんまとやられたのが気がかり。チームに物申せるほどの存在感を。

16 毎熊晟矢 A
 今大会で最も輝いた選手の一人だ。ポジショニングが良く、ファーストタッチで進む方向付けも絶妙。守備も概ね問題なく、バーレーン戦のロングシュートは立ち位置を取ったことを含め、圧巻の一言だった。チームが詰まったときなど、国際的な球際の激しさにはもう少し慣れる必要もあるが、クレバーな個性は大きなインパクトを残した。

19 中山雄太 B
 イラン戦はこの中山を三笘と同時に送り込めなかった点で悔いが残る。伊藤をCBに移して3バックを組み、中山を左サイドに入れれば、相手にマークされた三笘との間で中継点になってくれたと思う。バーレーン戦もそうしたプレーが随所に見られたので、この中山がベンチに座ったまま試合を終えたのは残念でならない。守備面で脆弱さがある選手であることは否定しないが、3バックに変更しつつなら、そのリスクも軽減できた。もったいない。

21 伊藤洋輝 C
 スーパーなプレーはしていないが、まずまず良かった。クロスの精度は引き続き改善が必要だが、今大会でより気になったのはゲームコントロール。落ち着かせて欲しいと皆が願うときに攻め急いだり、運べる場面で後ろへ下げる場面が目についた。「前へ出せ!」とピッチサイドからどやされるので、頭が縛られるのかもしれないが、相手やゲームを見ながらプレーしている印象がない。出来そうな選手なので、もっとピッチ内で発信を増やしたほうがいい。

22 冨安健洋 A
 ビルドアップ、球際、カバーリング、何においてもハイレベルで、立ち位置の取り方が的確かつ早い。レベチ。さらに今大会印象的なのは、リーダーシップを取る姿だった。人見知りであまり喋らない印象があったが、プレーだけでなく言葉でもチームを引っ張る意識が見えた。まだ目に馴染んではいないが、中澤佑二吉田麻也が着けた22番を志願したのは伊達ではなかった。

24 渡辺剛 評価なし
出場機会が少ないので評価できない。

鈴木のポテンシャルは確か。今後の成長に期待したい(C)Getty Images

【GK】
1 前川黛也 出場なし

12 野澤大志ブランドン 出場なし

23 鈴木彩艶 ∞
 わかっていたことだが、経験不足のため状況判断に難あり。ただし、ロングキック、間をのぞくパス、競り合いの強さなどは過去に類を見ない、マヌエル・ノイアー級の素材であることを再確認した。イラン戦は割合安定していたので、あと2試合で活躍させ、太鼓判を押したかったところ。現状はダメと烙印を押すのはあまりに惜しく、しかし、OKとも言えない。長期と短期の強化目線を、今後のスケジュールとどう合わせるか。本大会だけでは本当の意味での評価はできないため今後の可能性を考慮して∞とした。

[文:清水英斗]

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