地上波では放送することができないような過激なネタを取り上げた“脱法コント”の第2弾「インシデンツ2」(DMM TV)が配信中。前作「インシデンツ」から続投のさらば青春の光の森田哲矢、東ブクロ、伊藤健太郎、ヒコロヒー、みなみかわに加え、加藤浩次が初参加。また、数多くの芸人が出演していることで話題沸騰中。今回は伊藤健太郎が「インシデンツ2」の魅力のほか、コントと芝居の違いについてや、俳優の現場で感じるコンプライアンスへの思いを語った。

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■コントの中で自分ができる芝居をしよう

――前回に続いての出演ですが、前作の反響はありましたか?

結構、色んな方から見たよと言われました。この間なんて、まだ学生の子たちからも言われて。「お母さんは見てもいいって言ったの?」って聞き返しちゃうくらい驚きました。それくらい幅広い年代の方から反応をいただけたのはありがたかったです。ちなみに僕はこういうギリギリを狙ったものが好きなのですが、正直、こういう作品が求められているのか最初は半信半疑で。全く興味がないか、待ってました!みたいな感じになるのか二択だと思ったら後者の方だったので、それが一番うれしかったです。

――実際に参加されていかがでしたか?

2に呼んでもらえて素直にうれしかったです。現場では、僕は俳優ということを意識して、コントだからと意識的に芝居を変えることはなかったです。僕が芸人さんのようにコントだから…と演技をしたら絶対に上手くできないし、素人丸出しになるので。コメディに参加させていただいているという感覚で、自分ができる芝居をしようと思って参加しました。

――やはりコントとお芝居は違いますか?

全然違います。中でも違うと感じるのは、間です。間は言葉で表現するのは難しいのですが、0.1秒遅れてもニュアンスが変わるんですよ。なので、ここしかあり得ないという部分で皆さんがボケたりツッコんだりしているのが本当に見ていて気持ちいい。そしてそれを間近で繰り広げられる…。笑いしかなかったです。あとアドリブもコントならではだと思います。台本では終わっているのに、コントを続けることでより面白くなっていく。刺激的で楽しい現場でした。

――そういう現場だと瞬発力が必要となってきますね。

本番中は誰が言ってもいいように、常に全員に対してアンテナを張っていました。なので撮影が終わって家に帰るとめちゃくちゃ疲れていて(笑)。まぁそれも気持ちよかったです。

――アドリブが多かったのは誰でしたか?

やっぱり森田さんかな? あとみなみかわさんもです。第1話で僕らのチーム名を決めるシーンがあるんですが、そのときのみなみかわさんは毎回訳の分からないことばかり言ってきて。みなみかわさんはコント内のキャラクターも変なのでそれに加えて…みたいな感じで、僕は笑いを堪えるので精一杯でした。

――加藤さんをはじめとした反社グループのコントは芝居のような重厚感が漂っていましたが…。

森田さんチームとはまた違った、キャラクターを重視したコントになっていました。そして加藤さんたちを見て改めて感じたのは、芸人さんはお芝居においてもすごく長けていらっしゃるなと。色んなキャラになりきるということは、結局コントもお芝居も変わらないんですよ。加藤さんは本当に反社の人に見えましたから(笑)。そうやってキャラになりきっている中でテンポや即興で笑わせてくる…。本当にすごかったです。

――伊藤さんといえば内村光良さんが座長のコント番組「LIFE!」(NHK総合)にも出演されていましたが、コントは一緒にやる方によって違ったりするのですか?

全然違いますね。内村さんは僕の勝手な感覚ですが、すごく役者に近い考え方でコントを作っていく方で、森田さん、加藤さんをはじめ、今回の芸人さんとはまた違う。色んな方と一緒にモノを作れるのは本当に面白いし、貴重だと改めて感じました。ここでいただいたヒントを今後、様々な場所で生かせたらと思っています。

■規制の中でできる限りのことをして楽しませるのも大事

――前回に比べて今回もものすごく伏線が張られた内容になっていましたが。

僕が考える「インシデンツ」の魅力って伏線なんですよ。今回も第1話であったことが後半でつながったり…。「これってそういうこと?」みたいなのが、前回よりも多い気がします。あと今回はドラマ色が強くなっているので、それぞれのコントも楽しめますが、全体を見終わったときに「インシデンツ2」自体が大きな1本のコントだと感じられるはず。再度、また最初からみるとまた違った面白さがあると思います。

――伊藤さんがお気に入りのコントを1本教えてください!

第1話の、ログハウスを10時間で建てられるかという定点の映像の中で東ブクロさんが色々やってしまうコント「見られてる男」ですかね。台本で読んでいたのですが、映像はそれを越えてきて…。もう最高です。他の現場では絶対できないコントなので、お腹を抱えて笑っちゃいました。ブクロさんが本当に振り切っていてカッコいいんですよ。そして森田さんのツッコミも絶妙で。いいものを見させていただきました

――今回も地上波のコントでは放送することができないコントばかりでしたが、やっていてもこれはこの番組ならではと感じることは多かったですか?

全てですね。これは良い悪いは別なんですが、ほかの映画やドラマをやらせていただくと、どうしても「このシーンどうします?」というような相談が現場で必ず生まれるんですよ。例えば反社の人たちが車の後部座席に乗るときにシートベルトをするかどうか…とか。それは仕方がないことなのですが、そういうことで作品のリアルさが損なわれているところもあるのかな?と思ったり。なので今回みたいに自由にのびのびできるというのは、楽しくもありました。

とはいえ、影響力など考えると世界観だけを大事にしていくのも違うので…。例えば年間100本映画が作られるとしたら、10~20本くらいは自由に作れたらうれしいなと作り手の立場で思ったりもします。

規制された中で自分たちができる限りのことをして楽しませるのも大事なことだと思うので、色々相談しながら、自分たちが面白いと思うものを模索していきたいと改めて感じました。

■「ツイていない」時のモチベーションの上げ方

――今回は“アウトローな6人が贈る刺激的な脱法コント”とのことですが、アウトローと言われることに関していかがですか?

かなり光栄でした。やはり昔から映画など見て少し憧れがあったりするので。男くさい感じってカッコいいなと思います。

――とくに今回、カッコいいなと思った方はいますか?

皆さんカッコいいし、気さくで優しくて楽しかったですが、東ブクロさんかな。ブクロさんは、セリフの量がかなり多く、大事な役割を担っていたので大変そうでした。常に台本と向き合っていて、きっと自分のセリフを覚えるというより、その先や全体を理解しようとされていたんだと思います。その姿勢がカッコいい。あと寡黙に見えるのですが、話しかけたらすごく気さくに話してくださって、そのギャップにもやられてしまいました(笑)。

――ちなみに伊藤さんは「ツイていない男」というコントに出ていましたが、ツイていないと思ったりしますか?

基本、僕はツイていると思います。あとツイていないと感じるときは、“今じゃないんだよ”と思うようにしています。タイミングとして合わなかったということは、またどこかでタイミングが合うときがくるというか…。生きていれば上手くいかないことはいっぱいあるし、いつか報われると思うんですよね。ありきたりの言葉ですが、やっぱり失敗から学べることって多いと思っているので。いいことを含めどんなことが起きても、吸収できることは吸収して次に生かしていく、それが大事な気がします。

――今回、「インシデンツ2」で芸人さんとコントをしたこともまた次に生きてくるんですね。

だと信じています。現場でも常に皆さんから学ぼうとしていました。でも、ただ単に楽しい現場になっちゃったんですけど(笑)。そんな楽しい作品をぜひ見ていただきたいです。

取材・文=玉置晴子

撮影=大石隼土

/撮影=大石隼土