有罪になったイタリアン・マフィアの構成員を対象した分析によって、暴力がまるで伝染的のように広がることが明らかになった。
その研究では、単独で暴力的な犯罪を犯した者に比べて、共犯者がいた者は、将来的に同じような暴力的犯罪を繰り返す可能性がはるかに高いことが明らかになっている。
この事実は共犯者がいることで、個人が犯罪に対して負う責任感が薄まる可能性を示唆している。
したがって、暴力的な犯罪を抑えるうえでは、社会的な力学に対処することが大切であるいう。
エクセター大学(英国)とカトリカ・デル・サクロ・クオーレ大学(イタリア)の研究チームが調べたのは、組織犯罪で有罪となったイタリア人9819人の経歴だ。
調査対象となった犯罪者の80%以上は1950~1980年生まれで、そのほとんどは男性(女性は173人のみ)。またここでの暴力・暴力的とは、暴行・殺人・強盗のいずれかの犯罪に該当するものだ。
そしてこの分析では、一度暴力を振るうと、将来的にも暴力へ駆り立てるような「持続的かつ長期的」な影響があることが明らかになっている。
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共犯者がいると再び暴力行為を繰り返す確率が上がる
だがその影響は共犯者がいた場合の方がより顕著だ。
自分一人だけで暴力的な犯罪を行なった者に比べ、他人と一緒に暴力犯罪を行った者は、将来も同じことをする可能性が3倍以上高かったからだ。
共犯者と暴力犯罪を犯すと、将来も同じような暴力犯罪を繰り返す確率が14.2%高くなる。一方、暴力の単独犯では4.9%高くなるだけだった。
また暴力犯罪の再犯を高める要因として、「初犯が暴力的なもの」「若いうちに犯罪に手を染めた」といったことも確認できたとのことだ。
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暴力は伝染病のように広がる
エクセター大学のチェチリア・メネギーニ博士は、この研究について、「マフィアの行動における他人の存在の重要性を示しています」と説明する。
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暴力は伝染病のようにマフィアの周囲に広がります。お互いに煽りあうことで、暴力を振るう動機を高めているのかもしれません。
道徳的に悪いことだとわかっていても、みんなが同じことをしていると正当化しやすくもなります
実際、共犯者のいる暴力犯罪は、単独犯によるものより4倍も多かった。
こうしたことから、何らかの犯罪組織に所属していることが、「他人とつるんでの暴力犯罪を助長するような、持続的で動的な拡散」を生み出している可能性がうかがえるという。
カトリカ・デル・サクロ・クオーレ大学のフランチェスコ・カルデローニ博士は、「マフィアは共犯に有利な社会環境を提供します」と説明する。
マフィアに入ると、それが構成員の社会的地位や自己認識に影響を与える。組織内での責任や人間関係ゆえに犯罪に手を染めねばならないような圧力も働く。
こうしたことを踏まえるなら、暴力的な犯罪をなくすには、個人を取り締まるだけでなく、その背景にある社会的な力学に対処することが大切ということになる。
この研究は『Journal of Quantitative Criminology』(2024年1月19日付)に掲載された。
References:Violence is contagious among members of Itali | EurekAlert! / Violence Spreads Like Contagion in Certain Groups - Neuroscience News / written by hiroching / edited by / parumo
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