人材ベンチャーのビースタイルが、2016年卒の新卒採用で「面接による選考」を廃止すると発表した。就活生は辞退しない限り最終選考に進むことができる。従来の採用とはかなり違う様子だが、一体どういうものなのか。

「先に進むかどうか」は就活生が判断。代表へのプレゼンも

「従来の面接手法では、学生が入社後に活躍できるかどうか知ることはできません」

同社の人事担当者はこう語る。これまで同社の新卒採用では他の企業と同様、学生に対して面接による選考を行っていた。しかし例年、選考を突破するために「マニュアル本」を読んで対策を練ってくる学生が目に付いたという。

「その結果、みんな似たような自己PRになってしまって本心が見えない。面接は相手を知る貴重な場なのに、型にハマった自己紹介に時間を割かれてしまい、本来の意味を成していないのでは、と感じていました」

2016年卒の新卒採用では、就活生はエントリー時に「同社が求める5つの学生像」のうち、どのタイプに当てはまるか自己申告する。新卒採用HPを見ると「勉強嫌いじゃないよ学生」「勝負事大好き学生」「気づいたらキャプテンだった学生」「空想でごはん食べられちゃう学生」「即戦力の自信があるよ学生」といったタイプが用意されている。

その後、タイプごとに、社員とのディスカッションやゲーム、仕事体験などを経て最終選考へと進む。選考中は学生自身が「この会社に合うのか」とその都度見極め、次に進むか判断することになる。

リクルートスーツは「禁止」、お祈りメールも「廃止」

学生が辞退しない限り選考が続くとなると、企業側の手間が大幅に増えてしまう気もするがどうなのだろうか。担当者は、

「そのあたりは織り込み済みです。最終選考では代表の前でプレゼンをしてもらうので、事前に準備をしないといけませんし、学生にもハードルは高いかと思います」

と、決して軽いノリでは進めない様子だ。

同社ではさらに、「本当に入社したい学生」に応募してもらうため、「脱就活サイト」を図る。これまで大手のナビサイトに求人ページを出していたが、5人ほどの採用枠に対して例年1000~2000のエントリーがあり、ESや集団面接で大量にふるい分けをしていた。今年は露出を減らして入り口自体を狭くするという。

就活の定番となっているリクルートスーツも「禁止」にする。「服装自由」だとリクルートスーツを着てくる学生も出てきてしまうので、あえて「禁止」だ。

就活生は何も考えずにリクルートスーツを着ていれば、1日に数社の説明会や面接に参加することができる。しかし「禁止」されてしまうと、その日は訪問企業をビースタイルだけにするか、どこかで着替えなければいけない。

1日に何社も訪問する効率重視の就活ではなく、「思いを込めた就活」をして欲しい、という狙いがあるという。服のセンスが合否に影響することはないが、選考では「どんな意図でその服を着てきたのか」も見るという。

不採用でも理由をフィードバック

就職活動で定番となっている「お祈りメール」と呼ばれる不採用通知も廃止する。最終選考まで進んだ人には、不採用であってもメールではなく、電話が対面でその旨を伝えるという。

「最終選考まで残った方には、こちらとしても思い入れがありますし、きちんと向き合わなくてはいけません」

不採用となった人に対しては、ただ不採用だったことを伝えるだけでなく、その理由についても教える。人事担当者は、

「弊社が人材会社ということもあり、これまでも不合格になった学生にはどこが評価されて、どこが足りなかったなどと説明してきました。中には理由を聞かされて泣いてしまう学生もいたのですが、弊社は不採用になってしまっても次につながればと思い、今年も覚悟を持って伝えていきます」

と話していた。2016年卒の就活は、採用開始時期の後ろ倒しなど、企業もこれまでとは違った対応が求められてくる。ビースタイルの取り組みは吉と出るだろうか。

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