メジャーでの活躍を望んでいるバウアー。しかし、彼を求める声はいまだ高まっていない。(C)KentaHARADA/CoCoKARAnext

「複数年、何億ドル、あるいは多くのエリート選手やサイ・ヤング賞投手にコミットしたくないチームは、僕とリーグ最低額で契約すれば、それに支払う金額の増分がゼロになる。勝ちたいが破産したくないチームにとって、もう1つの選択肢だ」

 異例とは言えば異例だが、なんとも“らしい”売り込みだった。

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 2月8日に元DeNAトレバー・バウアーは自身のX(旧ツイッター)を更新。歯に衣着せぬ発言をしてきた場において、今オフにパドレスからFAとなっているブレイク・スネルについて「複数年契約で何億ドルもの大金をもらうことになる。彼はそうすべきだし、それに値する」と指摘。そのうえで冒頭の提案を記した。

 バウアーがSNSで自身の去就を話題にしたのは、いまだ契約の見通しが立っていない自身の現況が関係している。昨季にDeNAで10勝4敗、防御率2.76、WHIP1.15、QS率78.95%の堂々たる成績を残し、単年契約を全う。FAとなった今オフはメジャー復帰を模索しているが、買い手が見つかっていない状況が続いている。

 ただ、バウアーのメジャー復帰に向けては自身に付きまとう「レッテル」が小さくない障壁となっている。彼には21年に私生活での知人女性への振る舞いがDV禁止規定違反と判断され、メジャーリーグ機構から324試合の長期の出場停止処分(その後、処分は194試合に短縮)を受けるなど、素行不良だった過去がある。

 すでに不起訴処分となり、当該女性とも和解が成立している。しかし、昨今の米球界は女性問題や暴力騒動を起こした選手に厳しい目を向ける傾向にあり、バウアーとの契約にも当然ながら懸念を抱かれている。

 多くの関係者がファンやスポンサー企業からのハレーションを招くリスクを避けたいと考える球団があるのは想像に難くない。実際、ニュージャージー州に拠点を構えるニュースサイトの『NJ.com』でヤンキース番を務めるランディ・ミラー記者は「騒動の前から、どこに行っても嫌われていた」と暴露。やはり過去の振る舞いが足かせとなっている感は否めないのである。

 もっとも、より多くの保証が得られるメジャー復帰を望む当人は反省の色を示してはいる。米放送局『FOX News』の番組「America’s Newsroom」で「僕は間違いを犯した。やるべきでなかったことをしていたことに同意する。その過程で多くの人を傷つけた」と猛省。生放送という緊張の場で自身の過ちを認め、出場停止処分や日本でのプレーなどを経て更生した姿をアピールした。

 それでもバウアー獲得にメジャー30球団が乗り出す機運は、春季キャンプを間近に控えた現時点で高まっていない。先述の売り込みツイートに対する米メディアの反応はどこか冷ややかだ。『Larry Brown Sports』は「おそらく彼に関してチームが懸念している問題は過去の法的問題により、彼と契約した際にファンやメディアから受けるであろう潜在的な反発だ」と指摘。そして、こうも綴っている。

「また、メジャー球団は33歳の選手と契約した後に新たな疑惑が浮上することを懸念しているかもしれない。そうしたリスクを負うつもりであれば、おそらくは、お買い得な投手を手に入れることができるだろう」

 ここまで懸念が示されるとなると、ひそかに囁かれている日本復帰の可能性がより現実味を帯びてきそうだが……。本人はどこまでメジャーにこだわりぬけるだろうか。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

バウアーが異例の売り込みもMLB復帰に無風状態 「最低年俸OK」と更生アピールも、やはり懸念される“リスク”とは?