「Laura day romance oneman tour 2024『We are who we are』」と題された今回の東名阪ツアーはワンマンツアーとしては1年9カ月ぶりとなる。昨年8月に新代田FEVERで開催した単発公演「Show,Sale,Ad-lib,Wasting」はキャパシティを大きく上回る応募で即完売。ファンの待望する声に応え、今回は各会場全て過去最大のライブハウスブッキングしたが、東京は早い段階でSoldoutし、大阪も完売。残すはファイナル名古屋公演のみとなっている。新体制での初リリース「Young life / brighter brighter」後間もないツアーでもあり、ここから始まるローラズを占う意味も大きい。

昨年はASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文が主催する音楽アワード「APPLE VINEGAR」でアルバム『roman candles|憧憬蝋燭』が特別賞を獲得。また、川谷絵音が「関ジャム 完全燃SHOW」で2023年のマイベストにローラズの「sweet vertigo」を選出するなど、作品性に知名度が追いついてきた印象がある。

だが、順風満帆でもなかったのも事実だ。5月にギターの川島健太朗が脱退、マネジメントチームが変わるなど、バンドを取り巻く環境は目まぐるしかったが、そんな中でもフェスへの出演や前出のワンマンライブに新たな体制で臨んできた。

この日のMCで井上花月(Vo)が「本当に大変な年で。メンバーや皆さんに感謝が尽きない日々です」と思わず本音を吐露していたのも頷ける。この発言のみならず、彼女の何も取り繕わず、堂々と今の心境を言葉にする清々しさと品性はボーカルスタイルに繋がるもので、ローラズの音楽を特別なものにしている大きな理由だ。

ツアー初日なので詳述や曲順の列挙は避けるが、アンコールを含め約2時間を占めていたのはツアータイトルでもある「We are who we are」――私たちは私たちであるという所信表明を演奏で具体的に提示するというスタンスだった。スタンドマイクに向かい、ほぼ直立で歌に魂を込めていく井上の姿は気持ちいいほど潔い。また、サポートメンバー3人と組み上げていくアンサンブルは隙間の多いモダンな音像で、歌が伝えたいことをより際立たせる。

特に礒本雄太(Ds)の手数を抑え、ドラムサウンドで勝負するビートは現行の世界的なポップスとも符号する。曲によっては鈴木迅(Gt)のギターがシューゲイズな音の壁を作ったり、ギター2本でフュージョン的な緩急のスリルを生み出して曲の情景を拡張したり、あくまでも楽曲主義的なライブアレンジが、まるで映画や小説の世界に没入する感覚に似た体験に誘ってくれる。

新曲2曲は対照的な肌触りで、「Young life」は彼らには珍しい少しアッパーでポストパンクなビートがフロアの空気をビビッドに塗り替えた。淡々としつつ性急なリフの上で“明日死んだとしても別に構わないけれど死んでもいいような今夜を探して歩くんだ今夜”という歌詞にヒリヒリとしたリアルが刺さる。また、音源とは違うシューゲイザーな音の壁がライブアレンジの醍醐味を届けてくれた。

一方「brighter brighter」は鈴木の揺らぐギターのトーン、一瞬の不協和音を醸すベースが、ゆったりとした大きなグルーヴに不安な色を差す。ネガティヴな感情に晒されて痛む気持ち、だからこそ変わらずに愛せる何かを求める気持ち――アンビバレンスが切な苦しく展開していく井上の歌唱に色濃く反映していた。

平熱なのに苦しい、そんな毎日にリンクする演奏に大きな拍手が贈られる。ローラズのライブは自然と聴き入ってしまうのだが、心臓の高鳴りを隣の見知らぬ人と共有している実感も確かにあるのだ。

エバーグリーンなピアノポップの佇まいを持つ「sweet vertigo」での歌メロの裏をいくギターのオブリガートのセンスの良さ、ダブルにしたボーカルワークが醸すコケットリー。“工作”っぽい楽器のアレンジ――プツプツと発されるベースのルート音、連打されるスティックの音などがおとぎ話の一場面のような世界を立ち上がらせる「憧れの街」。1曲集中で効果的なアレンジを完成させてくる彼らの演奏は、派手な演出も映像も必要としない濃度がしっかりあることを再認識した。少しシニカルでユーモアも交えた少し前のレパートリーが、4連作のEP以降と新作での肝の据わった今のローラズのメンタリティで鳴らされているせいかもしれない。

また、井上の歌が牽引していく力強さは、堂々としたハチロクリズムで展開する「waltz | ワルツ」でも強く印象に残った。しかもエレピのフレーズが入ることで、スタンダードなJポップすら想起させるのに、決してそのジャンルに回収できず、はみ出していく痛快さが見えたのも面白い。インディーポップとか、Jポップという枠組みが限りなく意味を為さない。文字にするとなんてことないのだが、それがいかに稀有なことかを目の当たりにするのがLaura day romanceのライブだ。

そんな彼らの意思が言葉として結晶している「書きたい」はリスナーにとっても大事な1曲だと、リアクションから鮮明にわかった。逃げ場もなく、誰の助けもないけれど、やめてしまうつもりはない。今をよりよく生きるために止まるつもりはない――この曲が発している祈りのようなバンドのメッセージは、エンディングに向けてスローリズムチェンジすることによって、より深く優しく私たちに届いたように思う。

ファンはもちろん、日本に海外のインディポップ/フォークのコンテキストとリンクするバンドがいることに驚きたいリスナー、個人的にはフィービー・ブリジャーズやハイムなど、先鋭的なポップミュージックで新たなスタンダードを作ったプロデューサー、ブレイク・ミルズのプロダクションが好きな人、そして日本語の可能性に触れたいリスナーなど、あらゆる方位に届くと感じる。より広いフィールドに躍り出そうなLaura day romanceを確認するには今が絶好のチャンスなのだ。

なお、このツアーの後、「SYNCHRONICITY'24」「IMPACT! XX」「ツタロックフェス2024」「hoshioto'24」などのサーキットイベントや春フェスへの出演もアナウンスされており、秋にはキャリア最長の全国6カ所にわたるワンマンツアーも決定している。

Text:石角友香 Photo:kokoro

<ツアー情報>
Laura day romance oneman tour 2024『We are who we are』

※終了分は割愛
2024年2月12日(月・休) 大阪・梅田Shangri-La
2024年2月13日(火) 愛知・名古屋THE BOTTOM LINE

■チケットはこちら:
https://w.pia.jp/t/lauradayromance24/

Laura day romance Tour 2024

10月6日(日) 北海道・札幌cube garden
10月17日(木) 愛知・名古屋THE BOTTOM LINE
10月18日(金) 大阪・BIGCAT
10月25日(金) 福岡・BEAT STATION
11月3日(日・祝) 宮城・仙台darwin
11月7日(木) 東京・Zepp Shinjuku (TOKYO)

■ファンクラブ「只今より、古参」会員限定先行:2月14日(水) 23:59まで
オフィシャルHP:
https://lauradayromance.fanpla.jp/

Laura day romance oneman tour 2024『We are who we are』2月6日 LIQUIDROOM