CRYAMYとw.o.d.。バンドの最初期からライブハウスで鎬を削ってきたまさに「盟友」と呼ぶにふさわしい両バンドが、現在進行中のCRYAMYのツアー「人、々、々、々」のクライマックスであいまみえる。かたやアメリカに渡り自分たちの今鳴らすべきロックを追求したCRYAMYと、メジャーのフィールドでさらに活躍の場を広げているw.o.d.。それぞれのやり方で突き進む2組は、4月6日・新潟GOLDEN PIGS RED STAGEと4月7日・金沢van van V4でどんな夜を作るのか。お互いの出会いからそれぞれの想いまで、カワノとサイトウタクヤの両フロントマンに熱く語り合ってもらった。

── ツアーが始まりましたが、調子はどうですか?

カワノ 調子は……体力が如実に落ちてますね(笑)。

サイトウ まあ、そうやんな。

カワノ でも、まあまあいい感じ……でもないか。でも、今回アンコールやってないんですけど、ライブ終わった後って拍手でパーってアンコールとかあるじゃないですか、普通は。だけど今回のツアーはお客さんが終わった後もずっと帰らないでじっと立ってるみたいな感じなんです。

── 新曲もやってるわけですよね。

カワノ ほぼ新曲ですね。アルバムの曲順で全部やって。

サイトウ いいね。すっごいアルバムですよね、あれ。曲順とか、アルバムとして完成してるなと思って。アルバムの曲順でやってるなら絶対いいんやろうな。俺らも前のアルバムとか、結局ライブでやるときはほとんどアルバムの曲順みたいな感じになっちゃうんだよね。

カワノ そうなんだ。あれもアナログレコーディングって言ってたもんね。

サイトウ そうそう、手法的には今回のCRYAMYとまったく一緒。

── おふたり付き合いは長いんですよね。

カワノ 会ったの、何年前だろうね。

サイトウ 5年前ぐらいかな。

カワノ 最初は下北でやったw.o.d.の企画に呼んでもらったんですよ。その前に「TOKYO CALLING」っていうサーキットかなんかで一緒だったのかな。そのときにライブを初めて観て、そのすぐ後ぐらいに企画に呼んでいただいて。それが一番最初だった。

サイトウ なんとなく同じシーンみたいなところにおったから、会うことも多かったしね。

カワノ 俺はもともとw.o.d.のミュージックビデオを観ていて、好きだったんですよ。それでサーキットイベントのときにたまたま出るハコが一緒だったので観て。でもそのときはちょろっと喋ったぐらいだったかな。そうやってぬるっとなんとなく同じになるタイミングが多かったかな。

── お互いの第一印象ってどんな感じでした?

カワノ 僕はさっき言ったようにMVを観て、なんて言うんだろうな、表現が難しいんですけど……僕、BLANKEY JET CITYが大好きなんですけど、俺らの世代のブランキーだな、みたいな。音楽的にっていうよりはトータルの印象として。だから僕にとっては同期というか友達のバンドというよりは最初は純粋に好きなバンドだったので、こうやって仲良くさせてもらっているのもいまだにちょっと不思議な気がする。

── サイトウさんはどうですか?

サイトウ 出会った頃は、下北周りにグランジというか、そういう匂いがするバンドがちょくちょくいたんですけど、その中でCRYAMYはいろいろぶっちぎってたというか。それこそサーキットの時にカワノのギターを触らせてもらって──。

カワノ そうだそうだ。

サイトウ それ見てもう「えぇ?」みたいな。

カワノ 5万円ぐらいで買ったペラペラのギターだったんです。

サイトウ でもライブで出てる音とかはすげえかっこよかったし、カワノの声は特に俺が持ってないものだから、すげえ、羨ましいとか思ったりしました。

── 確かにw.o.d.も出てきたときはグランジとか言われてましたよね。でもライブ観ると別にグランジを模倣しているわけではないというか、全然別物じゃんって思った記憶があります。当時の下北の繋がりって結構緊密なものがあったんですか?

サイトウ ROKIとかそうだね。

カワノ それこそROKIが出てたライブにw.o.d.も出てて、それを観に行ってたな。出会った頃はみんなギュッとなってたもんね。で、各々そこからそれぞれっていうのになっていったっていうのがあった。

サイトウ めちゃくちゃ他の日も遊ぶみたいな感じではないけど、ライブハウスで会うから、そこでライブやったり一緒に飲んだり喋ったりみたいな感じで、なんとなくそういう仲間っぽい感じでしたね。

── みんなで一緒に上がっていこうぜみたいな感じでもなかった?

カワノ いや、そんなこともなかった。共闘ってよりは各々頑張ってて、節目で会ってみたいなのが多かった印象かな。

サイトウ 俺は上京してわりとすぐで、地元に共通点のあるバンドがあまりいなかったんで、出てきたらいっぱいいてうれしかった。みんなもそういう感じなんかな、と勝手に思ってました。

カワノ 俺もw.o.d.が上京した年にCRYAMY結成みたいな感じだったから、その感覚はわかるかもしれない。

サイトウ 話が合うし、聴いてきた音楽とかがちょっと近かったりとかして、楽しかったですね。

── おふたりは聴いてきた音楽とか好きな音楽も重なる部分が大きいんですか?

サイトウ 夜中に酔っ払って電話してSyrup 16gの話をいっぱいしたよね(笑)。

カワノ 洋楽だったらニルヴァーナとかお互い好きだし。

── でもその後の進み方は全然違うじゃないですか。それぞれお互いの活動というのはどういうふうに見てました?

サイトウ 俺に絶対できないことなんで羨ましくもあり、でも俺は俺のできることをやろうって思ってたって感じですね。「すげえな」と思ってます。自分でいろいろやるのもそうだし、ライブのスタイルみたいなのとかも憧れるものはいっぱいあるんですけど、その憧れてるものたちの中のひとつのスタイルというか。わりとハードコアっぽい、ガッとやる感じ。

それが男としてかっこいいな、みたいな。

カワノ うれしいな。俺は逆に困ったら相談するみたいなのがあって。逆に頼っちゃうじゃないですけど、それこそアメリカで録るってなって、アナログレコーディングだってなったときも、一緒に飲んで「アナログレコーディングってどうなの?」みたいなことをメンバー3人に聞いて。もともとは好きなバンドだっていうのもあるし、歳もタクちゃんのほうがちょっと上だし、甘えちゃうみたいな感じはありますね。

── 確かにCRYAMYのやり方は憧れても真似ができないですよね。

サイトウ そうですね。もう、「そういう人」じゃないとできないというか、カワノやからできてるみたいなことは思いますね。

── でも逆にカワノさんから見てもw.o.d.みたいなスタイルはできないですよね。

カワノ もちろんできないです。だって、僕が出会ったときからすでに完成されてたというか、すごくかっこいいバンドだったんで。でもいまだに進化を続けてるし、アルバム出るたびに聴くんですけど、「こうきたか」と思うところもあるけど芯は外れていないし。やっぱり音楽が独創的だよなっていうのは本当に昔からずっと思ってる。真似できないというか、思いつかないっていうのがありますね。あと、僕が思うストレートなバンドというのでパッと思い浮かぶのが実はw.o.d.なんです。僕はわりと変なことというか、ちょっと反則技みたいなことをしちゃうんですけど、w.o.d.はずっと真っ直ぐだから。そういうバンドに本来僕はすごく憧れてたので、それを見ながら、そういうのが同世代にいるっていうのは、悔しいとかすら思わず、最高だなと思って聴いたり見たりしてますね。

── そういう意味ではw.o.d.はアニメの曲をやったりとか、どんどん活躍の場を広げている感じがしますよね。

カワノ そうそう。あの『BLEACH』の曲(「STARS」)が決まったときは俺もすげえと思った。

サイトウ あれはシンプルに世代やったりしたからね。もうなんとなく覚えてるから、全然改めて読んだりとかせずに、確か話が出た当日にデモを作って、原型ができてみたいな感じだった。すごく自然に作れたし、うれしかったですね。

── アニメの曲をやると海外からのリアクションもすごいんじゃないですか?

サイトウ そうですね。いいタイミングかなと思って初めて英語詞バージョンっていうのをやったんですけど、海外のアニメファンってすごいんで、俺らが英語詞バージョンを出す2週間前くらいに勝手に翻訳してカバーしてる人とかいて(笑)。熱量やばいなみたいな。すごかったですね。カルチャーショックというか、感動しましたね。

── w.o.d.みたいなバンドがそういうところで戦ってるっていうのはカワノさんにとっても誇りに思うところもある?

カワノ すごいですよね。かといって、いわゆるオルタナティブロックのバンドがw.o.d.に続いて、とかっていうのは逆に俺は想像できないというか。w.o.d.だからこそいけた部分だと俺は思ってるので、そこはすごく尊敬してますね。

── 先ほどカワノさんはw.o.d.を「ストレートなバンド」と形容していましたけど、サイトウさんから見てCRYAMYというバンドはどう映っていますか?

サイトウ 俺もほぼ同じことをCRYAMYに対しては思っているというか。俺からすると、CRYAMYはめちゃくちゃストレートで、正直ですごいですね。さらけ出しまくってる感じとか、たぶんないものねだりなんですけど、お互いに憧れちゃうところがあるんやろうなと思います。なんか新譜を聴いても思ったんですけど、人から「w.o.d.はこうやからいいよね」って言われたので1個うれしかったのが、「体重が乗っかってる」っていう言葉だったんですよ。そういうバンドって人によってはしんどいかもしれないし、逆に体重が乗っかってないバンドや音楽は受け入れやすかったりするかもしれないけど、そういうのはすぐに忘れていっちゃったりもすると思うんです。俺もCRYAMYに対してはめちゃくちゃ体重が乗っかってるバンドやなって思ってて。友達に布団を何枚も重ねないと寝れない人がいるんですけど──。

── ああ、その重さがいいっていう。

サイトウ そう、その重さがないと安心できへんみたいな。そういうのと同じで、必要な人には必要不可欠なバンド、音楽やろなって思います。

── w.o.d.は確かにライブを観ていると、なんか圧力みたいなものを感じますよね。

カワノ ライブが一番かっこいいですからね。

── CRYAMYもそういうところはあると思いますけど、ツアーの「DAY 0」としてやった下北沢DaisyBarのライブを観るとちょっと変わってきたのかなと思うところもあって。

カワノ そうですね。変わってきたかもな。昔はわりとひっかき回すじゃないですけど、むちゃくちゃにすることでなんとかしようというか、それこそ歌もちゃんと歌わないとか、物壊すとか、客を罵倒するとか(笑)、ひどいもんというか、当時はそうしないと恥ずかしかったのもあるし、そうしないと傷になっていかないというか、残らないものだっていうのがあったんです。でも最近はそんなこともなく、ただただどしっと構えてベストなものを、という発想にはなってきたのかなと思うんですよね。

── すごく包容力がある感じがした。優しさというのはもともとあったと思いますけど、それがちゃんと出てきてる、それをちゃんと見せるようになってきてるなって思いましたね。

カワノ  DaisyBarではセカンドの曲ばっかり、アルバムの曲順でやったんで、音楽的にはちょっとわけわかんないというか、受け取りづらいものにはなってたと思うんです。でもこっちの気持ちの乗っけ方はむしろ深まってはいるから、そのバランスなのかも。先ほどの体重の話じゃないですけど、俺はこのアルバムでその体重っていうものがひょっとしたら初めて乗ったのかなと思うし。

── あのライブは地震の被災者、日本海側に住んでいる人は無料で配信を観ることができるということもやっていましたね。しかも、申し込んできた人へのメール連絡は全部カワノさんがやったとか。

サイトウ すごいわ。

カワノ 大変だったけどね。500くらい来たのかな。でもたとえば金沢だけ、新潟だけ、地震の被害があった人だけとかにしちゃうと不平等だし……あの「地震が来ます」っていう緊急地震速報の通知音、ビーって音。あれ俺嫌いなんですけど、日本海側の地域に住んでいる人はその音を何度も聞いていると思って。住んでなくてもたまたまそのときそこにいた人もいるかな、とかいろいろ考えて、もうまどろっこしいから日本海側に面してたら全員いいよっていう状態にしたというか。

サイトウ すごい。

カワノ いろんな人が協力してくれて「いいよ」っていうのでできたなっていう。

── そういうこともやっぱり影響しました? ライブで何を言うかとか。

カワノ 影響しましたね。それこそアルバムの1曲目の歌詞の中に「津波」ってワードが出てくるんで。僕の中のモチーフとしてあった津波っていうものの意味というのがあって、今の状況では不謹慎だと言われるかもしれないけどそれは言うんですけど、歌を歌うときは。ただその僕の心情というものは説明しなくてはっていうのもあったりもしたし、あとああいうアルバムだからこそ、世の中が混乱したタイミングで届いた時にちゃんと意味のあるものになるっていう確信はあったので。自分の中でもそれをより深めて届けるためにするライブっていう位置づけでもあったかなと、今振り返ると思いますね。そこから歌っていくうちに、また変わってくるんじゃないかなと思います。それこそw.o.d.とやるのが新潟と金沢なので。

── そうですよね。またそれも意味のあるものになる感じがします。2バンドでの対バンって久しぶりですか?

カワノ 最近はなかったですね。コロナの前とかは僕らのツアーに出てもらったりとかもしたんですけど、最近はw.o.d.の制作ペースがすごく早くて、年中ツアーを回ってるみたいな状況だったので、なかなかタイミングがなくて。

サイトウ 1回、福岡でやったよね。

カワノ そうだね。福岡で、コロナ禍の最中に1回やったくらい。あの時も打ち上げとかできる状況でもないので、わりとさらっと終わっちゃった。

サイトウ あの日のライブ最高やったけどな。セットリスト急にめっちゃ変えてた。俺らが先やって、そのライブを観て。

カワノ それでもうバラードとかやってる場合じゃない、速い曲にしてえと思って。

── でもしばらくやってないとなると、CRYAMYはもちろん、w.o.d.もライブは変わってるかもしれないですね。

サイトウ 俺らのライブは今めっちゃいいです。去年の秋にワンマンでツアー回ったりもしてたんで。ライブって基本やればやるほどよくなるというか、うまくいかない日もあるんですけど、でも基本的にはよくなるんで……いいですね。

カワノ 楽しみだな。

サイトウ 俺もめっちゃ楽しみ。CRYAMYのライブ、いいんですよね。グッとくる感じがいいんですよ。基本的にはライブハウスになんで行くかっていうと、非日常を味わいに行ってるというか、何かしら感動なのか、重さでもいいし、楽しさでもいいんですけど、何かしら非日常を欲しがって行く感じが俺はあるんですよね。CRYAMYは何かしらの感動をくれるし、気持ちいい。だから超楽しみ。

── お互いのこれからについてはどんなふうに思ってます?

カワノ w.o.d.にはめっちゃ巨大化してほしいですね。ブランキーとかミッシェル(THEE MICHELLE GUN ELLEPHANT)みたいなバンドがトップにいるというのが久しく日本ではなかったと思うんで、あれから20年30年経って、w.o.d.がまたそういう存在になるんじゃないかなと俺は思ってる。それがただただ楽しみだなというか。

サイトウ いまだに変わらない夢がグラストンベリーなんで。別にドームツアーをずっと続けられるようになりたいとか、そういうのはないんですけど、かっこいい感じで、こっちもいい状態で、ライブやれたら楽しいし、なんかおもしろいよなみたいな。ミッシェルとかもあのまんまででかい規模でやってたじゃないですか。そういうのはできたらいいなと思ってますね。

── CRYAMYに対しては?

サイトウ 単純にまずはカワノが元気そうでよかった(笑)。なんか会うのが久々すぎてちょっと緊張もしたんですけど、それが普通に友達としてよかったなっていうのがあるし、それはたぶん今後もそうで、同世代のバンドがただ元気にやってくれてるとこっちの励ましにもなるから。アルバム出てツアー回ってるのが今は単純にうれしいです。で、アルバム聴いて思ったんですけど、やっぱり好きなことをやっててほしいなって思いますね。「好きなことやっててほしいな」っていうのも、なんか1個の型にはめちゃうようなセリフではあるんですけど、そうじゃなくて、ほんまに元気でやってほしい。楽しそうにやっててほしい。

Text:小川智宏 Photo:小境勝巳

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<公演情報>
CRYAMY WORLD TOUR 2024 『人、々、々、々』 ※終了公演は割愛
2月10日(土 )愛知・名古屋CLUB UPSET w/pavilion、突然少年
2月11日(日) 京都・磔磔 w/Helsinki Lambda Club、Hammer Head Shark
2月24日(土) 広島・4.14 w/カワノ(弾き語り)
2月25日(日) 岡山・CRAZYMAMA 2nd Room w/天国注射
3月2日(土) 福岡・LIVEHOUSE CB w/LOSTAGE
3月3日(日) 熊本・Django w/LOSTAGE
3月15日(金) 兵庫・神戸太陽と虎 w/Analogfish、KING BROTHERS
3月16日(土) 香川・高松TOONICE w/Analogfish
3月20日(水・祝 )福島・club SONIC iwaki w/時速36km
4月6日(土) 新潟・GOLDEN PIGS RED STAGE w/w.o.d.
4月7日(日) 石川・金沢van van V4 w/w.o.d.
4月14日(日) 北海道・札幌SPiCE w/時速36km
料金:前売4,000円/当日4,500円
※オールスタンディング、入場時ドリンク代が必要
チケット情報:https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2346707

CRYAMY特別単独公演『CRYAMYとわたし』
6月16日(日) 東京・日比谷野外大音楽堂
料金:全席指定2,500円
チケット情報:https://w.pia.jp/t/cryamy-yaon/

<リリース情報>
CRYAMY 2nd フルアルバム『世界/WORLD』
発売中
価格:CD 3,000円、カセット 3,500円(税別)

■収録曲
1.THE WORLD
2.光倶楽部
3.注射じゃ治せない
4.豚
5.葬唱
6.待月
7.街月
8.ウソでも「ウン」て言いなよね
9.天国
10.人々よ
11.世界

CRYAMY 2nd ALBUM Digest Movie

関連リンク

■CRYAMY公式サイト:http://cryamy.tokyo/
■w.o.d.公式サイト:https://www.wodband.com/

左から) サイトウタクヤ(w.o.d )、カワノ(CRYAMY)