巧みな色使いで見る人の食欲を刺激する食品サンプル。昨今、和洋中問わず、職人達が様々な料理に模したサンプルを作り上げている。

ネット上では、「世界一臭い食べ物」を完全再現した食品サンプルが話題を呼んでいて…。

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■「世界一臭い食べ物」が食品サンプルに

ことの発端は、大阪の食品サンプルメーカー「いわさき」の公式X(旧:ツイッター)のポスト。「世界初!!」と題した投稿には、「シュールストレミング」の食品サンプルの作り方が写真と共に記載されている。

シュールストレミング」は主にスウェーデンで生産されるニシンを塩漬けにした缶詰。頭とワタを除いたニシンを薄い塩水に漬け、3ヶ月ほど発酵させるのだが、屋外で食べるのを推奨されるほど強い発酵臭があるため「世界一臭い食べ物」と称される。

いわさきのポストを見ると、何と本物の「シュールストレミング」の缶詰を使い、ビニールエプロンに手袋、防毒マスクと万全の防御を固めて作っているのだ。

 

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■製作工程に衝撃走る…

シュールストレミング

シュールストレミング

作り方としては、水の中に缶を沈め中のガスを抜き、魚の身を水とエタノールで洗って臭いを取り除き、シリコンで型を作る。シリコンの型にシュールストレミング色に着色したビニール樹脂を流してオーブンで焼き、型から成形を取り出す。

シュールストレミング

シュールストレミング

写真を見ながらエアブラシや筆で着色し、缶に詰め、汁部分の液を注いで固めて完成だ。正直、本物と全く区別がつかない…。

シュールストレミング

シュールストレミング

「世界一臭い食べ物」を完全再現したいわさきの取り組みは、ネット上で話題に。「世界一過酷な製法」「なんて無茶をするんだ…」「命がけの製作工程に震えます」「最初の型採りの段階でハードル高そう」など、驚きの声が多数寄せられている。

なぜ、「シュールストレミング」を食品サンプルにしたのか。株式会社いわさきに取材したところ、何とも熱すぎる開発秘話が明らかになったのだ…。

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■開発のきっかけは…

いわさきの担当者によれば、件のサンプルは、昨年10月12日から今年4月6日まで開催中の醸造科学科展「JOZOO -醸造と発酵のせかい-」に展示するため作ったものだという。

開発のきっかけに関して、担当者は、「(イベントを主催する)東京農業大学のご担当者様から『シュールストレミングの展示も予定しているが、滅菌をしないため長期間の展示中に発酵が進んで缶が膨張して破裂してしまう可能性があって展示が難しい状況となっている。そのため食品サンプルが作れないか、もしくは缶のみの展示にするか検討している』とのお話がありました」と説明する。

強烈な臭いや密封状態の缶の中で発酵が進むため、取り扱いの難しい食材であるという懸念はあったものの、未知のジャンルに挑戦する思いは強く、社内でゴーサインが出たそう。食品サンプルに臭いはないが、見る人の嗅覚に訴えかけなければならない。

そのため、細部までこだわって作ったようだ。担当者は、「発酵が進むと魚の形が崩れてくるとのことでしたが、届いた見本は綺麗に魚の姿も残っていたのでこれでは見た目で匂いが伝わらないと感じました。そこで、エタノールに浸した後、水で少しふやけさせ発酵が進んでいる状態を表現しました。実際の状態を再現するだけでなく『食べてみたさ』も感じていただけるよう、皮側だけでなく身も見せるように色々な形で型入れし、着色や盛り付けを工夫して食品サンプルにしました」と話す。

たしかに、魚のふやけ具合が完璧に再現されている…。

 

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■「世界一の臭さ」に対する反応

制作過程の中で、本物のシュールストレミングに触れている。世界一の臭さは気にならなかったのだろうか。

こちらの疑問をぶつけたところ、担当者からは「『世界一臭い』という前情報からどれくらい臭いのだろう…という期待値も高かったのですが、イメージよりは落ち着いていた感じです。おそらく鮮度がよかったのだと思います。開けた時はドブのような臭いと魚の発酵した臭いが混じり合っていましたが、2日目は不思議とチーズのような良い発酵臭に変わっていました」という何ともポジティブな回答が寄せられている。

とはいえ、これまで多くの食品サンプルを手がけてきた同社でも、今回の製作難易度は高かったようだ。担当者は、「『シュールストレミング』の開封方法や取り扱いについては、自分たちで調べるだけではなく、東京農業大学様からもアドバイスをいただきました。しっかり準備とイメージトレーニングをした上で臨みましたが、それでも開封するにはこれまで製作してきた食品サンプルのどれよりも相当の覚悟と細心の注意が必要でした」と振り返っている。

取材の最後に、担当者から「Xでのポストをたくさんの方にご覧いただいたことで、食品サンプルだけではなく、発酵やシュールストレミング、開催中の企画展にもご興味をもっていただければと思いますので嬉しく感じます」という笑顔のコメントが得られたのが印象的だった。

苦労の末作り上げた食品サンプルは現在開催中の展示イベントで見られるので、ぜひ足を運んでほしい。

シュールストレミング

【展示イベント】

醸造科学科展「JOZOO -醸造と発酵のせかい-」

展示場所:東京農業大学「食と農」の博物館 東京都世田谷区上用賀2-4-28

※詳細は公式ホームページから

 

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■執筆者プロフィール

斎藤聡人:1991年生まれ。『Sirabee』編集部記者。

某週刊誌の芸能記者を経て現職に。旧ジャニーズネタなど、芸能ニュースを中心に様々なジャンルを取材する。

チェーン店からローカル店まで様々な飲食店をめぐり、グルメ記事も手がける。仕事も兼ねた毎日のドラマ鑑賞が日課。

今期の推しは、『正直不動産2』(NHK)、『院内警察』(フジテレビ系)、『不適切にもほどがある!』(TBS系)。

“世界一臭い食べ物”が食品サンプルに、一体なぜ… 「命がけの製作工程」驚きの声続出