地球から最も遠くに到達した人工物であり、宇宙に旅立ってから47年目を迎えるNASAの探査機「ボイジャー1号」だが、前回お伝えしたように、2023年12月に異変が生じ、意味不明な言葉をつぶやくようになってしまった。
その復旧作業はかなり難航しているようで、 NASAのエンジニアチームは、ボイジャー1号をどうにか正気に戻そうと必死に取り組んでいるが、「復旧すれば奇跡」と状況の深刻さを伝えている。
いよいよ限界なのだろうか?これが永遠のお別れとなってしまうのだろうか?宇宙に手を合わせて回復を祈るばかりだ。
老体に鞭打ちながらがんばっているボイジャー1号が正気を失った原因は、機体に搭載された3機のコンピューターの1つ、「フライト・データ・システム(FDS)」の不具合だと考えられている。
FDSの役割は、センサーが検出した情報を集めて、機体の状態などをチェックすることだ。こうしたデータは、「遠隔測定変調ユニット」によって地球に送信されるが、FDSはこれとうまく通信できていないのだ。
NASAのチームは、システムをリセットして復旧を試みたが、問題は解決せず、異変発生から2ヶ月が経過しようというのに、ボイジャー1号はぶつぶつと何やら呟き続けている。
1977年9月5日に宇宙に旅立っていった打ち上げられたボイジャー1号は、2024年に47年目を迎えた。トラブルに見舞われたのもこれが初めてではない。
2022年5月、1号は突然、意味不明な姿勢制御データを送信し始めた。
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地球にいるチームは大混乱に陥ったが、機体に搭載されている別のコンピューター経由でデータを送信することで、どうにか問題を解決した。
だがその3ヶ月の間に、ボイジャー1号は1億6000万kmも移動したのだから、本当にがんばってくれている。
また双子の兄弟であるボイジャー2号も、迷子になったり、音信不通になったりと、あちこちガタがきていることがうかがえる。
これでお別れなのか?復旧すれば奇跡
状況は深刻なようで、ボイジャー計画のプロジェクトマネージャー、スザンヌ・ドッド氏は、「復旧できれば奇跡。ですが、私たちはまだあきらめていません」と語っている。
「まだやれることはあります。ですが、私がプロジェクト・マネージャーになって以来、最も深刻な問題でしょうね」
240億kmの彼方を時速6万kmで飛び続けるボイジャー1号は、地球からもっとも遠く離れた人工物で、すでに太陽系にすらいない。
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このような状況では、その距離が何より厄介なものになる。
というのも、地球から送信された命令がボイジャー1号に届くまでには22.5時間かかり、その返事が地球に届くのも同じだけ時間がかかるからだ。
私たちはボイジャー1号に語りかけ、向こうもそれを聞いています。ですが地球との間のとんでもない距離のため、進捗は遅々としています
A Voyager update: Engineers are still working to resolve a data issue on Voyager 1. We can talk to the spacecraft, and it can hear us, but it's a slow process given the spacecraft's incredible distance from Earth.
— NASA JPL (@NASAJPL) February 6, 2024
We’ll keep you informed on its status. 🤞 pic.twitter.com/qSxG0au1Nn
いずれにせよ、ボイジャー計画は50年近く前のもので、主な目的はすでに達成されている。ボイジャー1号と2号がいまだに頑張ってくれているのは、本当にプレゼントのようなものなのだ。
もしかしたらこれが最後の別れになるかもしれないが、まだ希望はある。
例え彼らが宇宙を漂うだけの存在となっても、そのボディには、地球の生命や文化の存在を伝える音や画像が収めた「ゴールデンレコード」が搭載されている。
もしかしたら地球外知的生命体や未来の人類が見つけて解読し、ボイジャーたちを復活させてくれるかもしれない。
追記:(2024/02/10)本文を一部訂正して再送します。
References:Humanity’s most distant space probe jeopardized by computer glitch | Ars Technica / written by hiroching / edited by / parumo
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