法制審議会の家族法部会は1月30日、離婚後も父母双方が子どもの親権を持つ「共同親権」を可能にする民法改正要綱案を委員の賛成多数で取りまとめました。

報道などによると、2月15日の法制審議会総会で要綱を決定し、法務大臣への答申を経て、政府が今国会に民法改正案を提出することになるとのことです。

弁護士ドットコムでは、会員弁護士に、要綱案についての賛否や意見​​などを尋ねるアンケートを実施し、251人から回答が寄せられました(実施期間:2月2日2月6日)。

要綱案について賛否を尋ねたところ、63.7%が「反対」、16.3%が「どちらかといえば反対」と回答し、「どちらかといえば賛成」、「賛成」と回答した17.6%を大きく上回りました。5回にわけて、弁護士から寄せられたコメント全文を紹介します。

●賛成・反対の理由

要綱案への賛否の理由を尋ねたところ、以下の声が寄せられました。

【反対派の意見】「紛争が発生・拡大する」「家裁の負担が増加する」

「家裁の負担が増加する」

「家裁に判断できるだけの能力はない」

「DVを行った配偶者に親権を行使させるのは言語道断だと思う。現政権は統一教会という極端な家族観を持った宗教団体の影響を強く受けている議員によって構成されているため、元信者の連れ戻しに利用される危険がある」

「離婚の成否や親権の帰趨について争いがあると紛争の終了までに数年かかることが多い。共同親権が選択肢に入ると、一度単独親権で落ち着いても、再度紛争の蒸し返しが可能となってしまうところ、そのような事態は子によって良い影響をもたらすとは思えない」

「離婚後も子どもの親として協力できる関係であれば共同親権とする必要はない。逆に協力関係が築けていない場合、未成年子の重要行為に関し紛争が発生・拡大する」

「共同は協働が前提と思うが、それができないと思われるから」

「DV被害者はメンタルで疲弊しており、連絡をとりあうこと自体が症状の悪化になる。問題なく面会交流等が行われている場合は、今更双方親権の必要はない。共同で親権行使できない場合、子の通学先等が困難に直面する」

「裁判所が適切に共同親権か単独親権かを判断すること、DVが認められるか等を判断することはできない。夫婦の仲がこじれたから離婚するのであり、その状況下において共同親権行使するだけの協力関係を夫婦が構築できるとは期待できない」

「離婚後も良好な関係を保てる元夫婦は、親権がなくても様々なことを共同できるから。良好な関係を保てないからこそ、法的権利で縛ったり、行動を阻害する。共同親権を必要と主張している側の必要性の理由は、親権の有無とは全く関係のないこと」

「共同親権はトラブルのもと。元夫婦間の紛争状態が長く続き、子どものためにもならない」

「離婚する家庭は共同で親権を行使できない場合が多いのではないだろうか」

「精神的DVに対する対応ができていない。証明が困難。夫婦の一方が離婚後まで支配下に置かれる恐れがある」

「裁判所のキャパオーバーが容易に想定されるとともに、調査官調査にも限界があり、離婚後にも火種を残す可能性が高くなることから」

「実際に親権をめぐり深刻な争いがある事案を担当してきた立場からすると、片方の親が共同親権を望まない場合にうまく行くとは思われない。最長で18年にも及ぶ紛争の長期化、複雑化するおそれがある」

「経験則上、DV加害者ほど、離婚後も関わりをもちたいために共同親権を主張する。被害者の救済にならない」

「子どもの進路を阻害するケースが増えると思われるし、そもそもこれを恐れて離婚に踏み切れない人が増加しDVモラハラを助長するとしか思えない」

「共同親権を必要とする立法事実がない。共同親権にすると、離婚後も争いが残る」

「DV(心理的暴力含む)は証明が難しい面があり、原則共同だとDV被害者でも単独親権としてもらえず、いつまでも被害親子が加害者から逃れられないリスクがあるから。また、立法事実とされる面会交流や養育費の支払は、共同親権導入では促進されない。面会交流の支援機関の充実や養育費の回収システムの構築などによって促進されるものであるから。さらに、現時点でパンク状態の家庭裁判所に、共同親権下で進学や入院等で父母の見解が対立した場合の調整まで担う能力はない」

「現状でも父母が円満な関係があれば実質的には共同親権的な扱いはできている。父母の関係が悪い場合には単独親権でないと機能しない。共同親権を原則とするかのような法制化は誤っている」

「離婚後の親権争いが生じた場合に子が板挟みになる。親権を円満に行使できるような関係が築けるカップルは基本的に離婚しない」

「共同親権を認めるべきではない」

「子どもの進学や入院・手術等で親権者の一方が同意しない場合、子どもの将来に不利益になってしまう」

「親権者をめぐる紛争が監護権者をめぐる紛争に名称が変わるだけで何も変わらない」

「本案では、親権が子どもの重要事項に対する決定権という意味で用いられている。監護親は、転居や進学等のたびに非監護親に逐一同意を取らなければならず、非監護親に事実上の拒否権を与えることになる。ただでさえ非監護親は父親になることが多く、権力勾配差が激しいのに、さらに悲観が親に力を与え、監護親を虐ませることになる」

「離婚後に平和に話し合いができる夫婦は少なく、調停や裁判に至っている場合はなおさらである。離婚後に平和に共同親権を行使し合える夫婦は極めて限られており、親権問題が複雑化深刻化するだけである。現状の家裁の対応を見ていると、共同親権を定めようとする調停委員会や裁判官はいないと思うし、定めたとしても何の問題解決にはならないと思う。家裁のノウハウや人的物的資源が足りない状況が深刻化すると思う」

「共同親権導入の目的にずれがあるのではと感じるので」

いたずらに混乱を招くだけ」

「夫側に問題がある場合であっても共同親権を主張し、紛争が長期化することが予想される」

「子どもに不利益になるとしか考えられない」

「①現状では、離婚当事者は信頼関係を喪失していることが多く、こうした父母が共同して適時適切な意思決定を行うことは困難、むしろ、居所や進学等について、非監護者が監護者の意思決定を不当に妨害するおそれが強い、②共同して意思決定できる関係が維持できていれば、現行法下でも親権を実質的に共同して行使することは可能、③単独親権か共同親権かは、養育費や面会交流とは全く関係がない(つまり立法事実がない)、④法改正自体やその後の家裁の負担増などのコストが大きい」

「まず、別居親の希望する面会交流の実現という目的を達成する手段は共同親権ではない。また、家庭裁判所の人的リソースが圧倒的に不足している中、子の養育に関する決定事項に家裁の積極的かつスピード感のある関与を望むのは困難である」

「家裁が精神的DVに気づかず共同親権となる可能性が大」

「父母が別居した以降に親権の共同行使が子の福祉にかなうためには、父母間の合意形成が可能な程度に葛藤が低いことが必要不可欠だが、高葛藤父母にも共同行使を家裁が強制しうる制度は、子の福祉を明らかに害する」

「不毛な紛争が増加し、子の利益のためにならない。共同親権に賛成している人というのは、言い分を聞くと、実際に賛成しているのは「共同養育」だと思う。 共同養育は、親権がなくても、協力できる関係性であればできるし実際にしている人はいる。 そういうことができない関係性の父母に、「共同親権」をてこに「共同養育」を強制しようという発想は、実際にはうまくいくとは思えない。共同の強制の弊害は、オーストラリアイギリスなど諸外国の例を見ても明らか。共同親権について、弁護士でさえ「親子が会えないのはかわいそう」というように、面会(監護)と親権を混同している人がかなりいる。面会は、非親権者であっても家裁手続で解決する方法が今現実にある。

共同親権というのは、子に関する重要事項に関する意思決定を父母共同でないとできないということである。 要綱をみると、監護教育に関することは単独でできる、となっているが、それは同居親のみならず別居親でもできるのだから、双方が単独でやって、ぶつかることがある。例えば受験先の決定を父母がそれぞれ違う学校にして譲らなかったらどうなるのだろうか? アレルギー治療の進め方について、それぞれが異なる考え方をして異なる治療方法を申し込んだらどうなるのだろうか? 子どもの体調が微妙な時、その日の水泳の授業に参加させる/参加させない で意見が分かれたらどうなるのだろうか? 父母双方の意見の一致があるかどうかを、学校や病院は確認しなくてはならないのか? 確認を怠ったとして損害賠償を起こされる可能性があるなら、父母そろってのサインを何かと要求されることになるだろう。そんなことは離婚後の父母にはできないことも多く、元配偶者に連絡をとるのを避けたいがために、子に関する重要な事項をおよそ決定さえもできないことになり、子が教育や医療についての大事な機会を逃すこともあり得る。

一番気になるのは、父母が関係が悪くなり、別居したい側が子連れで別居した場合、それが共同親権侵害として違法になるかどうかである。違法になるのであれば、弁護士は、「調停は同居しながらでは無理だから、まずは別居してから調停を起こすとよい。お子さんは相手に任せられないというなら子連れで別居すればよい」という助言をしていいのか。違法行為の教唆として弁護士が訴えられかねない。DV被害相談を聴いている行政や支援団体についても同様の問題が起きる。「急迫の事情」がある場合には子連れ別居しても共同親権侵害にはならない、というように要綱は読めるが、あまりに狭すぎる。1か月前にひどい暴言をはかれ、夫の出張のタイミングをみはからって子連れで別居した、というような場合には「急迫の事情」といえるのだろうか? 保護命令の対象になるような暴力がなくても「急迫の事情」といえるのだろうか? 要綱の「急迫の事情」という文言はあまりに問題が大きい。

家裁の人的物的体制も、現状でも足りていないのに、新たな紛争類型が激増するのに対応できるはずがない。たとえば離婚後の子の氏の変更だって、今は親権者だけの判断でできて、家裁が機械的に許可する審判を下すが、これについても父母の同意がなければできなくなってしまう。そんなことを家裁がどのように判断するのか?離婚後に連れ子再婚しようというときも、再婚相手と子の養子縁組について、実の父母共同の合意が必要になる。すんなり合意を得られないこともあるだろう。その都度家裁に持ち込むなどというのは当事者にも現実的ではなく負荷が大きすぎるし、持ち込まれる家裁も対応しきれないだろう。およそ紛争解決にならず、子の利益にならない。絶対に反対である」

「両親が離婚に至る事情や子との関わり方などは事案によってかなり開きがある。父が子に一切関わらないまま離婚しているようなケースの場合、共同親権は母子側にとって全く無理難題であるが、こういったケースに対応できる内容にはなっていない」

「共同親権は離婚後監護している家族への負担にしかならない」

「子の利益にならないと考えるから」

「日本社会においては、ジェンダー格差が非常に大きく、真の意思から共同親権を選択できる状況にないと考えていること、共同親権にすることによって、離婚後も子どもが両親の争いに巻き込まれ続ける可能性が高まることから」

「共同親権は監護者による監護を行う上で不便なだけでメリットはほとんどなく、デメリットがはるかに上回ると思います。葛藤の少ない夫婦間では、共同親権など定めなくても共同養育をしています」

「共同親権は深刻なトラブルを増加させるおそれが大きい」

「共同親権の土壌ができていない。権利のみ主張する配偶者への対応なども検討されていない」

「共同親権にした場合DVや力関係の不変等で面会交流や養育費の支払いで不合理な結果が生じるおそれを払拭できない」

「共同親権について、原則が定められていないため、共同親権を望む側とそうでない側の対立が激化し、紛争が長期化するおそれがある。財産分与について原則2分の1と明記されたことで、片方の配偶者に収入や資産が多く家事育児も主に担当するなど2分の1が不相当と思われる事案が増えている中で、妥当な解決がさらに困難になる。また、別居親の父母を交えた面会を感情的な理由だけで拒む例も多いが、第三者との面会交流について「子の利益のため特に必要があると認めるとき」と明記されたことで、そのような傾向に拍車がかかり、交渉や調停による解決が困難になるおそれがある。他方で財産分与や婚姻費用・養育費については規律が強化されていて、非監護親側にとって納得を得ながら解決することが難しくなると懸念される」

「弁護士に依頼が来る離婚案件は、基本的に当事者間での意思疎通が不可能となっているために、代理人を立てるものである。家庭裁判所に行くケースも同様であると考えられる。親権の有無にかかわりなく、現行法でも面会交流を通じて子どもを共に見守り、育てていくことは可能だったのであり、「親権」の有無が何に関わるかというと主に子の学校への入学など、法的手続(法定代理人としての権利行使)が絡む場合である。この点、共同親権になってしまうと、そもそも方針等について話合いができない夫婦間の子が、夫または妻の「相手方への敵愾心」や「意地」の犠牲となるケースが相当発生するのではないかと危惧します。子に会いたいとか、共同で育てたいという実質面は、「面会交流」の強化(間接強制などによる強制よりも子の連れ去り等を危惧することなく安心して子どもを面会させられる環境の整備・支援機関や支援する専門家の育成など)と、「養育費」支払(財産開示・勤務先開示・支払が滞っている場合の公的資金による立替や当事者の執行以外による国の制度としての取立など)の強化の双方で図っていくべきことであろうと思う」

「夫のDVによる離婚では、裁判所の判断を経た親権者(元妻)による子の養育が望ましいので」

「共同親権が原則になれば夫婦の紛争継続によって子が不利益を被る可能性が高く、DV被害が継続する危険もある。面会交流など別居親と子の交流が目的なのであれば、家裁が面会交流支援をする、支援団体に国が予算を付ける、親権変更を適切に行うなどで対応するべき」

「共同親権制度は、DV配偶者からの支配の手段となるおそれがあり、リスクについての議論は十分に尽くされていない」

「共同親権は、日本の社会では離婚後も両親の紛争に子が巻き込まれる可能性が高く、子の福祉を害する」

「弊害が大きいし、そもそも子どもと面会できない状況の解消の手段になっていない」

「世界的にもジェンダー平等指数の低い日本で共同親権を認めれば、離婚後に公平な父母の協議を期待することはできない。また、家庭裁判所は機能不全状態であり、共同親権を認めるかどうか等の審理を適切に行うことは期待できない」

「単独親権が認められなかった場合に、監護親や子が非監護親から不当な干渉を受ける恐れがあるため」

「選択的と言いながら、要綱案は「共同親権」が原則である書きぶりである。共同親権という言葉が独り歩きしているが、現状は海外と同様「共同監護」が実践されている。あえて親の権利を強める「共同親権」という制度が必要とされる立法事実が無く、子どもの権利の側面が無視されている。実際に、離婚後の子どもの置かれている状況、問題点などの調査も足りておらず、拙速である。DVや虐待事案について、裁判所の保護命令が慎重であることを考えると、単独親権の判断について過度な期待は禁物である。モラルハラスメントの事案も重大だと考える」

「離婚する夫婦が共同親権を行使することは現実的に不可能。子の利益に反する」

「メリットがない。面会交流や養育費については、それぞれの支援制度を拡充することで改善されるべきで、親権は関係がない。監護親のネグレクト等の問題については、監護親に対する支援を拡充することが先決だと思う。デメリットが多い。DV事案等にどのように対応するのか」

「離婚した元配偶者から教育、健康等について同意を得なければならず、デッドロックになる」

「任意で共同子育てできない人に、裁判所が共同親権と判断して、その後はどうするのか。親が離婚した子どもは今でも経済的に精神的に大変な子が少なくないのに、紛争が続いたり、ハンコが2つないとやりたいこともできないとは、更に過酷な状況に子どもを追い込んでしまう」

「必要がないから」

「共同親権可能な離婚夫婦には法制度は必要ない(任意の合意で足りる)。一方、共同親権を一方が拒絶しているのに裁判所が共同親権を強制することは、離婚夫婦の葛藤や紛争を深刻化させるおそれがある。子に会えないということが問題であれば、面会交流調停や審判の充実化のため家庭裁判所の人員を増員する、面会交流サポート事業を政府が全面的にバックアップするなど別の方策があるはず」

「離婚後も子を通じて夫婦をつながりを持つのは現実的でない。離婚後の子の処遇をめぐる紛争が増える。その紛争をさばききれるだけの司法の資源が日本にはない。DV加害者からの支配を助長する」

「進学等で協議がまとまらず子どもにしわ寄せがいくおそれが強い。離婚後も力関係を引きずる。百害あって一利無しの制度」

「熾烈に争う離婚事件において共同親権を認めると、監護権を認められなかった親が、事あるごとに監護親のやり方(すなわち子どもの意向であることが多い)にクレームをつけ、妨害するであろうことは容易に推測でき、結局子どものためにならないから」

「監護権のない親の気持ちが落ち着く可能性以外のメリットがひとつもない」

「採用する意味がないし、無用な混乱を招くだけなので」

「対等な話し合いのできない関係での共同親権は、母子にとって有害である」

「共同親権が非監護親から監護親へのいやがらせ等不当な攻撃に使われることが確実に予想されるため」

「特に精神的DVの主張は、裁判所はとりあってくれない場合がほとんどである。共同親権を可能とすることで、離婚後も、親権者の立場を利用して支配を継続しようとする親が多数発生し、同居親及び子の福祉に深刻な悪影響があることが予想される」

「共同親権は害悪でしかない」

「子にとって迷惑(子の福祉に反する)」

「親権の概念を十分に検討した改正とはいえない。無用の混乱と悲劇を招く可能性が大きい。あまりにも性急な議論の進め方であり、必要な議論が尽くされているとはいえない。共同親権導入に反対する意見について非常に重要で本質に関わるものが多数出ているにもかかわらず、それをきちんと取り上げて議論していない。絶対に反対である」

「高葛藤の離婚や子の監護、面会を巡る争いをいくつも受任し対応してきた経験から、何より子の権利が夫婦(元夫婦)間の支配ツールとして利用される懸念が高く、計り知れない犠牲を生じる危険があるため」

「不必要な紛争があまりに頻発・拡大してしまうおそれが強い」

「単に共同親権を認めたところで現場の混乱を招くだけで、現状は改善しない」

「家事紛争の激化、家庭裁判所への過負荷につながる」

「DV家庭のみならず、これに近い状態で離婚した家庭の場合、養育に関わらない親が親権を有することによる弊害が大きい。離婚を断念する母親も増えるのではないかと思う」

「監護親の生命・身体への危険、子に関する契約についていちいち両親の同意が必要になり、連絡がつかないとき、協力が得られないとき契約できず子に不利益、共同親権となったところで別れて住んでいる以上面会交流のやりとりは必要、具体的なメリットがまったく見いだせない」

「DVの証明が難しいこと、子の福祉を考えておらず、裁判所の処理能力を考えていないため」

「共同親権にした場合、離婚後の意見対立は全て家裁が処理することになるが、絶対に家裁の裁判官が不足する。意見対立の処理機関も併せて設置することを考えないと、ひたすら混乱し、実力行使で弱い者が従うという暗黒時代が来ると思う」

「離婚に至った夫婦が共同親権をスムーズに行使できるとは、これまでの経験上考えられない。裁判所が単独親権を定めるケースが法定されても、実務で混乱が生じることは避けられず、子の利益が害される危険性がきわめて大きいことは明白である」

「裁判官のマンパワーが足りており、十分な審理が期待できるのであれば賛成も考えられなくもないが、裁判官の数が増える兆しが見えない中で、選択的共同親権制度を導入すれば、審理不十分のまま共同親権とされ、DV元配偶者の支配が継続されるおそれが高い」

「暴力がある家庭ほど離婚できなくなる、子どもを支えるインフラがあまりに脆弱」

「離婚事件の高葛藤ケースでの紛争解決がより困難になるため。またDV被害者にとって子どもを介した支配が継続し、法的くびきとなり、被害が深刻化する強い懸念があるため」

「母の再婚相手が典型的なDVだったことや、弁護士として離婚事件を多数扱っているため共同親権となった場合の子ども達への弊害は容易に想像ないし想定できるため。母の再婚相手から母と逃げた当初は、突然に学校や友達と離れたことで母を少し恨みましたが、幼いときは衝撃が大きく無意識に記憶から消していた同居中のDVの様子を成長するほどに思い出して逃げることができてよかったと思っている。現場を知らない方々が「子の利益」「子のため」と言って共同親権を推し進めようとしている現状は全く理解できない

「過去に遡及して適用すれば混乱が生じる」

「共同親権を判断する裁判所には調査判断能力が欠けている。予算人員組織が必要」

「実務を知らない学者が一昔前の比較法的観点から導入をあせったもので、日本の実態とは全くあわない。子の意思の尊重すら一人の学者の反対で記載を見送るのに、5人位いた反対意見には全く配慮しない。急迫の事情が最悪で、20年間おこなってきた被害者支援制度がすべて困難になる。家裁はパンクし、その他の事件にも悪影響をあたえる」

「①家庭裁判所のマンパワーが絶対的に不足している、②DVや虐待に至らないモラハラ事案に対応しきれない」

「多様性と言うよりは複雑化で、紛争が長期化する。対立の激しい父母に共同親権をあてはめることで子どものためになる場合が想定できず、加害者が利用するだけだと思う」

「離婚前に、裁判所が善良な保護者を演じる保護者を見抜くことは難しい。親権を共同にするより、養育費の支払いを強制させたり、面会交流権を実質的なものにすることの方が子の福祉にとっては意味があると思う。お金も払わず、嫌がらせのために親権を盾に口だけ出す親が増えそう」

「DVの事案では相手方の全てを支配します。そんな関係の夫婦が、それぞれ自らの意思で選択権を行使できるとは思えません。当然ながら、共同親権選択後も、共同での親権行使を平和に穏当に円滑に出来るとは思えません」

「高葛藤な親の間での協議が求められ、負担になること。DVモラハラ事案で被害者の危険が高まること」

「離婚後共同親権の導入により、紛争が激化したり、増加することが懸念されるが、家庭裁判所のマンパワーが追いつかない。DV被害者に対する保護が不十分」

「DV等の対策が不十分で、裁判所の人員体制も不足していることが明らかであるから」

「DV被害者(被害を立証できない場合もありうる)や子が被害を受け続けることになるため」

「「共同親権」が可能で子の利益にかなうような両親は、現状でも協力し合い、実質的な「共同親権」が行えます。法制化する必要はありません。しかし、今回の要綱案にある「共同親権」は、「共同親権」が不適切で子どもの利益に反するような両親において、それを望まない親に強制することになると考えます」

「調停手続きに偏りすぎている家裁の現状に憂慮してきた。家裁の紛争解決機能には期待できない。そこに、共同親権…。親権争いは以前からあるが、共同親権にすることで当事者双方が納得はしない。紛争の激化と長期化は必至。仮に共同親権を命じられた場合、その後、家裁がフォローすることもない。行政はもっと困るだろう。共同親権の理念自体は反対しないが、司法にとどまらない人的物的な資源(予算)を投じなければ、デメリットしかない。その被害を受けるのは子どもである」

「DV、モラハラ、虐待事案等に対する懸念が強い。協議で決めることによる、弊害の方が強い、家庭裁判所等、冷静かつ公平な第三者機関が介入すべきである。せめて、家庭裁判所が判断する際、共同親権とするか単独親権とするかどうか(DV等が立証されなければ共同親権ではなく)の原則と例外を逆にすべきである」

「推進派の意見が胡散臭いから」

「共同親権はDV被害を離婚後も継続させるものだから」

「共同親権を導入するものだから」

「現在、共同親権ではないことで生じている問題(端的に言うと子どもの取り合いや、面会交流をめぐる紛争)は、共同親権になっても解決しない。(問題を離婚後に先送りするだけ。)一方で、上記のような問題でもめずに離婚した元夫婦は、共同親権でなくても特に困らない。結局、共同親権は無益有害でしかない」

「結論ありきで、実務家の意見が全く取り入れられなかった。諸外国で弊害多発で見直しが進んでいるのに全く検討されていない。ジェンダー不平等なこの国で、父権運動に迎合して父親の権利を強化すると、諸外国どころではない弊害が多発する。現場のことを学者はまったく分かっていない。裁判所はパンクするだろう」

「そもそも裁判所で争うような事案で共同親権というのはほとんど不可能というのが実感だから」

「共同親権が導入された場合、子どもが母と父の紛争に巻き込まれ、子どもの福祉に反することになる。また、母と父の意見に対立がある場合や、円滑な合意ができない場合、意志決定ができず、子どもの福祉に反する」

「① 共同親権を同意できない両親に、裁判所が共同を強制しても、適時適切に子どもの監護に関する意思決定ができない。 ② ①の場合に家裁が代替決定するには、家裁の人的物的キャパシティが圧倒的に不足しており、その決定の遅れによる不利益は子どもが被ることになる ③ 親権が無くても、親として話し合いができる両親は、現在も共同監護をできており、共同監護できていない別居親に権限を与えることが子どもの利益になると思えない。 ④ 親権の単独行使が認められる要件として「急迫の事情等」と定めるが、「急迫」という文言は、刑法36条の「急迫」と同じ文言であり、同様に解釈される可能性が高い(同じ文言を異なる解釈をするとの説明は、裁判所の判断の揺れ幅が広くなり安定的な運用が妨げられる)が、現にDVを受けている最中には逃げることは困難であり、翌日DV加害者が仕事に出た後に逃げた場合には「急迫」ではない、と判断されかねず、DV被害者の避難を著しく抑制する文言であって、不適切である」

「家裁の人員・設備ともに全く足りておらず、離婚にまつわる紛争が徒に長期化することが容易に予想できるため。子どもが長期間にわたって両親の紛争の板挟みになり続けることが明らかで、子どもの福祉を害することになる」

「DVを受けた妻が逃げられなくなる。離婚後も夫婦間の葛藤が続いてしまう」

「選択制であったとしても強制される恐れは充分ある。離婚後の共同親権の煩雑さで、子どものため迅速な決定が遅れ 子の利益に反する」

「共同親権ありきで討議されていて、高葛藤の夫婦における問題が置き去りにされている」

「監護者を決めないと、日常生活一つとっても争いになる可能性がある。審判・判決で共同親権にすることができるため、当事者が無理と考えているにもかかわらず協議を矯正することになり、その後さまざまな紛争が起きる可能性がある。単独行使を可能とする「急迫」の意味が通常の感覚であれば狭すぎるため、DV等の事情で別居することを躊躇させることになり、DVの被害者や子どものためにならない」

「離婚後も子の父母として協力し合える場合には、単独親権でも子の福祉は図られるし、協力し合えない父母の場合には、共同親権だと親権者の合意に時間がかかり、子の福祉が害される」

「共同親権とはならないDV等の除外事由の事実認定が適正に行われるとは思えない」

「原則共同親権と読み取れる内容であること。祖父母等第三者からの面会交流申立てが可能であること。別居後早い段階での強制的試行面会の規定があること。養育費の支払い確保が不十分であること。など」

「単独親権を希望する側に対して、共同親権ではいけないという立証責任を負わせることは、身体に痕跡が残る身体的なDV以外の精神的・経済的DV等の場合に立証が困難となり、不適切な場合に共同親権となるおそれが高いため賛成できない」

「子どもの進学や転居等について、日常の養育に関わらない別居親の同意が必要になるとすれば、子どもの福祉に反する結果になる虞が大きいと思うため」

「単独親権にするために裁判所の関与が必要となること及びその主張の負担を申立人に追わせることになるため」

「離婚した夫婦が正常な話し合いをするのは難しく、統一見解が出せず、子の不利益になると思う」

「DVや虐待を行ったか否かは、立証が非常に困難である。DVや虐待の事実について、証拠がない場合に自認することはあり得ず、自身がDVや虐待をしていると自覚していない場合もある。DV被害者は、DV加害者を怒らせる主張をすることに恐怖し、DVの主張を避けることもあるため、DV被害者からDVの主張がされないこともある。そのため、事実DVや虐待が行われていても、裁判所が認定できないリスクが非常に高いと思われる。そのような場合に、共同親権となってしまうと、子どもや元配偶者が安心で安全な日常生活を営むことができなくなってしまう危険性がある。そもそも父母間で子どもについて円滑にコミュニケーション可能であれば、離婚という選択はしないのであるから、離婚問題が生じている時点で、父母間で円滑なコミュニケーションをとることは不可能ないしは極めて困難である」

「要綱案では、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められる場合は、家庭裁判所は単独親権を定めなけれればならないとされているが、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められる場合を、DVや虐待が認められる場合に限定して解釈される可能性が高にも関わらず、DVや虐待の立証は容易でないことから、結局DVや虐待が存在するケースでも、その立証がなされていないとして、共同親権とされてしまう可能性が否定できない」

「裁判所が強制しなければ共同できない離婚後の父母双方に親権を認めると、適時、適切に子に関する意思決定が困難になり、子の利益を害する」

「安全を求めて子どもを連れて別居することが困難になるため」

「離婚に伴う子を巡る紛争への解決に何ら資さない法案だからです。離婚に至る夫婦の場合、夫婦間のパワーバランスが対等なケースは多くはないので、仮に共同親権か単独親権か選択制にするのであれば、当事者の協議ではなく、全件家庭裁判所が判断するべきだと思います。また、原則共同親権で、DVや虐待の懸念がある場合に例外的に単独親権という運用だと、非親権者に対して強烈なスティグマ(DV・虐待親であるという偏見)が付与されることになり、かえって親権争いが激化するのではないかと思います」

「離婚後の元夫婦の信頼関係がなければ共同親権で解決されるものでない。有用性が無いのに対してDVが悪化するだけ」

「子が両親の争いに巻き込まれる事例が増え、結果として「子の利益」を損なうことになるから」

「実務的なインフラ(裁判官の数、裁判所の空き状況など)が整っていない中で要綱案の内容を実現することは不可能だと感じています。また、両親の対立関係が離婚後もいつまでも続くことになり子の福祉を害すことになりかねません」

「特に子連れ別居について、他方の親権者の同意がない別居が他方親権者の親権行使を阻害するおそれがあるものとして扱われるのであれば、他方親権者からの損害賠償請求の多発等が予想される。これでは、他方親権者からの請求を恐れ、真に別居の必要がある事案であっても子連れ別居へ踏み切れない要因となる。児童虐待関係の支援者も子連れ別居の助言を躊躇し、子の福祉を第一にした判断を誤らせるおそれがある。仮に他方親権者の親権行使を阻害するおそれがある場合であっても、あくまでも子の福祉を優先し、その立場から判断するという現在の実務を維持すべきである」

「離婚後に父母の共同親権など、子どもの養育にとって、到底プラスになるとは考えられません」

「問題が山積みだから」

「紛争が増大する。かつ紛争解決機関の拡充は見通せない」

「離婚後共同親権の制度を創設すべきでない。婚姻外の父母の共同親権のあり方としては、婚姻に準じる意味で内縁関係にある父母につき届出制の共同親権などを創設すべきと考える」

離婚後の共同親権を可能にする民法改正要綱案、弁護士コメント全文(1)