コンビニエンスストアを始め、フランチャイズチェーンは身近な存在になっている。それもそのはずだ。日本フランチャイズチェーン協会(JFA)の「2022年度 フランチャイズチェーン統計調査」によると、2022年度のフランチャイズ市場はチェーン数1,282チェーン、店舗数約25万店もあるのだ。売上高は約27兆円にも上る。一大産業だ。

 そんなフランチャイズビジネスの実態をYouTuberとして発信し、自身も元フランチャイズチェーンの加盟店のオーナーをしていた、西村一樹氏(32歳)にその実態を聞いた。

フランチャイジー(加盟店運営者)に不満が多いワケ

 フランチャイズというと、フランチャイザー(フランチャイズ本部)とフランチャイジー(加盟店運営者)との訴訟が多く、被害者の会ができるなど、トラブルも多い印象がある。

「アメリカや韓国・マレーシアのように、フランチャイズに特化したフランチャイズ法がないことが要因の一つです。それなので、圧倒的に、フランチャイズ本部側に有利な契約書が最初に作られてしまう。色々な法をカスタマイズして、フランチャイジーは本部と戦わなければいけません」

 法律がなければ、規制もできない。方針から契約書・マニュアルなど、フランチャイズ本部側の言いなりにならざるを得ない。

「アメリカなどでは独立心が強い人が“このエリアは自分にやらせろ”といって加盟するケースが多いですが、日本は違います。本部が手取り足取り、面倒をみてくれるというイメージを持つ人も多いです。だけど、フランチャイズのシステムは、看板を貸すことが基本にあります。自分が経営者になるという意識が薄いと、不満になりやすいというフランチャイジー側の意識の問題もあります」

 お国柄の問題もありそうだ。だけど、そんなことは論外の、明らかにヤバいフランチャイザーや経営者も存在する。

◆社長・役員・社員が全員偽名を使う本部

「とある医療系フランチャイズ本部では、社長から社員まで全員が偽名を使っています。加盟店を募るだけ募り、クレームが出たら訴えられないように、本名を教えないんです。例えば、佐々木だったら、佐々川と名乗ったり。その本部を辞めた人に“今後は佐々木です”と言われ複雑な気持ちになりました」

 その社長は、頃合いを見て、トンズラする。そして、また新たな社名と新たな偽名で、フランチャイズ本部を作ることを繰り返すという。

 そうしたケースは他にもある。

「飲食系フランチャイズ本部ですが、会社名をコロコロ変えて、ずっと加盟金詐欺を繰り返している社長もいます。Yahoo!知恵袋でかなりの数の不満があがっていますが、社名が違うだけで同じ経営者が運営しています」

 その知恵袋の内容を読むと、トラブルとなって弁護士を立てたところ、本店所在地に会社がなく、会社の誰とも連絡がつかない。口座を凍結しても、音沙汰がないという悩みが書かれていた。まともなビジネスをしていたら、口座の凍結をされたら、困ることになるはずだが……。



◆戸籍まで変えて偽名を使うパワハラ社長

 西村氏は取材からまともなフランチャイズ本部か見分ける。

「飲食系のフランチャイズ本部の社長ですが、カフェで打ち合わせをしていたら、明らかに様子がおかしくて、ソワソワしているんです。打ち合わせ中に、トイレで薬をぶち込んでいました」

 その社長は、役員を金属ハンマーでぶっ叩くパワハラ社長でもある。本部のスタッフには指がない人間もいる。さらに、加盟店オーナーに、事業とは関係のない商材などを強制的に買わせるという。

 加盟する側もする側だが、クレームを言ったら、反社らしき人間が出てきたらたまったものではない。加盟する側も本部をよくよく見極めなければならないだろう。

 そんなヤバい本部を見分けるにはどうしたらいいのか。

◆ダメなフランチャイズ本部の見分け方

 数々のフランチャイズ本部を見てきた西村氏が、20個の「ダメなFC本部の特徴」をあげてくれた。

▪「フランチャイズ展開をなぜしているんですか?」という質問に対して、理念や大義を話し出すなど、即答できない
▪来月から、加盟金が値上がりますと言ってくる
▪新規で出店しているお店より、撤退している店舗の方が多い
▪営業資料に加盟オーナー風の「サクラ」がいる
▪営業の開発担当者がコロコロ変わる
▪多角化や同ブランド複数店舗オーナーの割合が全オーナーの3分の1以下
▪ネガティブ情報(中途解約、違約金)などの説明がない
▪契約書の読み合わせがない
▪SNSなどで本部批判が増加している
▪法定開示書面がない
▪社長が経歴詐称をしている
▪ノー審査で、だれでも加盟できる
▪SV(スーパーバイザー)を含めた本部社員の定着率が悪い
▪加盟店店舗への訪問を認めてもらえない
▪「儲かる」と金ばかりの説明をする
▪物件契約が確定する前にフランチャイズ契約を交わし、手付金を入金させる
▪工事費が指定会社で、相見積もりを取ってみたら、とんでもないぐらい桁が違う
▪加盟開発の営業マンが、そのビジネスの現場経験ゼロ
▪なにかマイナス(例えば、目の前に競合他社が出店するなど)なことがあった場合の対処法を考えていない
▪本部社長がSNSで散財アピールをしている

 最後にフランチャイズビジネスを始めようと考えている人へのアドバイスを聞いた。

「フランチャイズ業界には全てではありませんが、一定の闇が存在します。やっかいなのは、加盟検討者がそれを見極めることは困難なところです。延べ1,000以上のフランチャイズ本部を見続けてきた僕が、最も重視しているのは『人』です。FC本部の社長の事業に対する思い、FC展開の先に描く未来、本部で働く従業員の雰囲気、加盟しているオーナーさんなどなど、『人』を決め手にするのがいいと思います」   

 フランチャイズ本部が謳ういい面だけでなく、リスクも知った上で、どの本部の加盟店になるかを慎重に判断したい。

<取材・文/田口ゆう>

【田口ゆう】
ライター。webサイト「あいである広場」の編集長でもあり、社会的マイノリティ(障がい者、ひきこもり、性的マイノリティ、少数民族など)とその支援者や家族たちの生の声を取材し、お役立ち情報を発信している。著書に『認知症が見る世界 現役ヘルパーが描く介護現場の真実』(原作、吉田美紀子・漫画、バンブーコミックス エッセイセレクション)がある。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1

西村一樹氏