多摩川にかかる陸橋を電車が通過したとき、川の中から一瞬だけ人の頭が見えた。奇妙な光景が目に焼き付いてしまい、河川敷に向かったzinbei(@tz036)さんのホラー漫画「多摩川三篇」を紹介しよう。いずれも多摩川をテーマにした奇妙な話を描いている。

【漫画】「多摩川三篇」第一篇を読む

■いつも見ている景色に違和感が…

毎日乗っている通勤電車。車内からふと外を見ると、多摩川のど真ん中に人の頭が浮いている。気のせいかと思ったが、その日から毎日通勤のときも退勤のときも見えるようになった。

しかし、多摩川は人の肩が浸かるほどの水深はない。もしかして大きなゴミと勘違いしているのかもしれない。真相を知りたくて、もっと近くの河川敷に行ってみることにした。

真実を確かめて、元の日常に戻りたかった。しかし、河川敷からもその頭は見えた。彼女が頭を見ていると、目がこちらを向いた。そして目があった瞬間、それは消えた――。一体、何だったのだろうと、家についた彼女は…?

■毎日乗っている電車。日常的に見える景色に異変が起きたら?

短編ながも、背筋がゾクリとするような話。結末の先を読者に委ねており、想像の幅が広がる。今回は本作を描いたきっかけや作品のテーマなどについて、zinbeiさんに話を聞いた。

――まずは、ホラー漫画「多摩川三篇」を描いたきっかけを教えてください。

知り合いの作家さんから、同人誌でホラー漫画「ホラーアンソロジー」のゲスト原稿の執筆にお誘いいただいたのがきっかけです。

――本作は全部で三篇構成になっています。それぞれこだわったポイントを教えてください。

一篇:冒頭に登場する「電車内から一瞬見える多摩川」という風景は、私が会社員時代に実際に見ていたものです。川を跨ぐ路線はいくつもあると思いますが、日ごろ利用する電車・何度も見ている風景に潜む「異常」を演出しました。

二篇:大きな河川には広大な雑木林がつきものですが、すぐそこの雑木林の中ですら何が行われているかもわからない「未知性」の雰囲気にこだわりました。

三篇:海、川、湖などの水面の様相は、いついかなるときも普遍的であるというところに着目し、日常世界と時間に置き去りにされた二人のキャラクターと、表情を変えずに流れ続ける多摩川という対比を強調しました。

――現在、やわらかスピリッツで連載中の「酒と鬼は二合まで」は5.1万いいねが集まり、大変注目されています。感想はいかがですか?

原作者である羽柴さんと二人三脚で連載してきた当作品ですが、ここまでの閲覧と反響をいただいたことに二人で大喜びしています!

――読者の皆様にメッセージをお願いします。

連載作品の執筆はもちろんのこと、商業・自主制作問わずこれからもおもしろい漫画制作に励んでまいります。読者のみなさまにはこれからも暖かく見守っていただけましたらうれしいです。これからもよろしくお願いいたします。

――そのほか、どのような漫画を描いていますか?

単行本にて、「酒と鬼は二合まで」(作画担当)1~5巻、「ほろ酔い道草学概論」1巻が発売中です!よかったら是非チェックしてください。

取材協力:zinbei(@tz036)

多摩川で人の頭が…浮いている?/画像提供:zinbei(@tz036)