大事件ばかりがニュースではない。身近で巻起こった仰天ニュースを厳選、今回はラブホ従業員に聞いた裏側に注目し反響の大きかったトップ3を発表する。第3位の記事はこちら!(集計期間は2023年1月~2023年12月まで。初公開2023年6月12日 記事は取材時の状況)
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 こんにちは。元ラブホ従業員の和田ハジメです。およそ6年もの間、渋谷区道玄坂にあるラブホテルにて受付業務および清掃業務に従事してきました。

 ラブホの従業員と聞くとなんとなく暇そうな印象を抱く方も多いことかと思われますが、筆者が働いていたのは都内でも屈指の繁華街であり、なおかつ近隣他店と比較しても相当にリーズナブルな価格帯でお部屋を提供している激安店。

 多少の繁閑差こそあれど、基本的にはせわしくお客様の応対に追われる日々を過ごしてきました。そして土地柄からか、“お行儀の悪い”お客様もかなりの頻度で来店され、トラブルを引き起こすこともしばしば……。

 しかし、筆者の印象に残っているのは迷惑客だけではありません。トラブルこそ起こさないけれども“どこかおかしい”お客様についてのエピソードも多数ございます。

 そこで今回は、「筆者が出会った不可解な客」というテーマで少しお話をさせていただければと思います。

ウーバーイーツ配達員がバッグを背負ったまま来店

 文面でこのインパクトを上手く伝えられないのが歯痒いところですが、“ウーバーイーツのバッグを背負ったまま来店してきたお客様”がおりました。

 たしか季節は秋頃で、アウターが必要になるくらいの季節だったと思います。その日は昼間のシフトに入っていたのですが、とても暇で(秋冬は基本的に閑散期なのです)、入口付近に設置されている監視カメラの映像をぼんやりと眺めていたところ、自転車を全速力で漕いでいるウーバー配達員の姿が映りました。
 
ラブホの前に駐輪。当初は客室にお品物を届けにきたのかと思ったが…

 その配達員の方はラブホの前に自転車を停め、黒くて大きなあの直方体のバッグを背負ったままフロントへ。彼は息も絶え絶えで、肌寒い季節なのにもかかわらず、汗だくでした。

「おそらく客室にいる方がウーバーイーツで何かを注文したんだろうな」と筆者が思っていたところ、配達員の方はこう言いました。

「お部屋、空いてますか?」

 いや、お前が部屋を使うんかい!というセリフが喉元までせりあがってきたのですが、まあウーバーイーツのバッグを背負っている方は入室不可という規定はございませんので、そのまま手続きを済ませ、配達員の方は客室へと入っていきました。

 “デリバリー”利用だったのでしょう、配達員の方が入室してすぐに若い女性の方が来店し、合流されました。その後程なくして同時退室されたのですが、配達員の方は女性の方と解散するや否や、すぐさま自転車に乗って全速力でどこかへ向かっていきました

 ただそれだけの話なのですが、なんともシュールな出来事だったので、筆者は今でもその時の様子をありありと思い出すことができます。

 ところで、もしもウーバーイーツを利用したときに、お届けに来られる方が直前にラブホで“休憩”していたとしたら……上手く理由は言えませんが、なんとなく嫌だな(笑)。

セーラー服で来店!?

 ラブホテルは風営法の関係で、18歳未満の方は入室できない決まりとなっていることは皆様ご存じかと思われます。

 とはいえ、ラブホテルはその特殊な業態上、利用者名簿を記入する義務がなく、“関門突破”をさせないようにフロントが細心の注意を払う必要があります。筆者の場合もその点に関してはとても気を遣っておりました(一度だけ高校生の方を入室させてしまったことがあり、保護者の方がGPSで場所を突き止めたのか、クレームの電話がかかってきました)。

 しかし、利用可能年齢か否かを判断するのはとても難しいもの。筆者は主観的に見て少しでも「若そうだな」と感じた方は入室をお断りする“疑わしきは追い返す”方式を採用しておりました。

◆顔立ちと服装で入室の可否を判断

 入室させるかどうかは、“顔立ち”のほかにも、“服装”も考慮に入れて判断しておりました。例えば(抽象的ですが)、淡い色合いの服装であったり、幼さを感じさせる“フリフリ”の格好の場合には一旦お断りさせていただく、といった具合です。

 当然ながら、“制服”での来店は一発アウト。フロントに設置されている監視カメラに映った瞬間追い返すレベルです。

 これまでに制服で来店してきたお客様は1名のみ。しかし筆者は、この制服を着用してこられたお客様を入室させてしまいました。というのも……。

◆冴えない感じの中年男性

 ある年のある日のこと、特にこれといった特徴のない(と言うのは失礼ですが)、普通の中年男性が来店されました。

 お会計を済ませルームキーを手渡すと、中年男性は「あとで連れが来ます」と一言。まあ普通のデリバリー利用です。

「このおっさんは、どんなタイプの女の子を呼ぶのかな。きっと大人しそうなタイプの方だろうな」と、そのうち来る“連れ”について思いを巡らせていました。

 ほどなくして、“連れ”と思しき女性が来店。筆者は思わず監視カメラに釘付けとなってしまいました。彼女はセーラー服姿だったからです。

◆入室させるか迷った挙句…“通過”

 彼女の出で立ちは、某大型ディスカウントショップに陳列されているようなコスプレ用のセーラー服に、過剰なデコレーションを施したネイル、茶髪のボブカットに、それに適さないゴテゴテのギャルメイク、年季の入ったルーズソックスに、履き古してくすみが目立つ白の“スクールシューズ”……といったもの。

 一体どんなセンスなんだと頭を抱えました。とりあえず制服での来店は禁止事項ではあるので、セーラー服の女性にその旨を伝えました。

 セーラー服の女性は困った様子で「でも、この格好で来いと言ったからさ」との返事。

 筆者は「ここで入室させたら、禁止事項を破ることになる。いかにもコスプレ姿ではあるけれど、はたして“例外”を設けていいものなのか」と考えた挙句、「まあ、今回だけはいいですよ」と入室させることに。

 決め手は、セーラー服の女性の顔立ちでした。明らかにおばさんだったのです

 人間の性癖は本当に不思議なものだなと、筆者はその時考えました。あの冴えない中年男性のリクエストの結果、あのような不気味(失礼ですね)な格好をした方が来られるとは。

 主語が大きくなってしまいますが、人間の腹の内は本当にわからないものです。

<文/和田ハジメ>

【和田ハジメ】
およそ6年にわたり、渋谷区道玄坂の激安ラブホにて受付業務および清掃業務に従事。繁華街で様々な人間を見てきた経験をもとに、迷惑客の存在やスタッフの裏事情などをテーマに執筆(していく予定)。

※写真はイメージです