元セクシー女優でフリーライターの「たかなし亜妖」がお届けする連載コラム。2016年に「ほかにやることがなかったから」という理由でセクシー女優デビュー。女優生活2年半が経過したところで引退を決意し、現在は同人作品やセクシービデオの脚本など、あらゆる方面で活躍中。

◆人気が急上昇して問題となっている「同人ビデオ」の存在

 成人向けビデオの売り上げが低迷した理由に、個人で撮影された「同人ビデオ」の存在が大きく関係する。コロナ前からポツポツと登場していたが、人々が自粛を強いられた2020年以降から人気が急上昇。今となっては爆発的に売り上げを伸ばし、想像以上の金額を稼ぐ運営も多いそうだ。

 ユーザーの支持率が高い同人ビデオだが、出演側からするとちょっぴり悩ましいものである。フリーで活動する女優の中でも出演を拒む人は多く、プロダクションも「同人とはなるべく付き合いを持たないように……」など、さまざまな問題がひしめくと言うのだ。

◆同人と公式の決定的な違い

 同じ成人向けビデオでも、同人と公式では話が違う。同人ビデオは「個撮(こさつ)」とも呼ばれ、セクシー業界の「人権倫理機構」に属さない個人orサークルを指す。反対に公式とはこちらの団体に入会し、“適正”の認証を受けた上で作品を販売している。

 同人の場合は作品を円盤化することはなく、FC2ブログや国内でも閲覧可能な海外サイトでのリリース(配信)がメイン。安価なものだと1本数百円から。少し高くとも1000円~2000円台で購入できるため公式に比べると価格がかなり良心的なのだ。

 ただ最近は「同人」と言いつつ、「実はメーカーが持つレーベルの一つでした!」という紛らわしい例も。某大手ビデオ販売サイトでもその手のモノが増えており、よーく見ると有名企画女優が出演しているパターンも結構多い。

 素人目で見るとだいぶ見極めが難しくなったものの、公式と同人の大きな違いは「適正認証があるかないか」「適正プロダクションに所属した女優が出ているか否か」、これに尽きる。

◆同人ビデオが流行る理由は「生っぽさ」にあり

 こんなことを言ったらメーカーから怒られるかもしれないが、現在は公式よりも同人の人気が高い。業界は個人配信の勢いに押され気味で、サークルの乱立に頭を悩ませている。

 なぜ同人ビデオがこんなにも流行るのか? 箇条書きで特徴を挙げると、支持を集める理由はだいたいこんな感じだ。

・価格が安い
・作品数が多い
・尺が短いので早送りの必要がない
・入念に作り込まない“生っぽさ”が逆にイイ


 同人ビデオは少人数かつ低予算で制作されるため、作品を大量生産しつつ安価での販売が可能。イメージシーンなどをすべて省くので尺が短く、物語性はゼロ。つまりユーザーのほしいところだけをギュッと凝縮し、早送りの手間がないことから“実用性”ばっちりなのである。

 また、お金をかけないのでシチュエーション等の作り込みはないが、視聴者的にはその荒っぽさがリアルでいいらしい。メーカー側はイメージシーンやストーリーなど細部にまで気を払うも、悲しいかな肝心なところ以外は見事にすっ飛ばされてしまう。ユーザーにとって不要と判断されがちな部分をそぎ落とし、「安価・リアルさ◎=実用性あり!」となれば、どうしても同人に人が流れてしまうのだ。

◆同人ビデオに出演するリスク

 ユーザーからすると嬉しい要素が満載の同人ビデオだが、適正プロダクションや女優にとって少し厄介な存在である。公式に比べればまだまだ概念がユルく、最近でも「出演の際の契約が交わされていない問題」がニュースに取り上げられていた。

 言い方は悪いが、「同人はやっぱり同人」なのであろう。運営元が不透明なパターンも多く、完全に個人(1人)でサイト運営をまかなっているケースさえある。契約書を交わさず、そのまま希望者を出演させる話も珍しくはないようで、あちこちでトラブルが起きているのも現実だ。

 一度撮影すればデータは完全にサークルのものだし、どこに二次利用されるかなんて知るよしもない。契約書がなければ「うちは作品にモザイクをかけていますから」なんてのも完全に口約束。実際の配信は無修正で……という可能性も十分に考えられる。

◆同人ビデオは「デジタルタトゥー」になるリスクも

 また、公式のビデオなら「削除申請」を出せば専門の協会が申請に応じてくれるものの、同人出演作品に関しては協会も対象外だと発表をしている。つまり運営が怪しく、契約書も交わしていなければ(契約書があったとしても削除申請は受け付けない等の記載があれば)、デジタルタトゥーとして残ってしまう

 まぁ公式でも同人でもビデオに1回でも出演すればデジタルタトゥーに変わりはないのだが、時間が経ってから消せる・消せないの差は結構大きいのではないだろうか。

 同人ビデオは公式と違ってメーカー周りも不要だし、依頼があれば即日即金ですぐに仕事にありつける。ただその分リスクが高いのは、紛れもない事実と言えよう。

◆同人が悪いとは言えないものの……

 そもそも同人界隈がルールを守り、傷つく人が出ないように動けば問題なんて発生しない。ただ、悪を根絶するのは不可能である。悪いことを考えるオトナは溢れんばかりにいるのだから、出演者側が気を付けるしかないのが現状だ。同人のすべてが悪いとは言わないが、公式の印象を大きく下げないような動き方をしてほしいと、私は強く思っている。

 ユーザーは同人を欲し、業界の人間は公式との仕事を希望する。実際の売れ行きと業界人の意見が正反対な部分が非常に悩ましく、今はどう共存するかが大きな課題だろう。

文/たかなし亜妖

【たかなし亜妖】
セクシー女優のフリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ソーシャルゲームシナリオライターを経て、フリーランスへと独立。WEBコラムから作品レビュー、同人作品やセクシービデオの脚本などあらゆる方面で活躍中。

―[元セクシー女優のよもやま話]―


元セクシー女優で現在はフリーライターの「たかなし亜妖」